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2018年4月23日(月)
オンリーワン@WEB

サツマイモの直接取引 くしまアオイファーム(串間市)

2015/07/15
バリエーションが豊富な自社商品を手にする池田社長

多品種化で国内外に販路


 くしまアオイファーム(串間市、池田誠社長)は小売店とサツマイモの直接取引を始めた2010年以降、多品種栽培を核とした戦略によって国内外で着実に販路を拡大している。現在、国内では関西を中心にスーパーや百貨店、通販会社など約50社に青果品と加工品を販売。香港やシンガポールへの輸出も増やしている。


 「安心安全、おいしいは当たり前。差別化にならない」(池田社長)という同社の強みは、何と言っても豊富な品ぞろえだ。食感や甘み、実の色が異なる宮崎紅、紅はるか、パープルスイートロード、安納芋、シルクスイートの5品種を生産・販売している。この多品種化は国内小売店に営業を掛け、ニーズをとことん調査した上での結論だ。多品種の取り扱いは栽培や管理に手間を要するが、百貨店やスーパーは同社との取引だけで消費者のニーズを満たすことができる。間もなく収穫が本格化する今期は1品種を追加。これとは別に2品種を試験栽培している。

 加えて、同社は味を高める熟成技術や、これを維持する貯蔵技術に優れる。池田社長(45)は「これだけ多品種で高品質なサツマイモを袋詰めして、周年出荷できる体制はうちにしかない」と自負する。

強み生かし取引拡大


 昨年4月に始まった香港の高級スーパー「シティ・スーパー」との定期取引は、同社の強みが生きた好例と言える。1品種のみ、しかも月0・2トン程度の小規模な取引でスタートしたが、同社は現地の消費者を対象に試食とアンケートを実施。「どの品種がおいしいか」を尋ねたところ、嗜好(しこう)が分かれた。この結果を基に、スーパー側へ取扱品種の拡大を提案。5品種、月10トン以上の取引に成長させ、他県産のサツマイモは売り場から姿を消した。

バリエーションが豊富な自社商品を手にする池田社長

バリエーションが豊富な自社商品を手にする池田社長

 海外では小ぶりなイモが好まれるため、畝の幅を通常の半分にし、苗は2倍の本数を植える独自の栽培方法でMサイズ以下のイモを多く収穫できるようにしている。消費者の好みや調理法に合わせ、香港では最も小さな3Sや2S、シンガポールや台湾へはS、Mを出荷する。また、輸出で問題となるカビ、発芽、腐敗を防ぐため、住友ベークライト(東京)の鮮度維持フィルムの開発に協力。月内にも、同フィルムを使った包装に国内外向けとも切り替える。こうしたきめ細かなサービスも同社が支持される理由だ。

 商品開発力も同社の成長を支える。袋ごと電子レンジで加熱するだけで食べられる「ふかしいも」は都市部の女性を狙った商品。このほか、冷凍庫から出して食べればアイス、電子レンジでふかしいも、揚げればフライドポテトという三つの楽しみ方がある「デザぽて」、栄養豊富な「皮付き干しいも」などサツマイモの需要を広げる商品がそろう。


価格決定権握り、粗利増


 本年度(14年8月~15年7月)は契約農家15戸の協力を得て30ヘクタールに作付けし、800トンを生産した。最終的な売り上げは1億9000万~2億円を見込む。来月からの次年度は3倍増となる100ヘクタールで2500トンを生産し、契約農家は30戸となる。

 このうち海外向けは現在の80トンから750トンに拡大。全体の生産量に占める割合は10パーセントから30パーセントとなる。池田社長は「人口減や高齢化で国内市場は小さくなる。TPP(環太平洋連携協定)で相場も下がるだろう。そのときに動くのでは遅い。ノウハウを蓄積し、今からアジア各国でのシェアを取りたい」とし、「スポット販売の実績がある台湾とマレーシア、さらには台湾へも営業を掛け、定期的な取引につなげたい」と話す。

 しかし、海外に軸足を置くという構想ではない。国内での販路開拓にも積極的で、大手コンビニエンスストアや東海地方で店舗展開するスーパーと新規に取引を始める。
 取引先を国内外で増やすのは、リスク分散を意図したものだ。ただ、どこでもいいというわけではなく、「こだわりのあるスーパーなど、こちらが価格決定権を持てる売り先を選んでいる」と語る。

 池田社長が直接取引に乗り出したのは5年前。串間市は優れた産地でありながら、生産量も単価も下降の一途。「何かを変えなければ…」と考え、JAを介さない直接取引に踏み切った。流通過程が簡素化された結果、生産者粗利は従来の1.4~1.5倍になった上、店頭での小売価格も抑えられ、「小売店とウィンウィン(相互利益)の関係を築けた」。契約農家にも利益を還元しており、「貯蔵物で10アール当たり9万円は高く買っている」という。

 今月3日には同市内の工場跡(1万1550平方メートル)を購入。2000トン級の大型貯蔵庫や出荷ラインを来年から整備する。加工品では、自社のサツマイモと市内の米を原料とし、アルコール度数を抑えた女性向けの「おしゃれな焼酎」を開発中。国内外でサツマイモ専門店の展開も考えており、国内への出店は具体的な検討段階にある。

 池田社長は「今後の経営戦略も、国内と海外の販路開拓が両輪となる。青果品、加工品のブランディングを強化し、今までサツマイモに興味を示さなかった消費者に商品を届けたい」と抱負を口にする。

 くしまアオイファーム 2013年12月に法人化。資本金200万円。従業員19人。サツマイモ、サラダゴボウの生産、加工、販売を手掛ける。串間市秋山。同社TEL0987(72)1197。

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