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2018年8月16日(木)
オンリーワン@WEB

焼酎の原酒製造 宝酒造黒壁蔵(高鍋町)

2015/07/29
1979(昭和54)年から使われている甲類焼酎の原酒を製造する単式蒸留機

二つの顔を持つ工場


 宝酒造(京都市)は清酒から焼酎、缶酎ハイなどのソフトアルコール飲料、みりんまで製造している大手酒造メーカー。全国に6カ所の製造拠点があり、その中で甲類焼酎の原酒(貯蔵熟成酒)を唯一造っているのが高鍋町にある「黒壁蔵(くろかべぐら)」だ。施設内では南九州で盛んな本格焼酎(乙類焼酎)も製造していて、二つの顔を持つ国内でも珍しい工場としてトップメーカーの屋台骨を支えている。

85種類の「原酒」


 焼酎は蒸留方法の違いにより、連続式の甲類と単式の本格焼酎に分類される。宝酒造の甲類焼酎ブランド「宝焼酎」には、「純」「ゴールデン」「レジェンド」などの製品がある。無味無臭な原料用アルコールと黒壁蔵で製造した原酒を、さまざまな割合でブレンドして味、香り、色といった製品ごとの個性を生み出している。原酒の数は85種類にもおよぶ。

1979(昭和54)年から使われている甲類焼酎の原酒を製造する単式蒸留機

1979(昭和54)年から使われている甲類焼酎の原酒を製造する単式蒸留機

 黒壁蔵は1938(昭和13)年、サツマイモを原料とする国営のアルコール工場として設立された。戦後の52(同27)年に宝酒造へ移管。2004年に名称を「黒壁蔵」へ変更。現在、10種類の蒸留機が場内にあり、栁生淳二工場長は「これだけ多数の蒸留機が1カ所に集まっている醸造所は世界でも高鍋だけではないか」と胸を張る。

 蒸留機の中で代表的なものが、1979(昭和54)年に設置した甲類焼酎用の原酒を製造する銅製の単式蒸留機。ウイスキー工場などで見られるポットスチル型で、スコットランド産。海路日本へ運ばれ、搬入当時の様子は地域の大きな話題として当時の宮崎日日新聞でも取り上げられた。原料のもろみに熱を加え、気化したアルコールを水で冷やして液体として取り出す。もう一度蒸留して濃度の高い原酒を製造。完成品を樫樽に詰めて静かに寝かせる。

2万樽を貯蔵


貯蔵熟成酒の樽が整然と並ぶ黒壁蔵の自動ラック倉庫

貯蔵熟成酒の樽が整然と並ぶ黒壁蔵の自動ラック倉庫

 4千樽を収納できる自動ラック倉庫は4棟あり、手動式のものも含めると約2万個の樽が眠っている。手動式倉庫の扉を開けると、焼酎の香りが一気に押し寄せてきた。甘く芳醇(ほうじゅん)で、嗅いだだけで酔っ払ってしまいそうな迫力。自動ラック倉庫は15個の樽が天井付近まで縦に整然と並び、巨大な図書館の書庫を思わせる。コンピューター制御のリフトが備え付けられていて、位置を入力すると前後左右に動いて指定した樽を運んでくる。

 サンプルを取り出してみた。ウイスキーのような琥珀(こはく)色の液体がグラスの中で揺れる。貯蔵して1年弱の「若い原酒」で、色が薄く、香りにも荒っぽさが残る。熟成が進むと色が付き、香りも穏やかになって、まろやかな味わいになるという。

 場内には貯蔵用の樽をリメークする作業場もある。樽の内側はすべて焼き締められている。原料のアメリカンホワイトオークの生臭さを消すためという。10年ほど使うと樽内の香味が乏しくなるそうで、使用回数や最後に貯蔵した原酒の出来具合などから焼き直しの作業を行う。

 栁生工場長は「南九州は焼酎文化の本場だから、この工場も発展してこられた。さまざまな原料をどう発酵させ、蒸留し、貯蔵熟成させるのか。黒壁蔵のさまざまな蒸留機とノウハウは宝酒造の大きな財産。その財産のバリエーションを技術的にも設備的にも増やしていくのが、これからのわれわれの仕事」と話していた。

 宝酒造「黒壁蔵」 敷地面積約7万4000平方メートル、建物面積約1万7000平方メートル。2014年度は本格焼酎を1万1700キロリットル、甲類用焼酎を3400キロリットル製造した。従業員90人(準社員など含む)。宝焼酎「純」のテレビCMには、1980年にイギリスのロックスター、デビッド・ボウイを起用し話題になった。「純」の増産で高鍋の施設も規模を拡大。同じくCM出演した俳優の萩原健一さんは、高鍋まで製造現場の見学に来たことがある。施設の一般公開はしていない。TEL0983(23)0172。

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