みやビズ

2018年6月23日(土)
タニダの法務ルーム

知って得する債権回収(1)焦げ付きは自己責任

2017/05/25
 今回から中小企業が実際にぶつかる問題点についてテーマごとに解説します。まずは、売掛金や工事代金をきちんと回収する「債権回収」について、何回かに分けて実践的なお話をしようと思います。

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たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

たにだ・よしと 1979年、兵庫県伊丹市生まれ。京都大卒。宮崎地方裁判所で司法修習を受け、本県で弁護士登録。債権回収や事業再建、労務問題などに企業側の弁護士として対応する。中小企業診断士の資格も持ち、2015年7月、宮崎市橘通東1丁目に谷田経営法律事務所を設立。

 小売業や飲食業の経営者は「うちは現金商売だから関係ないな」「仕入れで掛け取引をすることはあるけど、回収を意識する必要はないな」と感じるかも知れません。ですが、債務者側に回った場合にも役に立つと思いますので、お付き合いください。

 中小企業の法務分野のうち、真っ先に債権回収を取り上げようと考えた理由はいくつかありますが、特に大きな理由は以下の3点です。お読みいただければ「えっ?そうだったの?」という点がいくつか見つかるのではないでしょうか。

 1、会社存続のため重要なのに、中小企業ではおろそかにされている。

 会社経営は「債権を回収し、得られたお金で自社の債務を弁済する」ことの繰り返しです。しかし、債権を回収できなくなると自社の債務も弁済できなくなり、会社の継続が危うくなります。人間でたとえると「息を吐くだけで吸えなくなる」ようなものです。
 
 にもかかわらず、「数千万円単位の契約を口約束で済ませてしまう」「焦げ付いたときにどうやって債権を回収するか全く考えていない」。そんな中小企業はまだまだ多いのが実態です。以前お話ししたように、債権回収は事前の予防でほとんど勝負が決まるので、このような状態を放置することは経営上大きなリスクとなります。

 約束通り支払いを受けることは、新規の取引先だと決して当たり前ではありません。また、長年付き合いのある取引先でも、経営が傾いたときは債権が焦げ付くおそれがあります。債権を抱える業種の経営者は、今回のコラムを機に債権回収を強く意識していただきたいと思います。

2、会社の自己責任が求められる分野である。

 1の延長ともなりますが、特に強調したいので独立した項を立てます。

 たまに「取引先が倒産して債権が焦げ付いた。この焦げ付き分を補填(ほてん)してくれる補助金はないのか」「取引先が代金を払ってくれないので裁判を起こして勝訴判決をもらった。この判決があれば、公的機関が立て替え払いをしてくれるのではないか」といった相談に来られる方がいます。残念ながらそのような救済措置は一切ありません。(債権焦げ付きの救済は、倒産防止共済による貸付制度くらいです)

 わが国では、中小企業に対する補助金・助成金制度が多数整備されていることもあって、このような誤解をされる方がおられるものと思います。そして、そういった漠然とした誤解や楽観が、債権回収を軽視する傾向につながるのでしょう。債権の焦げ付きは全額自社の損失になるので、くれぐれもご注意いただきたいところです。

3、フィクションの影響で誤解が多い分野である。

 以前に比べると、ドラマ・漫画などのフィクション作品もだいぶ正確な情報を発信するようになりました。それでも実務とかけ離れた描写がしばしばあります。
 
 債務者の自宅に立ち入って高級調度品やテレビなどにペタペタと「差押」と書かれた札を貼るシーンがありますが、実際の債権回収ではそのようなことはありません。

 この辺は次回以降の各論で詳しくお話しするつもりですが、債権回収の標的として有望な財産は、意外と知られていないものが多いです。

 次回以降、いよいよ債権回収の実践編に移ります。まずは「債権の証拠化」から入っていきます。債権の存在についてシラを切られないよう、本格的なものからお手軽なものまで、一通り方策を解説していきます。

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