みやビズ

2019年8月21日(水)
マッチング

相談急増の理由を探る ひむか-Biz(日向市)

2017/03/22

前向きにして笑顔で帰す


 1月に開設したばかりの日向市の産業支援センター「ひむか-Biz(ひむかビズ)」が盛況だ。企業経営や起業、商品開発など幅広い分野の相談を受け付けており、開設から2月末までの相談者数は155件で毎日平均6件。リピート率も79パーセントと当初の予想を大幅に上回る高率をキープしている。どのような取り組みが行われているのか。活動を探った。

相手を絶対に否定しない


パッケージデザインについてアイデアを出し合う谷岩さんや長友センター長たち。リラックスした雰囲気の中で打ち合わせは進む

パッケージデザインについてアイデアを出し合う谷岩さんや長友センター長たち。リラックスした雰囲気の中で打ち合わせは進む

 雑居ビルの1階にひときわ目立つ「ひむか-Biz」の赤い看板が事務所の目印。室内には大きな円卓が二つ。真っ白な壁には経済や地方創生、地元の話題を中心とした新聞記事の切り抜きが張られ、情報感度の高さがにじみ出ている。

 同センターは中小企業の経営支援を目的に市が設置し、日向地区中小企業支援機構(島原俊英代表理事)が運営する。全国から視察が訪れる静岡県の富士市産業支援センター「f-Biz(エフビズ)」の取り組みに触発された島原代表理事が、「経済発展のために日向にもエフビズを」との思いで開設にこぎ着けた。長友慎治センター長もエフビズで研修を受けてから就任したほどだ。

 では、ひむかビズが目指すエフビズにはどういった特徴があるのか。長友センター長は次のように説明する。(1)相談者の強みを見い出し、お金をかけないアドバイスをする(2)相手を絶対に否定しない(3)結果が出るまでとことん伴走する-。さらに「どの事業者にも、必ず勝負できる強み、本人が気づいていないSP(セールスポイント、ストロングポイント)があることを前提で相談にのること」と付け加えた。

 また、エフビズは患者を問診するように相談に乗ることで、経営課題や問題に当たる「症状」を浮き彫りにして、症状に合わせた対処方法を共に考えていく手法を採る。相談内容はすべてカルテにまとめて問題点と改善点を記録する。

 ひむかビズでも同様の手法を採ることで、経営者たちにとってより身近な「かかりつけ医」になろうという発想だ。長友センター長は「病院と同じ。相談者を前向きにさせて笑顔で帰すことが一番大事」と話す。とにかく前向きな気持ちになれることが、高いリピート率の要因になっているようだ。

相談は真剣勝負


 3月13日午後、茶小売・卸の谷岩茶舗(日向市)の谷岩孝彦さんがひむかビズを訪れた。相談は今回が3回目となるが円卓に着く表情は堅い。これまでの2回で課題を洗い出し、会員制交流サイト(SNS)を使って店舗の情報発信の改善に取り組んできた。

 同日は知的財産に特化した相談日。長友センター長と共に、県発明協会の知財総合支援窓口担当の杉本準さんも同席した。同協会を通じてデザイナーに無料でパッケージデザインを注文できる制度を利用することが目的の一つだという。

 谷岩さんによると、同店の店舗販売は50代以上の顧客がほとんど。「商品には自信があるが、販売をおろそかにしてきた」という自省があり、若者の顧客を増やさなければ収益を維持できる見込みが薄い。また、既に開設しているネット販売用のHPの売り上げは月1件ほどで、かなり厳しい状況だという。谷岩さんが窮状を吐露し、「古くさいパッケージを新しくして若者を中心にネット販売を伸ばしたい」と切り出したところで円卓が一気に熱を帯び始めた。

「相談者は笑顔で帰すことが大切」と話す長友センター長

「相談者は笑顔で帰すことが大切」と話す長友センター長

 「若者とはどのぐらいの年代なのか」「どの品目を売り込みたいのか」「中身が一流ならパッケージで遊んでもいいのでは」「伝統のイメージを崩せないのか」「必ず茶柱が立つ商品を出せないか」

 長友センター長がテンポ良く質問をぶつけて、谷岩さんが描くイメージや同店の強みを釣り出していく。谷岩さんも打って変わって饒舌(じょうぜつ)になり、真面目な人柄が一皮むけた印象だ。真剣なやりとりが約1時間続き、専門的な部分は杉本さんがアドバイスする。この日は品目やパッケージの文字やデザインを決めて相談は終了した。次回はプロのデザイナーが出席してデザイン案をさらに煮詰めるという。

 相談を終えた谷岩さんは「こうした相談の場ができたことはありがたい。地元の人がもっと利用して地域の活性化につながるといい」と話すと、ホッとした表情で事務所を後にした。長友センター長は「モヤモヤした気持ちや頭の中を整理してすっきりさせるためにはとことん話しをする。その中で答えが出てくる。相談者から引き出すことが仕事」と話した。

 相談内容は、自分で考案したキャラクターの商品化やカフェの開業など多岐にわたる。現在は長友センター長が1人ですべての相談をこなす毎日だが、将来的にはアドバイザーをさらに増やして専門性のある相談にも乗りたい考えだ。現在の相談件数の多さが開設特需で終わらせない工夫や起業家の追跡支援など今後取り組むべき課題も多い。地域経済発展に向けたひむかビズの挑戦はまだ始まったばかりだ。
(巣山貴行)

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