みやビズ

2018年8月20日(月)
オンリーワン@WEB

黒木建設(日向市)

2012/09/05

工事現場の粘土を陶芸用に


 道路工事現場から出る粘土は、取り除いて捨てるか、セメントに混ぜて別の現場で再利用するしかない。いずれにしても処理に費用が掛かる、いわば“厄介者”だった。それを「陶芸用の粘土として使えないか」との着想から、陶土「ひむか古代粘土」として発売したのが黒木建設(日向市)の黒木教明社長。この粘土の付加価値を高めようと、今では電子レンジでご飯が炊ける陶器製炊飯器「土器どき丼」も開発して製作、販売している。異業種への挑戦は決して楽ではなかったが、「宮崎の土で新しい陶芸文化を」という思いが取り組みを支えてきた。

粒子小さく焼き上がり滑らか

ひむか古代粘土で作られた「土器どき丼」やティーポット、好みのサイズが選べるカップ。使うほどにつやが出るのも特徴という

ひむか古代粘土で作られた「土器どき丼」やティーポット、好みのサイズが選べるカップ。使うほどにつやが出るのも特徴という

 2006年11月、新富町の道路改良工事現場が異業種参入へのスタート地点だった。同町内の通山浜層といわれる地層から出た粘土を県工業技術センター(宮崎市佐土原町)に分析を要請。安全性を確かめた後、陶土として門川町の陶芸家に試し焼きを依頼すると、「面白い」と快諾を得た。耐火度は低かったが、その特性をつかんでしまえば十分に陶土として「使える」という反応と、趣のある湯飲みの試作品が返ってきた。道路工事の完成記念品に300個の湯飲みを製作、贈られた人たちは大変に喜んだという。その後、県内の窯元などを訪ね、意見を聞きながら1年余り反応を見て、販売化へ自身を深めた。

 「ひむか古代粘土」は通山浜層から出た粘土そのものを指す。特徴は、もともと粒子が小さく、焼き上がりが滑らか。ただ、耐火度が低いため、釉薬(ゆうやく)を掛けずに焼く「焼き締め」という技法に向く一方、この土単独では大作は作りにくいという側面もある。このため宮崎から出た土という愛着を持って使い始めた陶芸家もいるが、それまで使ってきた土へのこだわりが強い陶芸家も当然多く、なかなか普及しなかったのも現実だった。

 「うちの粘土は使いものにならん」と黒木社長が半ば諦めかけたとき、県の「みやざき工芸品商品力育成強化支援プロジェクト」のことを知り参加した。2010年のことだった。

「土器どき丼」誕生

「宮崎の土で作ったものを世に出して、皆さんに使っていただきたい」と話す黒木教明社長(左)と妻の美千代さん(中央)。社員の原田真由美さん(右)が商品を作っている

「宮崎の土で作ったものを世に出して、皆さんに使っていただきたい」と話す黒木教明社長(左)と妻の美千代さん(中央)。社員の原田真由美さん(右)が商品を作っている

 同プロジェクトのコーディネーターからは「この粘土だけを売るのか」と聞かれたが、粘土をどう付加価値を高めればいいか分からなかった。そこで土の性質を熟知するため、窯業が主要な伝統産業である愛知県常滑市の常滑窯業技術センターに詳しい成分の分析を依頼すると、常滑の土に非常に似ていることが分かった。これが自信につながった。また、窯業界の後継者や技術者育成を目指す佐賀県の有田窯業大学校の先生を務めていた陶芸家から、ひむか古代粘土の特性に合った石こうで作った型に粘土を流し込む「鋳込み」という工法を勧められ、自社製品開発へ突き進んでいく。

 「電子レンジでご飯を温めるような器を作っては」というアドバイスから、「電子レンジで簡単にご飯が炊けないか」と考え方を一歩進めたのは、妻の美千代さん。器の形などを試行錯誤して試作品が完成し、県工業技術センターや佐賀県窯業技術センター(佐賀県有田町)などでの粘土成分分析や安全性試験を経て、ついに11年7月、「土器どき丼」(3150円)を世に送り出した。

 「土器どき丼」は陶器製の二重ふた構造で、電子レンジで加熱すれば簡単に1合分を炊飯できる優れもの。遠赤外線効果でふっくらとしたご飯に仕上がるという。これからネットを通じた販売にも「力を入れていく」と意気込む。ほかにもティーポットやビアカップなど、使うほどに手触りの滑らかさが増す品をそろえた。異業種参入ならではの苦労も経験したが、黒木社長は「せっかく宮崎から出た土。その土で作ったものを世に出して皆さんに使っていただくことで、『宮崎にこんなにいい土があるんだよ』『宮崎にこんな新しい文化が育っているんだよ』ということを伝えていきたい」と話している。

 黒木建設 1962(昭和37)年6月創業、75(同50)年4月に株式会社へ組織変更。美郷町西郷区に仁窯を開設している藤本仁さんを講師に、週1回陶芸教室を開催。古事記編さん1300年の2012年、神武天皇お舟出伝説が残る地元・日向市の児童たちと舟形埴輪(はにわ)を作る同市のプロジェクトにも参加する。TEL0982(52)7158。同社ホームページアドレスhttp://kurokikensetu.com/

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