みやビズ

2018年6月23日(土)
オシネタ

山と海が育む新ブランド

2017/09/06
 養殖業が盛んな延岡市北浦町。そこで養殖され、餌にブドウの皮を加えた「五ケ瀬ぶどうカンパチ桜舞(AUBE)」が注目を集めている。養殖するのは地元の丸正水産と中千代水産。そしてブドウの皮を提供するのは五ケ瀬ワイナリー(五ケ瀬町)。海と山の異色の組み合わせと、養殖カンパチでは難しいとされてきた食味の大幅な改善が評価を押し上げている。

五ケ瀬ぶどうカンパチ桜舞(延岡市北浦町)


食味大幅に改善

臭みや脂っこさがないさっぱりとした味わいが人気の五ケ瀬ぶどうカンパチ桜舞(AUBE)。養殖する丸正水産の堀田社長は「魚と地域を一緒に売り込む」と意気込む

臭みや脂っこさがないさっぱりとした味わいが人気の五ケ瀬ぶどうカンパチ桜舞(AUBE)。養殖する丸正水産の堀田社長は「魚と地域を一緒に売り込む」と意気込む

 養殖業が盛んな延岡市北浦町。そこで養殖され、餌にブドウの皮を加えた「五ケ瀬ぶどうカンパチ桜舞(AUBE)」が注目を集めている。養殖するのは地元の丸正水産と中千代水産。そしてブドウの皮を提供するのは五ケ瀬ワイナリー(五ケ瀬町)。海と山の異色の組み合わせと、養殖カンパチでは難しいとされてきた食味の大幅な改善が評価を押し上げている。

難しいカンパチに商機

 産地のブランド価値向上のため、2社は日向市特産の平兵衛酢(へべす)の皮の粉末や果汁を混ぜた餌を与えた「へべすブリ」の養殖、出荷に2014年から取り組む。市場の評価は高いが、県外でもへべすブリと同様に地元のかんきつ類のミカンやカボスを混ぜた“ご当地ブリ”の養殖が盛んとなっており、全国を相手にした場合、差別化は難しい状況となっている。

 一方、カンパチはかんきつ類の香りや風味が身に移りにくく、ブリのようなブランド化は難しい。このため、取り組む養殖会社も少なく、ブランド名が付く養殖カンパチの流通量はかなり少ない。丸正水産の堀田洋社長は「店頭ではどの養殖カンパチも『宮崎産養殖カンパチ』という名前で並び、同じように扱われるため、養殖する側もやりがいを見いだせなかった」と話す。

 そこで堀田社長が挑んだのが、かんきつ類ではなく、ワイン用に搾った後に出るブドウの皮を餌に混ぜることだった。難しいカンパチにこそ商機があると判断したのだった。

廃棄物が高付加価値に

五ケ瀬ワイナリーの農園でブドウの出来を確かめる宮野支配人。今シーズンはブドウの皮のほか、房の軸も粉末にして餌に配合する

五ケ瀬ワイナリーの農園でブドウの出来を確かめる宮野支配人。今シーズンはブドウの皮のほか、房の軸も粉末にして餌に配合する

 堀田社長とブドウとの出合いは16年夏、五ケ瀬町の居酒屋で偶然生まれた。同じ店に居合わせた五ケ瀬ワイナリー常務の宮野恵支配人を紹介されたのがきっかけだった。そこで、同ワイナリーが生産者のブドウを通常の取引価格より高く買い取ることで産地を下支えし、若者の人口を増やすためにブドウの栽培面積を広げているという取り組みを知った。堀田社長は「同じ1次産業として地元を支える情熱や理念に胸を打たれた」と振り返る。

 その席で「海外ではブドウの皮も食べている。香りが高く、再利用の価値がある。無料提供するので挑戦してみては」という宮野支配人からの提案があったという。堀田社長も栄養価が高く健康的なイメージのあるブドウを餌に使うことで、買い物客の中心となる主婦層への訴求力も高まると判断。その場で両社が協力することが決まった。

 ワインの仕込みが本格化する10月から川南町の飼料開発会社で乾燥・粉砕させた皮を餌に配合する実証実験を開始。出荷前に添加率0.1%と0.05%の餌を30回給餌したところ、15回目の中間試験で効果が表れた。養殖魚特有の臭みや脂っこさがなくなり、天然魚に近いさっぱりとした味わいとなった。身の弾力性も高く、通常1~2日で変色する血合いも、3~4日は鮮やかな色を保ったままだった。しかも添加率0.05%で十分な結果が得られることも判明した。

 すぐに商品化を決め、ブランド名には同ワイナリーの主力ワイン「桜舞(AUBE)」を入れた。安定した出荷量を確保するため、地元の先輩でもある中千代水産の中田真稔社長にも声を掛けた。

固定価格で経営安定

「手間をかけるほど評価が上がる」と語る中千代水産の中田社長

「手間をかけるほど評価が上がる」と語る中千代水産の中田社長

 12月に出荷を開始。取引価格は相場に左右されない固定価格に設定しており、通常の養殖カンパチより約20%高いが、市場の反応は高い。堀田社長は「これまでと違い収支計画を立てることができ、未来を見据えた養殖業を確立できる」と話す。

 1匹3.5~4キロで出荷し、丸正水産が年間1万2000匹、中千代水産が2万5000匹を見込む。また、直接注文があった分については、鮮度が長続きする神経締めと血抜きを1匹ずつ行っている。こうした地道な取り組みが品質や評価のさらなる向上につながっている。

 宮崎、延岡市内の飲食店や市場のほか、これまで商流のなかった五ケ瀬や高千穂町内のスーパーとの取引も新たに始まった。年末の書き入れ時に向けてこれから品質管理やPRが正念場を迎える。のぼり旗やポスターを増やし、飲食店やスーパーに直接出向く予定で、五ケ瀬ワインと一緒に販路拡大も行う計画もあるという。

 中田社長は「自分の養殖した魚がどこで食べられているか分からなかったが今は違う。反応が良くても悪くても、やりがいにつながっている。手を掛けたほど評価につながる」、堀田社長は「仲卸会社や市場、飲食店任せではなく、養殖会社が自ら考え、動いてPRしなければ認知度は上がらない。さらに出荷量を増やし、地域ごと売り出していきたい」と意気込みを語った。
問い合わせ丸正水産電話0982(45)2243。
(巣山貴行)

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