みやビズ

2018年9月22日(土)
タニダの法務ルーム

リスクだらけの事業承継(4)~遺言残して確実に!(2)~

2018/02/22
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 前回は「遺言をちゃんと残して、後継者へ確実に事業を承継させましょう」というお話をしました。その中で、遺言に弁護士を関与させた方がいい理由についてお話をしていたわけですが、今回は「弁護士を遺言執行者に指定した方がいい理由」について説明します。

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たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

 遺言では「土地Aを、長男Xに相続させる」といった形で、「どの財産を誰に相続させるか」という条項が中心となります。しかし、それ以外に、「Yを、遺言執行者に指定する」という条項を加えることができます。これによって、遺言した人が亡くなった後、面倒な遺産の取りまとめや相続人への配分を、遺言執行者がやってくれるようになります。

 弁護士が遺言執行者につくことは、相続人たちの手間が省けること以上のメリットがあります。例えば、会社株式の承継からは少し外れてしまいますが、遺産の中に預貯金があったとしましょう。仮に、遺言で「B銀行の預貯金は、長男Xに相続させる」と書いてあったとしても、遺言執行者がついていないと、銀行はすんなりとは預貯金の引き出しに応じてくれません。「他の相続人全員の実印と印鑑証明を揃えて来てください」という対応を受けます。

 銀行にしてみれば、「遺言が何かの間違いで無効になって、他の相続人に文句を言われたらいやだなあ」という心配があるので仕方ないのですが。いずれにしてもこれでは遺言をした意味が急減します。(結局遺産分割協議をするのと同じですしね)

 他方、弁護士が遺言執行者に指定されていれば、こういった対応を受ける恐れは減ります。この点については金融機関によってもまちまちなので断定はできませんが、少なくとも、県内で私が遺言執行者を務めた事案では、どこの金融機関もスムーズに遺言執行者に対して預貯金を引き渡してくれました。

 また、万が一県外の金融機関で「弁護士が遺言執行者でも、すんなりとは預貯金の引き出しには応じない。相続人全員の実印、印鑑証明をそろえるか、裁判を起こすかしてくれ」というかたくななところがあったとしても心配は必要ありません。そういった金融機関があれば、弁護士は遺言執行者としての職務を果たすため、その金融機関に裁判を起こして預貯金の回収をしてくれます。金融機関も、裁判を起こされると積極的には争ってこないので、預貯金の回収が長期化することはありません。

 少々事業承継から話がそれましたが、以上のように、「株式・事業を特定の相続人に確実に引き継ぐには遺言が必須」だけど、「形式・実質両面において隙のない遺言をするには弁護士の関与が不可欠」というわけです。

 ここに、親族内承継において弁護士の関与が必須といわれる理由があります。

 特に、中小企業においては会社株式だけでなく、事業用不動産も社長個人名義になっていたりします。そのため、「会社の経営を存続させるには、会社株式の他にどの財産を後継者に回るようにすればいいか」「それ以外の財産を他の相続人にどう配分すれば、遺留分を主張されないですむか」「その他、遺留分対策に役立つ特例・制度は使えないか」を考慮しながら、遺言を設計する必要が出てくるのです。

「自分が死ぬときのことなんて考えたくない。遺言なんてしたくない」とおっしゃる社長は少なからずおられ、またそのお気持ちもわかるのですが、死後に遺産分割トラブルが発生してしまうと会社はガタガタになってしまいます。本県でも、社長が遺言を残さずに亡くなり、相続人がどう対処していいか分からず、なし崩し的に廃業に陥った例が実際にありました。

 「社長が守ってきた会社が死後も継続・発展することで、社長自身の志を残せる」と考えて、遺言による事業承継を検討していただければと思います。

 遺言の話ばかりになりましたが、「親族内承継」のお話は今回で終わりです。

 次回からは、近時ニーズが急増している「第三者への会社売却、いわゆる企業の合併・買収(M&A)」に移ります。M&Aにおいて弁護士がどういう関わり方をするのかについて、残念ながら本県においてはまだまだ浸透していません。ですが、弁護士を関与させることで安定したM&Aができるようになりますので、M&Aにご関心をお持ちの社長はぜひお付き合いいただきたいと思います。

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