みやビズ

2018年5月24日(木)
オシネタ

「薬草の里づくり」に挑戦

2018/01/24
 久留米市田主丸町の柴刈地区には、筑後川の恵みを受けた豊かな土地が広がる。しかし、過疎化や高齢化で地域の主要産業である農業に元気がない。地元出身で元農業高校教員の高山憲行さん(70)は、そんな地域農業に新たな価値を加えようと、農業生産法人「産」を設立して薬草の栽培に乗り出した。

農業生産法人「産」(福岡県久留米市)


 久留米市田主丸町の柴刈地区には、筑後川の恵みを受けた豊かな土地が広がる。しかし、過疎化や高齢化で地域の主要産業である農業に元気がない。地元出身で元農業高校教員の高山憲行さん(70)は、そんな地域農業に新たな価値を加えようと、農業生産法人「産」を設立して薬草の栽培に乗り出した。栽培ノウハウを地域に広め、耕作放棄の歯止めにもしたい考えだ。

地域農業に付加価値


農産物直売所「筑後川の駅 しばかり」で、自社栽培のモリンガで作った加工品をPRする高山さん

農産物直売所「筑後川の駅 しばかり」で、自社栽培のモリンガで作った加工品をPRする高山さん

 産が運営する農産物直売所「筑後川の駅 しばかり」。季節のさまざまな農産物のほか、モリンガやメナモミなど自社栽培した薬草の加工品が並ぶ。高まる健康志向を追い風に多くの客が足を運び、地域住民の交流の場としても活用されている。

 高山さんの実家は専業農家。1960年代の農業が元気だった時代を知っているだけに、安定した収入を見込めない今の農業に危機感を募らせていた。教員を2008年に定年退職後、準備期間を経て13年5月に産を設立。住民の約4割が65歳以上と、高齢化の進む古里のために何かしたいという思いも後押しした。

 最初は減農薬・無農薬という付加価値の高い野菜づくりに取り組み、次が薬草栽培。北インド原産で、葉や枝にビタミンやミネラルなどを多く含むモリンガは、直売所隣の約15アールの農地で16年から栽培。苗を地域の農家に販売してノウハウを伝え、モリンガの産地化も進めている。

 血液の循環を改善する作用があるとされるメナモミは15アールで育てている。今年からはドクダミの栽培を本格化させる。ほかにもジャノヒゲやノビル、ゲッケイジュなどが植えてあり、訪問者が学べる体験農園としての役割も果たしている。

CSA農園を目指す


春を待つ薬草農園で。特徴が詳しく書かれた立て札で、さまざまな薬草の特徴を学ぶことができる

春を待つ薬草農園で。特徴が詳しく書かれた立て札で、さまざまな薬草の特徴を学ぶことができる

 国は薬草の国内自給率を10%程度から60%まで高めたいとしている。薬草生産には伸びしろがあり、鹿児島や熊本、長崎では産地化の動きが活発という。福岡では高山さんの取り組みに国や県、製薬会社などが熱い視線を注ぐ。高山さんが描く出口戦略は、農家が不利にならない、取引先と対等な関係が築けるもので、「中国などからの輸入品と同じ価格設定では農家の所得向上につながらない」と強調する。

 そこで具体的に目指すのが、同じ地域に住む農家と消費者が、共に農業の恵みとリスクを分かち合う新しい産直システム「CSA(コミュニティー・サポーテッド・アグリカルチャー)」。欧米を中心に急速に広まっている仕組みで、地域の消費者が生産コストを負担し、農家は生産物を分配する。農家は収穫分の販売先が確定し、消費者は新鮮な農産物が直接届くメリットがある。

 現在、地元企業や飲食店と薬草の活用法について協議している高山さんは「欧米と全く同じにはならないだろうが、薬草の生産と消費が日常的に循環するシステムをつくりたい。地域農業や住民の健康を守る“地域ファースト”の農業モデルとして確立させ、全国に広まれば、農業の厳しい現状を少しでも変えられるのではないか」と話している。
(福岡支社・鬼束功一)

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