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2019年12月16日(月)
マッチング

山里のスロービジネス(美郷町)

2017/01/25
林業の盛んな美郷町西郷田代で、雑木を薪(まき)に加工して販売する小さなビジネスが動き始めている。火付け役は薪ストーブを製造販売する川口機工の川口裕之代表(57)。都市部にある薪ストーブの販売先に地元の薪を一緒に売り込むことにより、相乗効果を生み出している。

ストーブと薪をセット販売


川口裕之代表が製造販売する薪ストーブ。改良を重ねるたびに完成度が上がっている

川口裕之代表が製造販売する薪ストーブ。改良を重ねるたびに完成度が上がっている

 林業の盛んな美郷町西郷田代で、雑木を薪(まき)に加工して販売する小さなビジネスが動き始めている。火付け役は薪ストーブを製造販売する川口機工の川口裕之代表(57)。都市部にある薪ストーブの販売先に地元の薪を一緒に売り込むことにより、相乗効果を生み出している。

火を見るのが好き


 同社は2011年ごろから薪ストーブの製造販売を開始。機械溶接や林業機械のメンテナンスを主力とする傍ら、川口代表が趣味で薪ストーブを製作したのがきっかけだった。「子どものころから薪割りや風呂のたき付けが仕事で、火を見るのが好きだった」(川口代表)という。

 ガスボンベを上下に切断しただけの円筒形の薪ストーブで暖を取るうちにこだわりが強くなり、薪が入りやすい四角形の薪ストーブを溶接して製作。そのうち耐熱ガラスでのぞき窓を取り付けたり、排煙効率の高い煙突を研究したりして改良を重ねた。

 商品として販売を始めてからは、未燃焼ガスを燃やす2次燃焼「クリーンバーン方式」を採り入れ、内部にすすが付きにくい断熱材入り構造の煙突も製作。本場の欧米製をしのぐ商品となった。川口代表は「人が火の周りに集まって癒やされる。きれいな火を楽しんでもらいたくて、勉強を重ねた」と話す。

 種類はシングルタイプ(25万円)とオーブンタイプ(38万円)の2種類。これに煙突などの部品代や施工費などが加わり、シングルタイプで実費は60万円前後となる。発売開始以降、評判が口コミで広がり、新築住宅のほか建て替えに合わせた注文もある。製作に1台3週間ほどかかるため、月1台の受注が精いっぱいという。

「もったいない」から商品に


こつこつと薪割りに精を出す甲斐富貴男さん。「使ってくれる人が喜んでくれるだけでいい」と格安料金で提供している

こつこつと薪割りに精を出す甲斐富貴男さん。「使ってくれる人が喜んでくれるだけでいい」と格安料金で提供している

 「薪も一緒にいかがですか」。川口代表の営業は薪ストーブを売って終わりではない。四方を山に囲まれた美郷町では、スギやパルプの伐採現場で、薪の原料となるカシやクヌギ、ナラといった雑木も豊富に切り出される。こうした雑木から薪を作っている同町西郷田代の甲斐富貴男さん(67)が川口代表の良きパートナーとなっている。

 甲斐さんは以前から立ち枯れした雑木を間引きして、自宅の風呂用の薪にしてきた。趣味の一環だったが、近くの伐採現場で雑木が出るたびに搬出業者や林業従事者から甲斐さんの携帯電話へ連絡が入るようになってきたという。そのたびにトラックで雑木を集め、こつこつと薪にしてきた。その理由は「木々が山で朽ち果てるのがもったいないから」。

 薪を売り始めたのは数年前。自宅で使い切れない分を無人販売所で1束(5キロ)200円で販売していた。自宅近くの国道327号沿いや日向市内の無人販売所に置いたところ、なかなかの人気だったという。

 同じころ、薪ストーブの販売を本格的に始めた川口代表には、顧客から「薪がなくて困っている。入手先を教えてほしい」と相談が入り始めていた。川口代表が甲斐さんに相談すると、薪の提供を快諾。ここに薪ストーブと薪生産の商流が生まれた。

格安料金で提供、配達も


薪割り機の調子を確かめる川口代表(左)と甲斐さん。山あいの作業場には機械の音だけが響き、ゆったりとした時間が流れる

薪割り機の調子を確かめる川口代表(左)と甲斐さん。山あいの作業場には機械の音だけが響き、ゆったりとした時間が流れる

 「とにかく作業が丁寧で見事なんですわ。品質も高いから誰に売っても心配ない」。川口代表は甲斐さんの仕事ぶりを高く評価する。甲斐さんの作業場には材質、長さと小口のそろった薪が整然と並ぶ。

 薪作りの手順は、葉を付けたまま水分を抜く「葉枯らし」を現場で済ませ、チェーンソーで長さ30、40、50センチに切断。作業場へ運搬してエンジン式の油圧薪割り機(26トン)で割り、さらに1〜2年乾燥させて完成する。地道で骨の折れる作業を一人でやる。木の皮に虫が入りにくい秋から冬に伐採するなど、こだわりの強さが「良質の薪」として評価されている。

 まとめ買いを希望する人には、800キロを1万円で販売する。配達料は日向、門川地区1000円、延岡、都農地区2000円、高千穂地区5000円、宮崎地区1万円だという。作業場でも販売する。

 「ほかと比べて割安すぎる。手間も掛かっているし、もう少し値段を上げても」と川口代表。それでも甲斐さんは「使ってくれる人が喜んでくれるだけでいい」と、今のところ価格を上げる気持ちはないらしい。

 さらに甲斐さんは「薪ストーブの愛用者が多くなっているからこうした商売が生まれるんでしょうね。直接作業場まで買いに来てくれるお客さんもいてうれしい。雑木がなかなか集まらず大変なときもあるけど、これからも頑張りたい」。利益を追い求め過ぎないスロービジネスの姿勢が商品の魅力をさらに高めているようだ。

 薪ストーブ、薪の問い合わせは川口機工電話0982(66)3031。

(巣山貴行)

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