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2018年6月25日(月)
西日本新聞経済電子版(qBiz)

諫干営農10年光と影 農産物生産額は倍に 入植者4分の1撤退

2018/03/30
一部区画では、排水を良くするために田畑に傾斜をつける対策が実施されている=25日、長崎県諫早市

一部区画では、排水を良くするために田畑に傾斜をつける対策が実施されている=25日、長崎県諫早市

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門開門を巡る一連の訴訟が混迷する中、造成された干拓農地は4月1日で営農開始から丸10年を迎える。666ヘクタールの農地では野菜栽培を中心に大規模農業が営まれ、農産物の生産額は当初の2倍近くに増加。一方で地盤沈下などの課題も浮上、これまでに当初入植者の4分の1が撤退する厳しい現実もある。

 農林水産省によると、干拓農地で生産されているのはキャベツやタマネギなど。全体の農産物生産額はほぼ右肩上がりで推移し、2016年度は初年度の1・9倍の37億6300万円に上った。営農規模の大型化が奏功しており、施設建設など投資の拡大も目立っている。08年に入植し、約50ヘクタールで営農する「愛菜ファーム」は温度や採光を自動調節するハウス8棟を建設中。5月完成予定で、主力のミニトマト栽培拡大に向け、ベトナム人6人も採用する予定という。

 ただ、不満を訴える声もある。地盤沈下による排水不良を訴える声などが相次ぎ、営農開始当初に入植した41経営体のうち、今期までに、経営不振などを理由に11経営体が撤退。土地を所有する長崎県農業振興公社は今月中旬、土地に緩やかな勾配をつける対策に着手した。

 諫早湾の干拓農地は、公社が営農者と5年ごとに貸借の契約を結ぶ方式。土地改良法は、国の造成農地について民間への売却を想定し、全国の国営干拓地の多くは営農者が取得しているが、諫早湾干拓事業では土地が細かく転売される恐れがあることなどから、売却のめども立っていない。

 作付けする品種を試行錯誤し、土壌改良に取り組んだ営農者は「10年たってやっと慣れた」と顔をほころばせた後につぶやいた。「手を入れた分、愛着もある。いつまでも賃貸では経営も安定しないんだが…」

 干拓地を巡っては、2経営体は提出書類不備などを理由に今期限りの契約打ち切りを通告されている。撤退した区画では新規入植者を公募し、公社は4月から37経営体と契約する。 

◇   ◇

営農者の賠償訴訟で漁業者弁護団共闘へ 開門求め補助参加


 国営諫早湾干拓事業を巡り、潮受け堤防排水門の開門を求める漁業者の弁護団は29日、長崎県庁で記者会見し、営農者である農業生産法人2社の開門請求訴訟に、4月上旬をめどに補助参加を申し立てる方針を明らかにした。

 農業法人2社は、干拓農地のカモ被害対策を怠ったとして、県農業振興公社などを相手に損害賠償を求める訴訟を長崎地裁に起こし、排水門の開門も追加請求していた。

 漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は「開門は諫早湾の1次産業再生に不可欠」と指摘。同席した原告の生産法人代表、松尾公春さん(61)は「漁業者側と共闘でき、ありがたい」と語った。

   ◇   ◇

高裁判決に不服 漁業者側が上告 開門差し止め訴訟


 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門差し止め訴訟で、開門を求める漁業者側は、開門差し止めを命じた昨年4月の長崎地裁判決に対する控訴を認めなかった今月19日の福岡高裁判決を不服として、最高裁に上告した。28日付。

 開門差し止め訴訟は2011年4月に営農者側が国を相手に長崎地裁に提訴。第三者である漁業者側は国の「補助参加人」として訴訟に参加した。同地裁は「開門による潮風害などは深刻」とする営農者側の訴えを認め、開門差し止めを命じ、国は控訴しなかった。漁業者側は「開門したくない国はわざと裁判で負けた」などと主張し、独立当事者参加と控訴を申し立てていた。

 19日の高裁判決は、漁業者側には申し立ての資格がないと判断。訴訟については「国の控訴権放棄と(控訴)期限の経過で確定し、終了した」としていた。

西日本新聞社

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