みやビズ

2018年4月26日(木)
テクノリポート~県工業技術センター・県食品開発センターの取り組み~

新しい香りを作る製茶機の開発

2017/05/09
 宮崎県は国内有数の茶生産地であるが、本県のみならず全国的に茶を取り巻く環境は厳しくなっている。食生活が多様化し、消費構造も変化しているのが要因の一つ。茶の市場価格は年によって変動があるものの、20年前に比べて収益性が低く、安定していない。

~これまでにない「みやざき茶」を世界へ発信~ 県総合農業試験場茶業支場(川南町)


 宮崎県は国内有数の茶生産地であるが、本県のみならず全国的に茶を取り巻く環境は厳しくなっている。食生活が多様化し、消費構造も変化しているのが要因の一つ。茶の市場価格は年によって変動があるものの、20年前に比べて収益性が低く、安定していない。全国の試験研究機関で収益向上に向けた特徴ある茶の開発等に取り組んでいるが、収益に結びつく実用性の高い技術は、簡単には生まれていないのが現状だ。

【研究経緯】


 釜いり茶の生産が盛んな本県北部の西臼杵郡では、釜いり茶とウーロン茶の製法が釜でいる共通点を生かして、2009年から若手生産者を中心にウーロン茶生産に向けた試作や検討を行っていた。生葉から水分を平均的に取り除き、香りを発揚させる重要な工程は「萎凋(いちょう)」と言われる。収穫した生葉を日に干し、室内でかき混ぜたり、静置したりする工程である。一見単純に見える作業だが、生葉の中で起こっている香気に関与する成分の化学変化(香気発揚)が相手だけに、奥が深く簡単ではない。萎凋は手作業で13~16時間と長時間におよぶ。家族労働型の茶業経営では労力的に大変であり、香気発揚も安定せず、萎凋工程の省力化と品質の安定化が最大の課題であった。

【開発のポイント】


 筆者は09年に西臼杵郡を管轄する県の農業者支援機関「西臼杵農業改良普及センター」に所属していたが、県総合農業試験場茶業支場(川南町)に異動したのを機に、13年度から萎凋機の研究を製茶機メーカーであるカワサキ機工(静岡県島田市)と始めた。

 萎凋のポイントはおおむねつかんでいたこともあり、機械開発については、そのポイントに沿った構造を目指した。萎凋工程以降は複数の製茶工程を経て、焙煎(ばいせん)を行い製品となる。研究を重ねるうちに「生葉の熟度」「萎凋方法」「製茶方法」「焙煎方法」のどれか一つでもポイントを誤ると香りが発揚しない、または香りが残らないことが分かった。外国の品種はもともと香りが発揚しやすいが、国内の緑茶用品種は同じような処理をしても香りが発揚しないため、それに適した香りの方法が存在すると考えた。萎凋以降の工程についても最初は中国や台湾の製法を参考にしていたが、緑茶用品種ならではのやり方の必要性に気づいた。

 開発した萎凋機で製茶した茶の品質は、中国や台湾で生産されるウーロン茶と同じ香味ではない。全国規模の日本茶コンテスト「日本茶アワード」で、生産した茶(新香味茶)が14年度、15年度と香り部門で2年連続の1位を獲得した。使用した茶葉は、本県で育成した緑茶用品種の「みなみさやか」だった。そのため研究上はウーロン茶ではなく「新香味茶」と呼ぶことにした。ウーロン茶はもともと中国語。研究用語で「新香味茶」は「緑茶にない香りの茶」と定義されている。最終的に販売する人が名前を決めればよいと考えた。


 14年度からは農林水産省の補助事業「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(2カ年)」を活用して、大型機での実証研究を開始。15年度にはカワサキ機工から「ドラム式萎凋機」という名称で販売された。開発した萎凋機には次のような能力や導入メリットがある。


【みやざき茶を世界へ】


 この萎凋機を開発し、使用することで、これまで見過ごされてきた国内の既存品種も高い香りを発揚する可能性が出てきた。現在、既存品種の再評価を行っている。

 開発した技術は農林水産省の補助事業を活用しているため、県外にも導入が進んでいる。県総合農業試験場茶業支場では新香味茶に適性のある品種育成を本県単独で行っている。育成される品種は本県オリジナルとなるため、近い将来、他県にはない強みになるのは明らかだ。

 開発した香気発揚技術は紅茶にも応用可能。これまで外国産紅茶の脇役的存在だった国産紅茶の位置づけを飛躍的に高める可能性が高く、県内生産者の新たな支えとなることが期待される。

 県では、この萎凋機を活用して生産した香り高い茶を県内外に発信していくため、ブランド認証等の検討にも着手していて、みやざき茶の活性化に貢献していきたいと考えている。

(栽培加工科主任研究員・髙嶋和彦)

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