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2018年4月23日(月)
テクノリポート~県工業技術センター・県食品開発センターの取り組み~

脳活動を見える化する技術が介護福祉を変革する 県工業技術センター機械電子部

2017/02/14

20170213-bizTop.jpg 人は、言葉を使って情報を伝達する。ところが、言葉に頼ることができない場面が多い介護福祉・リハビリテーションの分野では、何か別の伝達手段を探さなくてはならない。

 人は、言葉を使って情報を伝達する。ところが、言葉に頼ることができない場面が多い介護福祉・リハビリテーションの分野では、何か別の伝達手段を探さなくてはならない。

写真1 プローブヘッドギア(左)と脳活動イメージング装置本体(右)

写真1 プローブヘッドギア(左)と脳活動イメージング装置本体(右)

 最近、県工業技術センター(冨山幸子所長)に、患者の脳内血流の変化を読み取ることができる「脳活動イメージング装置」(写真1)が導入された。脳内血流は、外部から受けた刺激に応じて変化するため、例えば、言葉を失った患者の感覚を直接的なデータとして取り出すことができると言われている。

 一方、介護福祉・リハビリテーションや健康機器分野は、今後訪れる高齢化社会を背景に、本県の主要産業に成長すると期待されている。そこで、県工業技術センターは、他県や海外との差別化を図るため、「脳活動イメージング装置」を活用し、脳科学の基礎研究から介護福祉などの産業化へつなげる戦略を立てた。

 まず、「脳活動イメージング装置」がどのような機能を持つのか述べたい。

 この装置の特徴は、「近赤外光(きんせきがいこう)」という特殊な光を使用していることにある。テレビのリモコンや光ファイバーなどの光通信、あるいは、医療分野の血中酸素量モニターなどに利用され、人体に影響のない安全な光である。

 この特殊な光で、なぜ、脳内の血流変化を調べることができるのだろうか?
 

図1 近赤外光が脳断面に届くイメージ

図1 近赤外光が脳断面に届くイメージ

 近赤外光には、頭部に照射すると、頭蓋骨を抜け脳表面にある毛細血管にまで届く特異な性質がある。さらに、その光の一部は、血液中のヘモグロビンに吸収され、残りが反射・散乱して脳の外側にまで放出されることも分かっている(図1)。

 「脳活動イメージング装置」は、近赤外光のこのような性質を利用して、頭部に近赤外光を照射するプローブと脳から出てきた光を受光するプローブ(光センサー)を複数つないだヘッドギア、それに、プローブから得られる光情報をカラーで表示し映像にするコンピュータ部を組み合わせた装置として開発された。

 光の吸収度が多ければ「血流量が増加」していることを示し、脳が活性化していることがわかる。プローブは、頭の額、頭頂部、側頭部、後頭部など、測定したい場所に取り付けることが可能である。
 

図2 脳の活動状況(前頭野)

図2 脳の活動状況(前頭野)

 図2は、脳の額部分にある前頭野(ぜんとうや)を「見える化」した事例である。前頭野は、人が思考を行うエリアで、快・不快や様々な判断を行っている。血流が多くなり活発に脳が働くと赤く、変化がない場合は青くなるように色分けされ、言葉を失った患者の思考状態を知る手掛かりとなりうる。
 

図3 リハビリ機器の使用効果 (左)リハビリなし、(右)リハビリ中

図3 リハビリ機器の使用効果 (左)リハビリなし、(右)リハビリ中

 次に、リハビリ用機器を使って手や腕を動かしたときの脳活動を調べた事例を見てみよう(図3)。運動をつかさどるのは、感覚エリアと言われる側頭部から頭頂部であり、図3の右は、リハビリによって側頭部付近が赤くなり血流が増加していることを示している。左のリハビリを行わない青色状態と比較して、今まで把握が難しかったリハビリの効果を映像化できていることが明らかになった。

 「脳活動イメージング装置」は、食品分野においても利活用が期待されている。

 例えば、味、臭いなどの食物のおいしさに対する感覚を、脳の活動から客観的に解析することが検討されている。これは、「おいしい」、「まずい」、「甘い」、「辛い」などの味覚表現の使い分けが、厳密には個人によって異なるためであり、曖昧な言語を共通する脳内血流変化に代替する研究も進められている。

 本装置は、脳内血流変化という意図的に変えることのできない刺激応答情報で官能評価を行うことが可能と言われ、食品の商品開発や市場リサーチなど、将来、有力な評価手段になると期待されている。

 以上のように、県工業技術センターにおける脳活動を「見える化」する技術と研究は、今後あらゆる方面のニーズに貢献できると考えられる。特に、本装置を導入している公設試は宮崎県工業技術センターだけであり、全国に先駆けた取り組みとしても注目されている。

 現在、「脳活動イメージング装置」は、県内の各機関に開放しており、すでに、企業・大学などでの利用が活発である。介護福祉・リハビリ関連の製品開発、官能試験のグローバルな評価など、時代を変革するオリジナル技術へと発展するきっかけとなることを期待している。

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