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2018年5月23日(水)
オシネタ

中小メーカーに福音

2017/12/06
20171205-1admin_image_1512470528.jpg 総合不動産業のあなぶきグループ(高松市)と宮崎大は、焼酎廃液を活用して燃料用エタノールを製造する実証プラントを宮崎市の同大学内に設置した。5年前から手掛ける共同研究が、実用化に向けて一歩踏み出した形。本県の特産品である焼酎だが、廃液処理は中小メーカーにとって頭の痛い問題。新プラントはコストの大幅な削減につながるものとして期待が高まっている。

焼酎バイオマス燃料製造プラント(あなぶきグループ×宮崎大)


焼酎バイオマス燃料製造プラントを共同研究した、あなぶき加賀城建設の池田主任(左)と宮崎大の塩盛教授

焼酎バイオマス燃料製造プラントを共同研究した、あなぶき加賀城建設の池田主任(左)と宮崎大の塩盛教授

 総合不動産業のあなぶきグループ(高松市)と宮崎大は、焼酎廃液を活用して燃料用エタノールを製造する実証プラントを宮崎市の同大学内に設置した。5年前から手掛ける共同研究が、実用化に向けて一歩踏み出した形。本県の特産品である焼酎だが、廃液処理は中小メーカーにとって頭の痛い問題。新プラントはコストの大幅な削減につながるものとして期待が高まっている。

処理費が収益圧迫


 研究は同グループ傘下のあなぶき加賀城建設(高松市)の新規事業としてスタート。焼酎廃液はもろみを蒸留した後に残った液体で、焼酎かすとも呼ばれる。以前は海洋投棄していたが、2001年のロンドン条約を機に全量を陸上処理することになった。

 産業廃棄物として業者に処理依頼すると、1トン当たり1万円以上の費用が必要。年商10億円程度の中小メーカーでは年間5000万~6000万円の負担増となり、「廃液処理を制するものが今後は生き残る」と話す経営者もいるほどだ。廃液を堆肥やバイオガスなどに資源化する設備もあるが、これも高額なため中小メーカーは簡単に導入できない。

 「廃液を安く資源化する方法があれば、メーカーのコストを減らせ、地球環境にも貢献できる」。あなぶき加賀城建設で新規事業開発を担当していた池田勇人主任は、そこにビジネスの可能性を見いだし、研究に着手した。廃液からは全体の1%程度のエタノールが抽出できることが分かったが、もともと研究者ではない。独学には限界があり、効率よく取り出せる方法を探して各方面へ共同研究を呼び掛けた。しかし「無理に決まっている」との反応が大半で、パートナー探しは難航した。

 転機は県よろず支援拠点からの紹介。焼酎の製造法を20年以上研究する宮崎大の塩盛弘一郎教授(化学工学)と出会った。塩盛教授も最初は他の研究者と同様に考えていたが、池田主任の実験データを見て反応が変わった。「確かにエタノール濃度が高くなっている。これはいけるかもしれない」

完全循環型のシステム構築


プラントのうち、先行して研究室に設けられた蒸留装置。多段式を取り入れるなどの工夫を凝らし、一度で高濃度のエタノール抽出が可能となった

プラントのうち、先行して研究室に設けられた蒸留装置。多段式を取り入れるなどの工夫を凝らし、一度で高濃度のエタノール抽出が可能となった

 試行錯誤を続ける中、廃液中に酵素や酵母の機能が残存しており、デンプン質を加えることでエタノールを生成していたことが分かった。最適な発酵環境や配分などの研究を進め、従来より10倍近い効率でエタノールを抽出することに成功。エタノールはボイラー発電の燃料として利用できて、売電もできる。抽出後に出るかすもバイオマス固形燃料に活用できる完全循環型のシステムを作り上げた。

 今回、稼働させた実証プラントは販売予定の約30分の1の規模。設置費用はあなぶきグループからの寄付でまかなった。今後はデータを集め、一層の効率化を目指す。焼酎メーカーや研究機関からの見学も受け入れる。

 来年度までに1日30トンの処理が可能なプラントを約3億円で販売する予定。処理費は業者に委託するより7割ほど安く、設置費は国の補助金制度の対象にもなる見込み。5、6年で設備投資の元が取れる試算という。

 経済産業省の14年工業統計によると、本県の出荷金額の1位が焼酎で989億円。その出荷量の約9割が県外向けで、外貨を獲得する重要な産業だ。池田主任は「環境と地場産業への貢献ができれば何より。浮いた経費が他の投資に回れば、地域活性化につながる」。塩盛教授は「実用化にかなり近いところまできているし、高い需要を感じている」と意気込んでいる。   
(佐藤友彦)

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