みやビズ

2018年5月20日(日)
テクノリポート~県工業技術センター・県食品開発センターの取り組み~

発光ダイオードLEDの光が農作物の育成を刺激する 県工業技術センター機械電子部

2017/03/14
 理科の授業で学んだように“植物の生長には日光が必要”である。

 太陽からは、人の目に見える「可視光線」、短い波長の「紫外線」、長い波長の「赤外線」が降り注いでいる。可視光線は、波長域がおおよそ360〜780nm(ナノメートルは10億分の1メートル)であり、その光の色は、波長の短い方から長い方に、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤となっている。
(a)蛍光灯

(a)蛍光灯

(b)白色LED電球

(b)白色LED電球


(c)白熱電球

(c)白熱電球

(d)太陽光(参考)

(d)太陽光(参考)


図1 各種光源のスペクトル分布

 スペクトル分布(横軸が波長、縦軸は各波長が持つエネルギー)を見ると、図1(d)のように、太陽光は、あらゆる波長の集合体であることが分かる。

 ところが、植物は、太陽光の中で赤色を吸収して光合成し、青色を吸収して実や葉を形成(光形態形成)することが知られている。光を吸収しているのは葉緑素であり、450nmにピークがある青色と650nmにピークがある赤色を吸収して植物の生長に利用している。

 結局、植物の光合成や光形態形成には、太陽光の一部だけが利用されているにすぎない。全体では大きなエネルギーを持つ太陽光であっても、吸収される光自体は、比較的低いエネルギーで十分なことが、これまでの研究で明らかになっている。

 最近注目を集めている植物工場は、人工光、温度、栄養、その他の環境を植物に最適な形で、しかも、決して過剰にならないよう供与することにより、最大限の効率を狙っている。電力コストの面からも、光源は、植物に最適な波長とエネルギーを持ち、照射は十分制御される必要がある。

 では、どのような光源が効果的であるだろうか。代表的な市販品を比較した。

 「蛍光灯」のスペクトルには、図1(a)のように、青、緑、赤の固定した3つのピークがある。

 「白色LED電球」は、450nm(青)あたりに尖ったピークと560nm(黄)を中心に緩やかなピークを持つ【図1(b)】。青色LEDに黄色の蛍光体を塗布し、白色になるように作成されている。

 一方、図1(c)に示す「白熱電球」にはピークが存在しない。蛍光灯と白熱電球では、基本的に光の制御が困難である。

図2 各色LEDのスペクトル

図2 各色LEDのスペクトル


 発光ダイオードLEDは、消費電力が小さく長寿命で、エネルギー効率がよいという特長の他に、ノーベル賞受賞で注目された「青色LED」のように、単色の光(波長のピークが1本)を得ることができる。また、最近は、様々な波長光を発する単色LED(図2)が開発され、照明など幅広い用途で利用されている。

 最近、このLED光を利用する注目の研究が発表された。

 宮崎大学と県食品開発センターが発見したブルーベリー葉に存在する機能性成分について、ある種のLED光を照射しながらブルーベリーを育てると、機能性成分のポリフェノール量が大きく増加することが見出された。

 また、別の植物においても、特定の波長を持つLED光を照射した結果、植物に明らかな形態変化や機能性成分の増加が見られた。

 現在、多様な植物の生長や機能に光が深く関与していることを示す研究結果が、次々に報告されてきている。一部の波長光だけが植物に利用されていると考えられていた太陽光は、あらゆる波長を有するがため、実は、万能の光であったのかもしれない。

写真1 開発したLED光源装置

写真1 開発したLED光源装置

 光のスペクトルと植物の関係を明らかにすることは、将来の農業に劇的な変化をもたらす可能性がある。しかし、農業系研究者の多くは、さまざまな光源を使って植物の変化を調べているものの、光を自在に操ることが得手でないため、現象を正確に再現できていないと考えられる。このため、まだ詳しいことがほとんど明らかになっていない。

 そこで、県工業技術センターは、企業と共同で図2のLEDを複数組み込み、植物の研究に特化した光源装置(写真1)を開発した。光源から一方向に光が進み、単色光であり、波長とエネルギーが変えられるため、幅広い条件で再現性に優れた試験を行えるようになった。

 この光源装置を用いて、植物の種類ごとに光が及ぼす効果を明らかにし、次に、得られたデータをもとに、特定波長のLEDを設置した植物工場を建設することになる。

写真2 光学特性測定装置

写真2 光学特性測定装置

 県工業技術センターは、以前よりLEDに注目し、これを利用した新たな研究開発や企業に対する技術支援を行ってきた。光を自在に操る技術に長け、また、直径2mの光学特性測定装置(写真2)なども所有している。同機器は、照明製品の明るさ(ルーメンやスペクトル)など、光の特性を計測するのに使用されている。図1と2のスペクトルは、ほとんどこの機器で測定したデータである。

 本県は、全国有数の食料供給基地である。ブランド力も強い。この地位を確固たるものにするため、農工連携によって、他県に先駆けて人工光のテーマに取り組むことも一つの選択肢である。特に、植物工場のような新たな施設園芸農業への展開が期待される。

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