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大学の研究生かし新薬開発へ ひむかAMファーマ(宮崎市清武町)

2017/04/12

炎症性腸疾患の治療に光を


 本県の研究者が発見し、医薬品への実用化に向けて臨床研究が進んでいるペプチド(アミノ酸化合物)「アドレノメデュリン(AM)」。臨床研究をベースにAMを改良し、より使いやすい医薬品の研究に取り組んでいるのが「ひむかAMファーマ」(宮崎市清武町、新城裕司社長)だ。今年2月、宮崎大学内に設立された。根治が難しい炎症性腸疾患患者の症状改善に寄与する医薬品の開発・製造を目指している。

既存薬超える効果と使いやすさを追求


改良型アドレノメデュリンを活用した医薬品開発に取り組むひむかAMファーマの新城裕司社長

改良型アドレノメデュリンを活用した医薬品開発に取り組むひむかAMファーマの新城裕司社長

 血管を拡張させる働きを持つAMは1993年、宮崎医科大(現宮崎大学医学部)の北村和雄教授が発見した。その後の北村教授らの研究で、粘膜などの組織再生や抗炎症作用があることも判明。動物実験を経て、2009年から人体の臨床実験に入った。

 実験対象の症例は、炎症性腸疾患の代表的な病気である潰瘍性大腸炎。大腸の粘膜にただれや潰瘍ができ、慢性的な腹痛や下痢が続く国指定の難病で、安倍首相も持病として公表している。実験では患者にAMの薬剤を点滴で投与。すると粘膜が再生し、症状がほぼ消える「寛解」状態に至った。

 北村教授らの研究は、大学の研究成果と民間の事業化ノウハウを組み合わせてベンチャー企業の設立を目指す、科学技術振興機構の「研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)」に採択された。14年度からの2年間を事業期間として、改良型AMの試験作製や安全性を確かめる実験に取り組んできた。

 弁理士の資格を持つ新城社長は、STARTの採択時に宮崎大産学・地域連携センターの職員として知的財産の分野を担当していた。研究が進み、成果が出始める中で、20代を中心に国内に約16万人いるとされる潰瘍性大腸炎の患者に思いを巡らせた。実験で効果があったAMの点滴には入院が必要で、現在採用されている治療法には骨粗しょう症といった副作用のリスクがある。

 新城社長は「働き盛りの世代には時間や体力的な負担が大きく、治療をためらうかもしれない。研究を加速させ、負担の少ない形の医薬品として世に送り出せないか」と思い、大学を退職。宮崎大学発のベンチャー企業としてひむかAMファーマを立ち上げた。

学生起業の手本にも


宮崎大医学部の研究チームが実施したアドレノメデュリン投与による大腸の粘膜再生の過程。(1)が投与前で(2)が投与から2週間後、(3)は3カ月後、(4)は1年が経過した状態。(1)で粘膜に見られていた凹凸がなくなり、大腸表面のひだが再生している(同社提供)

宮崎大医学部の研究チームが実施したアドレノメデュリン投与による大腸の粘膜再生の過程。(1)が投与前で(2)が投与から2週間後、(3)は3カ月後、(4)は1年が経過した状態。(1)で粘膜に見られていた凹凸がなくなり、大腸表面のひだが再生している(同社提供)

 同社は研究機能を持たないため、北村教授らAMの研究に携わっている専門家が取締役や顧問として名を連ね、医学的な観点からのアドバイスを適宜に受けることになっている。

 今は新薬開発へ改良型AMの基礎研究が終わったばかり。薬剤の有効性や安全性を確かめる動物実験に向けた次の段階に進もうとしている。研究者ではない新城社長は、研究開発費を調達するために県内外のベンチャーキャピタルなどに事業概要を説明して回っている。一般的に新薬開発には200億円以上かかるとされるが「大学の研究で実績があるので、投資家は興味を持ってくれている」と手応えを感じている。

 「通院して注射で薬を接種するなど日常生活を送る上で負担が少なく、かつ安全な治療法を求めている患者のためによい薬を届けたい」と意気込む。大学発のベンチャー企業という点から、学生のチャレンジ意識醸成にもつながると考える。「ベースとなる確固たる研究があり、事業化したい思いがあれば、都市部や地方は関係ないことを学生に知ってもらいたい」。そのためにも事業を軌道に乗せ、世界中で苦しむ患者の役に立つ薬を届ける覚悟だ。
(西村公美)

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