みやビズ

2018年6月25日(月)
タニダの法務ルーム

M&Aをうまくやるには(下)~外部承継と弁護士~

2018/03/22
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 前回は会社外の第三者に事業を譲るときの取っかかりについてお話ししました。今回は、そういった企業の買収・合併(M&A)に対して、弁護士がどういう立場で関わるのかについて説明して、みやビズでの「タニダの法務ルーム」の締めくくりとさせていただきます。

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たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

 会社の買い手と売り手がそろったら、条件の交渉が始まります。事業の規模にもよりますが、ある程度の規模のM&Aであれば、いきなり事業譲渡契約書を取り交わすということはありません。仮契約書のような「基本合意書」を取り交わし、買い手側が対象事業について調査する期間が設定されます。

 そして、買い手は期間内に売り手側の企業を調査して「ちゃんとした収益力のある事業か」「トラブルは抱えていないか」を納得した上で、本契約をするかどうか選べるわけです。
 
 この「トラブルは抱えていないか」を買い手側についてチェックするところに、弁護士の出番があります。

 はっきり言って、事業はトラブルやリスクの固まりです。「売主側が本当に株式を確保しているのか」「事業用不動産の利用権は有効に存在しているのか」「未払い賃金等の労使紛争を抱えていないか」「損害賠償請求を受けるような活動をしていないか」など、弁護士の視点で洗い出さないと安心できない要素がたくさんあります。

 親子間の承継と違って、全くの他人同士の取引になるため、こういった「買おうとしている事業に問題がないか」をプロの目でチェックする必要があるわけです。そして、発見された事業上の問題点について、手当てできるものについては手当てをし、できないものについてはその分について買収価格を下げてもらう交渉まで弁護士がやってくれます。

 しばしば、「弁護士には、事業譲渡契約書をチェックしてもらうだけで良いのでは?」「事業の内容まで立ち入らなくてもいいのに」との指摘を受けることがあります。ですが、「事業の具体的な内容」「買い手が何を期待して買収するのか」などの背景にある事情をきっちり把握しないと、弁護士は実のある契約書チェックができません。

 極端な言い方になりますが、背景や事情が分からないままですと、誤字脱字のチェックくらいしかできないわけです。そのため、事業譲渡契約書をチェックするのにも、事業内容の掘り下げたチェックが不可欠となるのです。

 また、「M&Aの仲介会社から渡された概要書にだいたいのことは書いてあるから、弁護士のチェックなんて必要ないよ」「概要書には、サービス残業はさせてないって書いてあったし大丈夫でしょう」などと言う方もおられますが、仲介会社の概要書は弁護士の法務チェックを経た内容にはなっていませんし、仲介者という立場上、リスクの洗い出しには自ずと限界があります。もっぱら買い手側を守るために法務チェックをできるのは弁護士だけですので、そういった意味でも弁護士に事業のチェックを依頼することは有益です。

 以上述べた「買収する事業のチェック」は、買い手側による弁護士の活用になりますが、売り手側が弁護士に依頼して、事業譲渡契約書に不利な条項が入っていないかをチェックしてもらっても良いでしょう。

 みなさんは10万円ほどのパソコンを買うときでも、動作の安定性やスペックについてきちんと調査して購入しますよね? パソコンでさえそうなのですから、M&Aのような「さまざまなリスクを抱えた商品を、高額で売買する」ような取引についてはなおのこと慎重に事前調査をしてもいいのではないでしょうか。

 さて、みやビズでの谷田の連載は今回で終了です。今後も引き続き「中小企業を法的トラブルから守る」という理念の下、活動していきたいと思います。経営者の皆さんでお困りの方がおられましたら遠慮なくご相談ください。

 また、4月から「タニダの法務ルーム」は、紙面にて月1回の連載企画として継続します。今後ともご愛読よろしくお願いします。
  
             
(おわり)

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