みやビズ

2019年6月27日(木)
Biz-女(ビジョ)ナビ

女性経営者座談会(下)

2016/10/25

 Biz-女ナビ「女性経営者座談会」の前編では、経営者になったいきさつや経営者になってみて思うことなどを紹介した。後編は4人が見つめる「女性経営者の今とこれから」がテーマ。法が整備されて女性活躍推進の機運が高まる今、何を感じているのか。次世代を担う女性起業家への熱い思いと併せて語ってもらった。

【参加者】(順不同)
カナザワエイジェント(宮崎市)代表 金澤ゆみ子さん
宮崎活魚センター(同)社長 築地加代子さん
アモローソ(東京)代表 寺本りえ子さん
高原ミネラル(宮崎市)専務 成松敬子さん

司会 宮崎日日新聞経済部 西村公美

「女性活躍」が当たり前の社会へ


事業承継や女性活躍推進について熱い思いを語る寺本さん、築地さん、成松さん、金澤さん(左から)

事業承継や女性活躍推進について熱い思いを語る寺本さん、築地さん、成松さん、金澤さん(左から)

 Biz-女ナビ「女性経営者座談会」の前編では、経営者になったいきさつや経営者になってみて思うことなどを紹介した。後編は4人が見つめる「女性経営者の今とこれから」がテーマ。法が整備されて女性活躍推進の機運が高まる今、何を感じているのか。次世代を担う女性起業家への熱い思いと併せて語ってもらった。

 --第一線で活躍している4人にとってはまだ先のことだろうが、事業承継についてどう考えているか。

 金澤 5年前くらいから考えているが、まだ取り組めていない。さかのぼれば10年ほど前、後継者として期待していた右腕的なスタッフはいた。当時、事業を拡大させていく中で、私の体調不良が重なり「自分に万が一のことがあったら」と、そのスタッフに事業を任せようかと考えたこともある。ただ、そのスタッフは会社を辞め、別の道へ進んでしまった。人の気持ちは思い通りにいかないもの。だからこそ、次の次を想定しながら後継人材を育てていくしか道はない。

 築地 私は4人の子どものうち28歳の長女と仕事をしている。その仕事ぶりを見ていると、女性ならではの細やかさや企画提案力が光っている。私が子どもたちの人生を決めることはしてはいけないが、それでも家業を継ぐことを一つの選択肢として考えてくれるならば長女に任せたい。女性活用の視点からも適任だとは思う。ただ「継ぎたくないのにそうなってしまった」という“やらされ感”だけは持たせたくないので、あくまでも自主性を重んじる。私がやるべきことは「継ぎたい」と思ってもらえるよう、会社の魅力を高めることだ。

 成松 私も築地さんと同じ思い。子どもたちは4歳、1歳とまだ幼いが「お母さんの会社に入りたい」と言ってもらえる会社にしたい。そのためにはもっと経営や業界の勉強を頑張っていきたい。

 --寺本さんはまだ会社を立ち上げたばかりなので、イメージしにくいのでは。

てらもと・りえこ 五ケ瀬町出身で、実家はしだれ桜で有名な浄専寺。県のみやざきブランドマーケティングアドバイザーや同町の風土ビジネスアドバイザーなどを歴任。2015年9月、体に良い食の提案などを手掛けるアモローソ(東京)を設立。1961(昭和36)年1月生まれ。

てらもと・りえこ 五ケ瀬町出身で、実家はしだれ桜で有名な浄専寺。県のみやざきブランドマーケティングアドバイザーや同町の風土ビジネスアドバイザーなどを歴任。2015年9月、体に良い食の提案などを手掛けるアモローソ(東京)を設立。1961(昭和36)年1月生まれ。

 寺本 私の場合は法人化したとはいえ、現時点では一人で会社を回している。やりたいことのアイデアは日々浮かぶのに、一人だと実行に移す時間が足りない。2年目となった今期は共にビジネスをやっていけるパートナーを見つけたい。そんなことから一つずつやっていかないといけないので、将来、誰に会社を委ねるかは考える余裕がない。

 --今年4月に女性活躍推進法が施行され、国を挙げて女性活躍の機運が高まっている。一方で「法に基づいた数値目標を達成するだけの女性登用に終わってしまうのではないか」という懸念もある。この現状をどう見ているか。

 築地 法整備は、女性の可能性を開くという意味ではいいと思う。自分によろいを着けて男性と同じように仕事をしようとするのではなく、自分らしさを発揮しながら働くのが理想。その理想を実現させるためには、社会にも対応していくための柔軟さが求められると思う。

 成松 身内の話になるが、一緒に働いている妹やいとこたちは未婚。話を聞くと、仕事と結婚をてんびんに掛けて、結果として仕事を選んでいるようだ。何かを諦めないとキャリアが積めない世の中では悲しすぎる。

 築地 (前編で)成松さんが育休を取った際に「会社に迷惑を掛けている」という後ろめたさを感じたというお話があったが、本当なら感じる必要はないそんな思いが、女性の社会進出を阻む壁となっているのではないか。そんな思いで行き詰まってしまう若い人がいると思うと、とてもつらい。

なりまつ・けいこ 宮崎市出身。自動販売機運営や氷の製造販売を手掛ける高原ミネラル(宮崎市)専務。プライベートでは4歳の長女と1歳の長男の子育てに奮闘中。1977(昭和52)年5月生まれ。

