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2019年6月17日(月)
マッチング

農業にマイクロバブルを活用 オーラテック(福岡県久留米市)

2017/02/01
植物の成長を促進 「マイクロバブル」「ナノバブル」と呼ばれる微細な気泡は、環境や水産、食品、美容など各分野で応用が期待され、研究が進んでいる。福岡県久留米市のオーラテック(江口俊彦社長)は約20年前からマイクロバブルに着目し、産業用や家庭用に商品を開発。今は農業への応用に取り組んでいる。

植物の成長を促進


装置を使ってマイクロバブル生成を実演する江口俊彦社長

装置を使ってマイクロバブル生成を実演する江口俊彦社長

 「マイクロバブル」「ナノバブル」と呼ばれる微細な気泡は、環境や水産、食品、美容など各分野で応用が期待され、研究が進んでいる。福岡県久留米市のオーラテック(江口俊彦社長)は約20年前からマイクロバブルに着目し、産業用や家庭用に商品を開発。今は農業への応用に取り組んでいる。マイクロバブル水を植物に与えると成長が促進された事例も多く報告されており、同社は小規模農家が手ごろな価格で設置できる装置を開発し、普及を目指している。

酸素多く含む


 同県筑後市の農家村上泰平さん(38)は、福岡特産のイチゴ「博多あまおう」をハウス栽培している。脱サラして就農し、今季が初めての出荷だ。村上さんは地域の大半の農家と同様、井戸水を農業用水として使用。江口社長は知り合いである村上さんの就農祝いとして昨年12月、マイクロバブル発生装置を井戸水のポンプに設置した。

博多あまおうをハウス栽培している村上泰平さん。マイクロバブル水は手前のホースから供給されている

博多あまおうをハウス栽培している村上泰平さん。マイクロバブル水は手前のホースから供給されている

 マイクロバブルは、直径が数十マイクロメートル(1マイクロメートル=1000分の1ミリメートル)の気泡。井戸水は酸素量が少ないとされ、設置後の水の酸素量は10倍以上に増えた。ハウス隣の畑では来季用の苗を準備中。新芽が成長する春には水を大量に与える。村上さんは「苗の成長が違ってくると思う」と楽しみにしている。

 公共工事の建築設計をしていた江口社長。水郷の同県柳川市で育ち、子供の頃のような清流を古里に取り戻したいと思っていた。「微細な空気の泡を発生させれば水がきれいになる」との話を聞き、1997年ごろからマイクロバブル発生装置の開発に着手。約2年かけて完成させた。最初のモデルは水と同時に酸素を外気から装置内に取り込み、水の流路の構造を変化させて水中の酸素を微細に砕いて放出するものだった。

 効果を確認するために、地元の池に設置したところ「約3カ月で泳いでいるコイやカメ、池の底が見えるようになった」。マイクロバブルは体積や浮力が小さく、水中に長く滞留する特性がある。水中の酸素量が増えると微生物は活動しやすくなり、有機物の分解が進んで水が浄化されるという。

シャワーヘッドや化粧品も


マイクロバブル水(右)は水道水(左)と比べて白濁している

マイクロバブル水(右)は水道水(左)と比べて白濁している

 装置を開発してしばらくは廃水処理や養殖施設などの工業用に製造していたが、マイクロバブルを使った犬用風呂の受注を機に、家庭用シャワーヘッドを2008年に商品化。さらに技術を発展させ、油などの液体を150~200ナノメートル(1ナノメートル=100万分の1ミリメートル)の微粒子にして、本来は混ざらない水などと安定混合できる技術を開発。10年からは界面活性剤や乳化剤などを使わない自然派化粧品を小売店や旅館などを通じて販売している。

 技術開発力を認められ、持ち込まれる案件も多い。大手飲料メーカーと共同で手掛けた炭酸飲料の製造方法など、取得した特許は10件以上。マイクロ・ナノバブル発生装置も構造や用途に合わせて5タイプそろえた。これらの技術を生み出してきた江口社長が最近、関心を寄せるのが農業分野だ。

小さな農家でも設置しやすく


写真左=村上さん方にある井戸水のポンプ。マイクロバブル発生装置は左管の黒い部分/写真右=農業用に開発した新たなマイクロバブル発生装置(オーラテック提供)

写真左=村上さん方にある井戸水のポンプ。マイクロバブル発生装置は左管の黒い部分/写真右=農業用に開発した新たなマイクロバブル発生装置(オーラテック提供)

 社内で行ったカイワレ大根の生育比較実験では、井戸水や水道水に比べてマイクロバブル水を与えた株は毛根が密生して茎が太く、成長が早いという結果を得られた。農作物への効果は、国や大学などでも研究されており、既に成長促進やバクテリア繁殖抑制などの報告例も出され、農業向け装置を販売しているメーカーもある。

 オーラテックも大規模植物工場などを持つ農業法人からの依頼で開発した装置はあるが、大きくて高額だったため普及しなかった。そこで圧力タンクなどの機器をなくし、農家が使ってる井戸水のポンプや配管の構造を利用することで装置をスリム化。設置費用を20万円程度に抑えることができた。

 江口社長は国や学術機関、メーカーでつくる「農林水産・食品産業マイクロ・ナノバブル技術研究組合」の理事。さらなる研究や技術展開の可能性を探っている江口社長は「宮崎の農家で導入を希望する人がいれば、最初の数人は約3カ月間試験的に使ってもらい、希望者だけに20万円で販売することも考えている」と話している。

 オーラテックへの問い合わせは電話0942(32)2504。
(高森千絵)

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