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2019年7月20日(土)
マッチング

ニーズ掘り起こしへ 池上鉄工所(延岡市)

2016/08/10
「私たちのような製造業は一般的に営業力が弱い」と話す松田拓也専務。その克服に向け、さまざまなアプローチで顧客の開拓を目指す

足元に意外な需要も

「私たちのような製造業は一般的に営業力が弱い」と話す松田拓也専務。その克服に向け、さまざまなアプローチで顧客の開拓を目指す

「私たちのような製造業は一般的に営業力が弱い」と話す松田拓也専務。その克服に向け、さまざまなアプローチで顧客の開拓を目指す

 工業製品メーカーなどと取引する延岡市の池上鉄工所(松田清社長)に5月、地元の水産関連会社から仕事が舞い込んだ。漁で使う網の洗浄機の製作依頼。これまで取引のなかった企業からの仕事、しかも「水産」という異分野からの受注に「正直驚いた」と松田拓也専務(36)は振り返る。同時に、市内や県内という足元には「もっと需要が眠っているのではないか」という思いを強めている。

マッチングの強化を

 池上鉄工所は1946(昭和21)年の設立で、現在の従業員数は46人。機械加工、圧力容器などの製缶、工事・配管の3事業を主力とする。もちろん、網の洗浄機を造った経験はない。今回の受注は、池上鉄工所がこれまで造ったことのないクラフトビールの醸造タンクを製作したという新聞記事を水産関連会社が読んだことがきっかけになっている。

製缶・配管工場の作業風景。漁で使う網の洗浄機もここで造られる

製缶・配管工場の作業風景。漁で使う網の洗浄機もここで造られる

 松田専務は「私たちのような製造業は一般的に営業力が弱い。今回の受注で情報発信の重要性をあらためて認識した」と語る。かといって、これまで手をこまねいていたわけではない。3月にはコンサルティング会社と組んでソリューション・サイトを立ち上げている。

 「客がインターネットで検索するのは社名ではなく、求めている技術」という発想に立ち、自社の強みを「大物製缶溶接」など三つに絞り込み、それぞれのキーワード入力で検索順位が上位にくるようにしている。これまでに県外5社から問い合わせがあり、全社が工場見学し、うち1社と商談に入っている。

 ただ、あくまでこれは県外を意識した戦略。県内向けの営業では新聞、テレビの活用が有効と考え、結びつきを強めようとしている。また、行政や金融機関へ積極的に自社の情報を発信し、販路開拓の足掛かりにしようとも考えている。

 網の洗浄機のように県内の需要を掘り起こすため「公的機関などが開設しているビジネスマッチングのプラットフォームを強化する必要がある。また、行政職員にはさまざまな相談に乗ってもらっているが、異動のサイクルが短い。どこの企業がどんな技術を持っているのかという情報を蓄積したスペシャリストを育ててもらいたい」と松田専務は提言する。

団地を会社に見立てる

設備などが整然と並ぶ機械工場。製缶・配管工場と合わせ、多様な発注に応えている。鉄工団地内の連携、相互補完によって生み出される「総合力の高さ」を営業の武器にすることもある

設備などが整然と並ぶ機械工場。製缶・配管工場と合わせ、多様な発注に応えている。鉄工団地内の連携、相互補完によって生み出される「総合力の高さ」を営業の武器にすることもある

 個社の取り組みとは別に集団としての営業も始まっている。同社が加盟する延岡鉄工団地協同組合(23社)のうち、8社の若手経営者や後継者らが2013年6月、チーム延岡OX(オーエックス)を設立。松田専務もメンバーに名を連ねる。機械加工、板金、塗装、電気設備、材料の商社…という多彩な顔ぶれで、OXを一つの会社に見立てた売り込みを展開している。

 まだ共同受注という形には至っていないが、受注した案件のうち自社のできない部分はOX内の企業に回す。同様に他社から仕事を振ってもらうこともある。もちろん、古くから付き合いのある下請け企業や協力企業とのバランスを取りながらだ。

 松田専務は「OXの企業は互いに補完できる関係にあり、総合力は高い。必要なのは挑戦する機会」とした上で、「県内各分野の企業さんには、県外に発注している製品や工事があれば、ご相談いただきたい。どんなに意外な仕事でもいい。県内でお金を回すことが、地域経済の活性化にもつながる」と力を込める。          
(小川祐司)

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