みやビズ

2018年4月24日(火)
マッチング

黒酢に新たな付加価値創生

2017/07/12
 錦江湾と桜島の大パノラマが見渡せる鹿児島県霧島市福山町。豊かな水と温暖な気候を利用した黒酢の醸造が江戸時代から受け継がれる。福山黒酢は2003年に地元の生コンクリート会社が異業種参入で設立。

福山黒酢(鹿児島県霧島市)


機能性解析し、食べ方提案


発酵、熟成中の黒酢の壺が並ぶ福山黒酢の壺畑。ガラス張りのレストランからは桜島と錦江湾が一望できる

発酵、熟成中の黒酢の壺が並ぶ福山黒酢の壺畑。ガラス張りのレストランからは桜島と錦江湾が一望できる

 錦江湾と桜島の大パノラマが見渡せる鹿児島県霧島市福山町。豊かな水と温暖な気候を利用した黒酢の醸造が江戸時代から受け継がれる。福山黒酢は2003年に地元の生コンクリート会社が異業種参入で設立。老舗醸造所が立ち並ぶ中、大学と連携して黒酢の機能性を解析し、直営レストランで食べ方を提案するなど、注目される取り組みで自社ブランド黒酢「桷志田(かくいだ)」の付加価値と知名度を高めている。

伝統技術を再現


 福山町に黒酢醸造が中国や沖縄から伝わったのは1800年ごろ。黒酢醸造の魅力は、一つの壺(つぼ)の中で発酵と熟成が完結することだ。しかし、同社によると、近年の健康ブームで大量消費されるようになってからは、機械化による大量生産が主流になりつつあるという。

 そんな中、親会社に当たる北薩コンクリート(鹿児島市)の社長を兼務する津曲泰作社長は「コストをかけて付加価値を高め、伝統の製法で最高の黒酢を造ろう」と一念発起。福山黒酢を設立し、黒酢醸造に乗り出した。

 伝統の味を忠実に復活させるため、まず、キーマンとなる黒酢杜氏(とうじ)には、50年以上にわたり老舗醸造所に勤め、引退していた赤池力さん(82)を登用。同社の津曲晋作取締役番頭は「本物のもの作りには人が必要と判断した」と話す。
 
 赤池さんが吟味した麹(こうじ)菌や、長年の経験から設計・特注した信楽焼の壺を導入。さらに、同県湧水町の契約農家で有機栽培された玄米を使用するなど、素材へのこだわりも徹底した。そして、通常半年~1年とされる熟成期間を3年に延ばすことで、香り高くこくの深い味わいに仕上げることに成功した。

レストランで食べ方提案


福山黒酢のブランド黒酢「桷志田」尽くしの「黒豚の黒酢酢豚コース」

福山黒酢のブランド黒酢「桷志田」尽くしの「黒豚の黒酢酢豚コース」

 2005年10月には販売や普及の拠点となるレストラン、物販施設「黒酢本舗『桷志田』」をオープンさせた。「飲むだけでは消費量に限界がある」と考えた結果だ。隣接する壺畑には2万個近い壺がずらりと並び、スタッフが案内に立つ。施設黒酢の歴史や醸造法をパネルで紹介し、自社商品の販売にも力を入れる。観光客の立ち寄りが一気に増え、20席で始めたレストランは400席にまで拡大。今や年間約25万人が訪れるほどの人気施設に成長している。

 レストランでは黒酢尽くしの料理を提供し、ランチタイムは多くの女性客でにぎわう。ブランド黒酢の桷志田をふんだんに使用した和洋中の料理があり、黒酢と黒豚を使った酢豚のコース料理が特に人気。テーブルにはどんな料理にも使える黒酢のボトルが備えてあり、自社農園の野菜で作ったサラダなどにかけられるようになっている。

 レストランの役割は食の提供だけはない。津曲番頭は「レストランで集めたお客さまの声をシェフが研究して、製造サイドにフィードバックする。そして、新商品のアイデアにする」と説明する。

 同社は黒酢を使った調味料やドレッシング、ジャム、菓子など幅広い商品を展開しており、レストランは新商品のアイデアと製造サイドをつなぐ場にもなっている。ちなみに、代表的な商品の「桷志田の食べる黒酢」は、レストランのまかない飯から生まれた商品だという。

がん細胞抑制効果も


黒酢よりも高い抗腫瘍効果が確認された「紅糀黒酢」。機能性の高さも付加価値を高める要素になっている

黒酢よりも高い抗腫瘍効果が確認された「紅糀黒酢」。機能性の高さも付加価値を高める要素になっている

 現在、特に力を入れているのが大学との共同研究だ。16年1月に発売した「紅糀(べにこうじ)黒酢」は、筑波大との共同研究でマウスのがん細胞の増殖を抑える抗腫瘍効果があることを今年3月に突き止めたばかりだ。

 紅糀黒酢は、主力の黒酢商品「桷志田」に、桜餅の色付けなどに使われる紅麹を加えたもの。紅糀はコレステロール値を下げる物質モナコリンKを生成する機能があり、台湾などでは漢方薬に使われている。こうした機能に同社は着目し、商品ラインアップに加えた。

 しかし、機能性をあらためて立証するため同大学と共同研究したところ、水、酢酸、黒酢よりも高い抗腫瘍効果があることが判明。同大学医学医療系の松井裕史専攻講師は6月に茨城県つくば市で開催した日本酸化ストレス学会で研究成果を発表した。今後、同社は紅糀を軸とした商品開発にも力を入れることにしている。

 また、同社は廃校となった地元高校の校舎を購入し、製造や研究開発の拠点として利用するなど、地域との密着度も高めている。津曲番頭は「黒酢の醸造、販売だけでなく、観光や雇用などの地域活性化にも貢献したい。業界では若い企業だが、これまで以上に黒酢の魅力や価値を広めたい」と意気込んでいる。

福山黒酢 黒酢の製造量は年間約87キロリットル。醸造に大豆を加え、通常の黒酢より1.5倍のアミノ酸を含む「桷志田 泉」がトップブランド。熟成年数によって3、5、10年物がある。桷志田は、江戸時代の薩摩藩の上級武士が開いたとされる「隠し田んぼ」が由来。問い合わせはフリーダイヤル(0800)8888962。http://www.kakuida.com/

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