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2018年4月26日(木)
マッチング

介助椅子改良へ開放特許を活用

2017/06/28
20170627-1admin-image-1498552113.jpg 医療・福祉用品を研究開発している花菱精板工業(延岡市、稲田健社長)は、オフィス家具大手のイトーキ(大阪)の開放特許「起立補助椅子」を使用するライセンス契約を今月結んだ。開放特許は企業や研究機関が公開する特許の一つで、比較的安価で技術を導入できることから、県は県内企業に開放特許の活用を進めている。両社の連携は県が仲介した初の知財マッチング事例で、今後の展開が注目されている。

花菱精板工業(延岡市)×イトーキ(大阪)


初の県仲介知財マッチング


花菱精板工業が制作した立ち上がり補助椅子と開発に取り組んできた熊本公祐課長。左は車椅子一体型、右は補助具を装着した椅子でいろいろなタイプに取り付けることができる

花菱精板工業が制作した立ち上がり補助椅子と開発に取り組んできた熊本公祐課長。左は車椅子一体型、右は補助具を装着した椅子でいろいろなタイプに取り付けることができる

 医療・福祉用品を研究開発している花菱精板工業(延岡市、稲田健社長)は、オフィス家具大手のイトーキ(大阪)の開放特許「起立補助椅子」を使用するライセンス契約を今月結んだ。開放特許は企業や研究機関が公開する特許の一つで、比較的安価で技術を導入できることから、県は県内企業に開放特許の活用を進めている。両社の連携は県が仲介した初の知財マッチング事例で、今後の展開が注目されている。

 延岡市大武町の延岡鉄工団地に立地する花菱精板工業の事務所には、足腰が弱い人の立ち上がりを補助する介助椅子の試作品がずらりと並ぶ。いずれも足元にペダルや、手元にレバーが付いており、力を加えると、てこの原理で座面が起き上がる仕組みになっている。

 同社は約5年前から介助椅子の研究を始めた。きっかけは、同社が成長産業である医療・福祉分野への進出を図っていた最中のこと。稲田社長は海外の公園で、高齢者が自分の体重を利用して健康器具で体を動かす姿を見掛けた。「体重移動だけで動く介助椅子を作れるのではないか」との着想を得た。

機能とニーズ合致し課題解決


 これまでの試作品は極めてシンプルな構造。電動機を組み込まないため軽量、低コストで、リハビリ用品への応用も期待されていた。しかし、座面が水平のまま起き上がり、体の自然な動きに追従しないことが課題で、製品化は見送られていた。

これまで花菱精板工業が試作してきた立ち上がりを補助する介助椅子の数々

これまで花菱精板工業が試作してきた立ち上がりを補助する介助椅子の数々

 転機は今年1月、県などが初めて開催した知財ビジネスマッチング会で訪れた。数々の特許シーズが紹介され、そのうちの一つがイトーキの起立補助椅子だった。利用者は立ち上がる際の体重移動で座面を動かすことができ、ばねユニットや支点位置の工夫により、座面が緩やかに傾きながら浮き上がる。体への負担が少ない仕組みだった。

 同会に出席した花菱精板工業の熊本公祐課長は、「求めていた機能に近い」と当日のうちにイトーキの担当者と商談。自社製品への応用の可能性を協議し、ライセンス契約へと至った。実際に特許内容を含む機構を制作するのはこれから。椅子のデザインなどはイトーキに依頼し、来年中には改良した介助椅子を完成させる予定。将来的には県産杉材など使用した椅子の制作も視野に入れる。

開発者のモチベーション向上


 特許を提供するイトーキにはどのようなメリットがあるか。同社は、商品化を見送った技術などを他社に活用してもらう取り組みを2015年から開始。これまで花菱精板工業を含む3社とライセンス契約を結んでいる。

 イトーキ知的財産推進室の水谷繁人主任は「光が当たらず、眠っていた技術を活用してもらうことで、発明した研究者のモチベーション向上につながるのが大きい。これまで交流のなかった企業から新たな知見が得られたり、共同開発のきっかけにもなる」と意義を強調する。

 内閣府が発表した「知的財産推進計画2015」では、「地方創生の観点からも地域の中小企業振興のために知財を活用する必要がある」と指摘。知財流通の拡大は国全体の流れとなっている。県企業振興課は「中小企業にとって開放特許の活用は、技術開発の費用やリスクを低減させるメリットがある」としており、今後も県内企業への知財マッチングを強化する方針だ。
              
(佐藤友彦)

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