みやビズ

2018年7月19日(木)
タニダの法務ルーム

株式管理の鉄則(3) ~事業承継にお悩みの会社の場合~

2017/12/14
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 事業承継をお考えの社長の中には、2006年以前に会社を設立された方がほとんどかと思います。この場合、自社株式の集約は少々厄介になってきます。

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たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。


■パターン(2)1991年4月1日から2006年4月30日までの間に設立された株式会社


 この時期に設立された株式会社は一部例外を除き、基本的に株券を発行しなければなりませんでした。そして、株式譲渡契約をするときは、株券を相手に渡さないと株式が移転しない、とされています。

「そんなことを言われても・・・うちは株券なんて印刷していないんだけど?」「でも、元の株主には、株式を渡すって一筆書いてもらったよ?大丈夫でしょ。」という社長も多いかと思います。県内の中小企業の大半がそうだと思われます。

 そういった会社の場合、これまでの株式譲渡契約は「無効」となるわけです。一応、「会社があまりに長期間株券の発行をサボっていたときは、株券の受け渡しがなくても株式譲渡は有効になる」という救済的な最高裁判例はあります。では、長期間ってどのくらいなのかというと、これはケース・バイ・ケースとなります。
 
 そのため、この判例だけをあてにして「うちは長いこと株券印刷していないし、大丈夫だよね」というわけにはいきません。

 結局、会社設立後、株券を発行していないのに株式譲渡があった(譲渡したつもりになっている)場合は、どういうルートで株式が移転したのかを一つ一つ把握した上で、法的に有効な手続きをとって株式移転をやり直す必要があります。

「元の株主が行方不明になっている」とか、「元の株主が死亡してたくさんの相続人に渡ってしまった」という場合は、会社法上の制度を活用しながら会社株式を回収していくことになります。この辺になると、専門家の助力が不可欠となり、費用もかさんでしまいますので、一刻も早く株式の集約作業に取り掛かりたいところです。事態を放置しても、元の株主が行方不明になったり、死亡したりする確率が高まるだけで、状況が好転することはありません。

 なお、株主名簿を整備して、株式の移転状況をきちんと記録化しないといけないことは、前回のパターン(1)と同じです。

■パターン(3)1991年3月31日までに設立された株式会社


 おそらく、現在事業承継をお考えの会社で最も多いのがこのパターンでしょう。パターン(1)(2)でお話しした「株主名簿の整備が必要」「株券を発行していない状態での株式移転が無効になる」ということのほかに、当時の法律による規制も手伝って、会社株式の集約はとても大変になります。

 というのも、当時は「発起人(=会社立ち上げ時に株式を引き受ける役)を7人以上立てないと会社を設立できない」という規制がありました。この規制をクリアするため、家族はおろか従業員、親戚を引っ張り出して形だけ発起人になってもらうというやり方が頻発したわけです。これを「名義株」と言います。「うちの会社もこのパターンだな」と心当たりのある社長も多いのではないでしょうか。

一応、判例上は「株式の対価を実際に払い込んだ人が、株主である(=実際に出資金を出した社長が株主)」とされているのですが、相当時間がたっていることもあって、実際に金を払い込んだのが社長であるということを証明するのはなかなか大変です。

 万全を期すのであれば、形だけの名義人を一件ずつ当たって、株式譲渡契約をさせてもらうしかないでしょう。もっとも、ずっと前に退職した従業員などは連絡がつかなかったり、死亡して相続人に渡っていたりするのは(2)と同じで、会社株式の集約は大変な作業になります。
 
 こちらも、時間がたつほどさらに状況が悪化していきます。ですから、「会社をきちんとした形で後継者、または第三者に譲りたい」という方は、できるだけ早く対応に回りたいところです。

 幸い、最近になって、分散した株式を回収する制度がいろいろと整備されました。専門家を関与させた上で取り組めば何とかなるテーマでもありますので、ぜひ今回のコラムを機に、自社株式の集約に取り掛かっていただきたいと思います。

 自社株式の管理・集約は今回で終わりです。次回は、いよいよ最近はやりの「事業承継」に移りたいと思います。

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