なりまつ・けいこ 宮崎市出身。自動販売機運営や氷の製造販売を手掛ける高原ミネラル(宮崎市)専務。プライベートでは4歳の長女と1歳の長男の子育てに奮闘中。1977(昭和52)年5月生まれ。

 成松 本当にそう思う。しかし、働き続けるために重大な決断を迫られるのは、女性に限った話ではないはず。最近では「親の介護があるので、勤務体系を見直したい」という男性社員からの相談も受けるようになった。女性ばかりが注目されがちだが、男女関係なく活躍できて、共に支え合える社会にしていくべきだ。

 金澤 大きな会合に出ると、女性はぽつんぽつんと数えるほど。女性の進出が目覚ましい欧米と東京の差は大きいが、そんな都市部と宮崎の差もまた大きい。企業内でも女性の適性を見極めた配置をすれば、目標を定めなくても自然と意思決定のテーブルに女性が着くことが増えてくるはず。個人で頑張っている女性はたくさんいるのに、経営、管理職側に女性が少ないことが、宮崎をはじめとする地方の弱点だ。

 --東京が本拠地の寺本さんはどう感じている。

 寺本 私の周りは女性社長や性的少数者のビジネスパートナーも多く、いい仕事をする上で性別は関係ないと思っている。「女だからこうすべきだ」と言ってくる人もいるが、そんな人の言うことは笑ってかわせばいい。誤解を恐れずに言えば「女性よ、社会に出よう」といった働き掛けをわざわざしなくて済む世の中になればいい。子育てや介護など、女性が担うのが当たり前と思うような社会では実現は難しいだろう。国が女性活躍を真剣に考えるならば、国民意識から変えていく取り組みが必要だ。

 金澤 寺本さんのおっしゃる通り。最近、企業側が女性社員らを前面に押し出したアピールをしているが、正直言って古い。経営者サイドが「女性社員をこんなに登用しましたよ」という点数稼ぎにしか見えない。

 --企業のそんな取り組みを取材する身としては「女性初」という言葉に弱い。確かに女性を起用することが当たり前の世の中になってほしいと思う。子育てについてはどう考える。

 成松 子育ては長い人生のうちの一瞬。育休などで働けないのはほんの少しの時間なのだから、長いスパンで女性の働き方を考えていくべきだ。

つきじ・かよこ 宮崎市出身。2010年、魚介類小売の宮崎活魚センター(宮崎市)社長に就任。NPO法人を設立し、子どもたちに漁業に親しんでもらうイベントを定期的に開催している。1968(昭和43)年2月生まれ。

つきじ・かよこ 宮崎市出身。2010年、魚介類小売の宮崎活魚センター(宮崎市)社長に就任。NPO法人を設立し、子どもたちに漁業に親しんでもらうイベントを定期的に開催している。1968(昭和43)年2月生まれ。

 築地 子育てしていることを負い目に思う必要は全然ない。子どもは社会の宝。誰に遠慮するでもなく、堂々と育ててほしい。子育てが一段落した今、これからの子どもたちを育む若い人たちを応援したい気持ちでいっぱいだ。

 --勇気が湧いてくる言葉に胸が熱くなったところで、最後の質問。近年、女性による起業が増えている。起業家の卵たちにメッセージを。

 寺本 無理せずに楽しく、自分らしくやること。人生は長い。無理をしているようでは長続きしないし、楽しめないと周りに迷惑を掛けてしまう。自分らしさや譲れない部分と、やるべきこととのバランスをうまく保ってほしい。

 築地 起業なり、新しいチャレンジなり、やりたいと思うのであればどんどんやってほしい。その情熱が本物であれば、周りはきっと応援してくれる。変化や失敗を恐れず、やりたいことを実行に移す勇気を持つことは大事だ。

 成松 母から「戸をたたいてみよ」と言われたことがある。2代目は守りに徹しがちだが、攻めの姿勢こそ事業拡大には必要という意味だ。起業もこれと同じで、挑戦あるのみだ。

 金澤、築地、寺本 お母さん、かっこいい。

かなざわ・ゆみこ 大阪府出身。イベント運営やスタッフ派遣のカナザワエイジェント(宮崎市)を2005年に設立。芳香で空間を演出する装置レンタルや最適な香りを提案する「フレグランスコンシェルジュ」代表も勤める。1963(昭和38)年8月生まれ。

かなざわ・ゆみこ 大阪府出身。イベント運営やスタッフ派遣のカナザワエイジェント(宮崎市)を2005年に設立。芳香で空間を演出する装置レンタルや最適な香りを提案する「フレグランスコンシェルジュ」代表も勤める。1963(昭和38)年8月生まれ。

 金澤 そんな懐の深いお母さんを、尊敬しながら働く姿を子どもに見せている成松さんも、きっとお母さんみたいになれるはず。カナザワエイジェントに登録しているスタッフの中にも、起業を目指している人がいる。いろんな現場で仕事をして経験を積み、起業に生かしたいと頑張っている。目標を達成するためのプロセスは、どのようなものでも構わない。目標にひとっ飛びで達成できる場合もあれば、少しずつしか前へ進めないこともあるだろう。しかし、目標は明確に設定しておかないことには始まらない。ここさえ決まれば最適な方法は後からついてくる。

 寺本 そうそう。目標達成に向かって奮闘する中でたくさん失敗したほうが成長する。何もしないで何も変わらないより、やって失敗したほうが深みが出るし、糧になる。

 --すべての頑張る女性へのメッセージのようで、元気づけられた。長時間にわたって有意義な話が聞けた。ありがとうございました。

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