みやビズ

2018年7月16日(月)
テクノリポート~県工業技術センター・県食品開発センターの取り組み~

多収でいもち病に強い焼酎麹用米専用品種「み系358」の育成

2018/01/09
20180105-b1.jpg 焼酎は2000年ごろからブームとなり、今では全国で広く飲まれるようになっている。本県は16年度の焼酎出荷量が14万2000キロリットル超で3年連続日本一となり、まさに焼酎王国といえる。

県総合農業試験場


▽背景


 焼酎は2000年ごろからブームとなり、今では全国で広く飲まれるようになっている。本県は16年度の焼酎出荷量が14万2000キロリットル超で3年連続日本一となり、まさに焼酎王国といえる。

 焼酎の主原料は芋や麦などだが、アルコールを生成する酵母は原料のデンプンを直接利用することができない。そのため麹(こうじ)菌によりデンプンから糖類を得る必要がある。焼酎醸造において、まず麹造りの工程が必要であり、麹の原料として米が用いられている。その量は芋焼酎の場合、芋5に対し米1が必要で多くの米が利用されている。(図1)
図1 焼酎の製造工程

図1 焼酎の製造工程


 麹を造る際に用いられる米(以下、焼酎麹用米)は安価な海外産米などが使われてきた。ところが、国産志向の高まりや酒造メーカーの地域ブランド商品開発の要望などから、国産米や地元産米への転換が進み、需要が高まっている。
 
 しかし、多収で醸造適性に優れる専用品種はなく、その低い収益性から供給量が極端に不足している。そこで酒造メーカーからは供給が安定的で焼酎麹用に使える米を、生産者からは多収で耐病性・耐倒伏性のある米を強く求められている。 

▽研究業績


写真1 「み系358」の草姿 左:「み系358」 右:「まいひかり」

写真1 「み系358」の草姿 左:「み系358」右:「まいひかり」

 県総合農業試験場(作物部)では、08年に多収で耐倒伏性の強い「南海141号」を母、「いもち病圃(ほ)場抵抗性遺伝子」を持ち、いもち病に極めて強い「東北195号」を父として、人工交配を行った。

 同年冬に1世代目を養成。その後は集団育種法で世代を進め、10年に個体選抜を行った。それ以降、系統育種法で選抜・固定を実施。12年には「み系358」の系統番号で生産力検定および特性検定試験に提供した。14年には「南海181号」の系統名で関係県に配布・地方適応性を検討してきた。

 また、早急な品種化と普及を図るため、14年に県内25カ所の実証農地を設けて適応性を検討し、併せて県食品開発センターにおいて醸造適性試験を行った。

 これらの取り組みの結果、「適性有り」(既存品種からの代替可)と判断されたことから、必要データを収集して15年6月に「み系358」として品種登録出願を行った。(写真1)

▽品種の特徴


 「み系358」は焼酎麹用を想定し、多収性やコスト低減につながる病害抵抗性、麹を造る際の作業性に着目して選抜・育成を進めてきた。「み系358」は晩生で加工用にも用いられる主食用多収品種「まいひかり」と比較し、次の特性を有する。(表1)

(1)生態的特徴
 出穂期、成熟期は「まいひかり」と同等であり、暖地では“かなり晩”に属する。稈長(かんちょう、稲の地際から穂首までの長さ)は「まいひかり」よりやや長いが、稈がやや太く強いため耐倒伏性に優れ、「まいひかり」並みの“強”である。いもち病圃場抵抗性遺伝子を持ち、葉いもち、穂いもちとも圃場抵抗性は“強”と優れており、病害虫防除の削減が可能と考えられる。

写真2 籾と玄米 左:「み系358」 右:「まいひかり」

写真2 籾と玄米左:「み系358」右:「まいひかり」

(2)収量・品質
 玄米収量は「まいひかり」より1割以上多収で、収益性の確保が期待される。大粒・やや長形で玄米千粒重が重く、「まいひかり」や他の主食用品種との識別が可能(写真2)。一方、大粒であることから玄米品質については心白粒や腹白粒の発生が見られる。
 白米のアミロース含有率は「まいひかり」よりやや高め。アミロース含有率は蒸米の粘りに関係し、麹造りに影響を及ぼす。すなわちアミロース含有率が低い米は粘りが強く、製造工程において機械に残り、洗浄等に時間がかかるなど作業性が劣るほか、粒同士がダマ状になることから麹の繁殖や麹の出来にも影響を及ぼすが、「み系358」は醸造試験において蒸米の粘りが少なく、作業性が良好。
 「み系358」を麹原料として醸造した芋焼酎の一般成分やアルコール分は「まいひかり」と差はない。官能評価も同等(良好)の評価を得ており、酒造メーカーのニーズにしっかり対応できるものと考えられる。(表2)

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