みやビズ

2018年6月24日(日)
タニダの法務ルーム

知って得する債権回収(3)何を差し押さえる?~その1~

2017/07/27
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 前回は、「しらを切られても大丈夫なようにきちんと証拠を残すこと」について説明しました。今回は「差し押さえる(あるいは担保に取る)財産をきっちり調査すること」について解説します。

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たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

 きちんと契約書等を残していても、相手方の財産をきちんと把握していないと、債権回収はできません。悪質な相手方ですと「確かにおたくから在庫を仕入れてました。でも、お金がないから払えません」と開き直ることもあるので、今回以降お話しする差し押さえる財産をきっちり調査する視点はとても大事です。

 相手方の属性や状況によって、差し押さえるべき財産は異なってきます。いざ債権が焦げ付いたときに、相手のどの財産を差し押さえるのかを意識しておけば、慌てずにすみます。以下、財産ごとに差し押さえるときの注意点を説明していきます。

 1、相手方の動産(要するに「モノ」です)
 前々回に触れたことと重複しますが、皆さんが「差し押さえ」と聞いて真っ先に思いつくのはこれでしょう。

 「裁判所の執行官を連れて相手の家や事業所に押しかけ、中にある物を取り上げて売り払ってしまう」というやり方です。しかし、実は債権回収という点からはあまり有効ではありません。

 というのも、個人債務者については法律で「取り上げてはいけない動産」というものが決められており、自宅内にある物はほとんど取り上げることができないのです。例えば、家財道具関係は無理、現金は66万円を超える部分しか取れないなど、決まりごとが多いのです。また、ゴルフクラブなど生活必需品とはいえない物は差し押さえができますが、イマイチ大した値段がつきません。

 結局、動産に対する差し押さえが有効なのは、「腐りにくく転売しやすい物がいっぱい保管されている会社の事業所」くらいでしょう。とはいえ、ほとんどの物は二束三文でしか売れないでしょうから、やはり効率的な回収方法とはいえません。

 このような感じなので、動産の差し押さえは、インパクトは抜群なものの、債権回収という点からは効果に疑問符がつきます。

 では、動産の差し押さえは全く役に立たないのかといえば、そうとも言い切れません。
前述したとおり、インパクトだけは抜群です。自宅に他人が押しかけて、室内をジロジロ物色されるわけですから。
 
 ですので、「金持ちのはずなのに、うまく財産隠しをしているたちの悪い債務者」が相手の場合は、この動産執行で揺さぶりをかけ、事実上支払いを促すという効果があります。あまり品のあるやり方ではありませんが、一つのノウハウとして押さえていただければと思います。

2、相手方名義の不動産

 これも比較的わかりやすい手続きかと思います。裁判所に申請して、相手方の所有する不動産を競売にかけてしまう方法です。落札者が納めたお金から配当を受け取ることができます。
 
 メリットは、発見が比較的簡単なことです。不動産登記は一般に公開されていますから、相手の住所や本社所在地の登記を確認して、相手方の名義になっていれば差し押さえることができます。

 デメリットは、不動産に銀行の抵当権等がついていると、銀行の方が優先してしまうということです。支払いが焦げ付いている取引相手は、銀行等からも借金をしていて、自分の不動産に抵当権をつけているのが普通です。こういった不動産を競売にかけようとしても、裁判所から「銀行の抵当権が優先してあなたに配当されるお金は残らないでしょうから、もう競売は終わりです」と言われて打ち切られてしまいます。まさに「門前払い」というわけです。

 まれに抵当権がついていない不動産があったりしますが、それはたいてい銀行が価値なしと判断した不動産ですので、競売にかけても買い手はつきません。買い手がつかないとお金は配当されませんので、これまた骨折り損ということになります。

 以上のように、支払いが焦げ付いてから相手方の不動産を差し押さえても、ほとんどの場合銀行の抵当権に負けて回収できません。ただ、逆の見方をすれば、自社も取引相手の不動産にあらかじめ抵当権を付けておけば、いざ焦げ付いたときに優先的に回収できます。(もちろん、先に銀行の抵当権がついているとそれより優先順位は落ちてしまいますが)

 また、抵当権を付けておけば、いちいち裁判を起こさなくても競売にかけられるというメリットもあります。「今後、比較的金額の大きい取引を継続的にすることになった」という場合は、取引開始の時点で相手方の不動産に抵当権を付けさせてもらった方がいいでしょう。

 相手方の経営が健全な時点であれば、抵当権がついていない不動産が残っていることがあります。また、仮に銀行の抵当権が先に付けられていたとしても担保余力が残っていたりしますので、いざ焦げ付いたときの回収に役立ちます。

 さて、今回紹介したのは、「一般にも知られているけれど、債権回収には役立てにくい財産」でした。
 
 次回以降は、比較的債権回収に役立つ財産について解説していきます。今回紹介した「動産」「不動産」と比べて回収の成功率が段違いですので、ぜひ押さえていただきたいと思います。

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