みやビズ

2018年7月19日(木)
テクノリポート~県工業技術センター・県食品開発センターの取り組み~

宮崎キャビアの生産を支えるチョウザメ種苗の供給

2017/11/14

県水産試験場内水面支場


【研究の経緯】

 本県のチョウザメ研究の歴史は、今から34年前の1983(昭和58)年までさかのぼる。当時、日ソ漁業協定の親善の証しとして、ロシア(旧ソ連)から日本にチョウザメの卵(ベステル:オオチョウザメとコチョウザメの交配種)が寄贈され、それがふ化した稚魚の一部(200尾)を水産試験場小林分場(現内水面支場)が受け入れたことが始まりである。

 稚魚を受け入れてから8年後の91年、国内では2例目となる「人工ふ化」に成功した。その後、94年には北米産のシロチョウザメに魚種を変更し、2004年には全国初となる完全養殖(人工ふ化した稚魚を親として卵を採り、稚魚を育成すること)に成功した。このシロチョウザメの完全養殖成功を機に、本県の本格的なチョウザメ養殖がスタートした。

【親魚養成】

支場で飼育しているシロチョウザメ。多い時には1尾から約10万粒を採卵できる

支場で飼育しているシロチョウザメ。多い時には1尾から約10万粒を採卵できる

 魚の親から卵を採り、それを授精させた後にふ化させて稚魚に育てることを「種苗生産」と呼ぶ。種苗生産において状態の良い親を確保することは大変重要なポイントになる。

 これまでの研究で、雌のチョウザメに良質の卵を持たせるためには、冬と春を感じさせる必要があることが明らかとなっている。このため、親の候補となるチョウザメは一定期間低い水温で飼育し、卵を採るタイミングに合わせて水温を上げる手法が開発された。この温度変化により卵の成熟が促進され、良質な卵の入手が可能となる。

【採卵】

 採卵は、雌のおなかの卵を一部取り出し、適度に成熟した卵が確認された個体から行う。採卵する際は、雌を担架に乗せた状態でベルトで固定し、おなかを押して出てきた卵を回収する。支場で飼育しているシロチョウザメの場合、多い時には1尾から約10万粒の採卵が可能である。

【卵の管理】

卵をフラー土の懸濁水(いわば泥水)の中で漂わせ、卵の表面をフラー土でコーティングし粘着力を失わせる

卵をフラー土の懸濁水(いわば泥水)の中で漂わせ、卵の表面をフラー土でコーティングし粘着力を失わせる

 採取した卵は、別途用意した雄の精子と混ぜ合わせ授精させる。チョウザメの卵は水に触れると強い粘着質の膜を作り、卵同士が互いに付着してしまう。この状態では内側の卵が呼吸できずに死んでしまうため、卵同士が付着しないよう「脱粘処理」を行う。試験の結果、卵をフラー土の懸濁水(いわば泥水)の中で漂わせ、卵の表面をフラー土でコーティングし粘着力を失わせると良いと分かっている。この工程を経た後に、卵は専用の容器に収容され、流水でふ化まで管理される。 

【稚魚の飼育管理】

粘膜処理後の受精卵。ふ化管理中の卵は、飼育水温が17度の場合、通常5日程度でふ化が始まる

粘膜処理後の受精卵。ふ化管理中の卵は、飼育水温が17度の場合、通常5日程度でふ化が始まる

 ふ化管理中の卵は、飼育水温が17度の場合、通常5日程度でふ化が始まる。シロチョウザメのふ化仔魚(しぎょ)は1センチ前後で、ふ化後しばらくの間は腹部の袋の「ヨークサック」から栄養をとって成長する。ふ化後約10日で餌を食べるようになるため、配合飼料(人工的に調合された餌)の給餌を開始する。稚魚が小さい間は、毎日の給餌と掃除は欠かせないことから、土日祝日も職員が交代で管理している。

 飼育する水槽は、ふ化して約1カ月の間は約400リットルの小型の水槽を使用し、魚の成長に合わせて段階的に大きな水槽へと移していく。

【養殖業者への供給】

ふ化から10日目の仔魚。12〜13ミリの大きさ。稚魚が小さい間は、毎日の給餌と掃除は欠かせないことから、土日祝日も職員が交代で管理している

ふ化から10日目の仔魚。12〜13ミリの大きさ。稚魚が小さい間は、毎日の給餌と掃除は欠かせないことから、土日祝日も職員が交代で管理している

 稚魚は、ふ化後4〜5カ月で体重25〜50グラムに成長し、体形も親と同じ形となり、しっかりとしてくるため、この頃をめどに県内の養殖業者へと配布される。養殖業者の元では、宮崎キャビアの基準を満たす良質の卵を持つようになるまで、早いもので4年、長い場合は10年以上もの間、大切に育てられる。

【今後の研究】

 本県のチョウザメ養殖の発展と経営安定のために、内水面支場では現在4種類のチョウザメの研究を行っている。複数種の種苗供給により、多様な経営が可能になると考えているが、毎年安定して稚魚を供給できるのは一部の魚種であり、現在も技術開発が続けられている。

 種苗生産技術のみならず、過去には、チョウザメ肉には有用な生理活性機能が期待できるカルノシンのほか、コラーゲンも豊富に含まれることを確認するなど、さまざまな研究成果がある。今後も宮崎の特産物としての発展に寄与できるよう研究を進めたい。

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