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2019年9月23日(月)
マッチング

地域内連携のススメ 宮崎ひでじビール(延岡市)

2016/06/29
地元企業に発注した醸造タンクの出来に満足する永野時彦社長(左)と梶川悟史ビール事業部統括部長

ビジネスチャンスを創出

地元企業に発注した醸造タンクの出来に満足する永野時彦社長(左)と梶川悟史ビール事業部統括部長

地元企業に発注した醸造タンクの出来に満足する永野時彦社長(左)と梶川悟史ビール事業部統括部長

 県産麦芽100パーセントビールの発売を今秋に予定する宮崎ひでじビール(延岡市、永野時彦社長)。このビールの醸造開始に伴い、4月に増設した醸造タンク6基も“県産”にこだわった。これまでは新潟県内のメーカーに依頼していたが、これを製造経験のない地元延岡市の池上鉄工所(松田清社長)に発注。期待以上のタンクを造り上げた池上鉄工所はその技術力が注目され、新たなビジネスチャンスを得ている。

リスク取り、地元へ発注

 県産タンクへの挑戦は、宮崎ひでじビールの永野社長(48)が「企業間のマッチングや連携が活発化すれば、地域経済は浮揚する」という信念を持っていたことが大きい。加えて、同社は県外から“外貨”を稼ぎ、地域経済をけん引する「地域中核的企業」に県から認定されている。その使命感も背中を押した。

容量が1キロリットルと2キロリットルの既存の醸造タンク。今回増設したタンクは6キロリットル

容量が1キロリットルと2キロリットルの既存の醸造タンク。今回増設したタンクは6キロリットル

 池上鉄工所には以前から醸造設備の小規模な改造を依頼してきたが、醸造タンクは特殊であり、特に衛生面が重視される。発注した6キロリットルのタンクは高さ約4メートル、直径1.7メートルと大きく、ステンレス板を溶接し成型する。溶接箇所やタンク内に少しでも凹凸や傷があれば、汚れがたまって細菌が繁殖してしまうため、溶接と研磨において高度な技術が求められる。

 当初、社内には「製造経験がない企業ではリスクが高すぎる」という反対意見もあったが、永野社長は「世界に通用する旭化成の要求に応えてきた地元工業界のレベルが低いはずがない」と説得した。

 そして昨年11月、製造に着手。タンクに精通する宮崎ひでじビールの情報を基に、池上鉄工所は次々と課題をクリア。磨きは同じく延岡市の吉玉研磨技研が担当し、ことし3月末までに全6基を完成させた。

「地域の強み」意識しよう

 永野社長は「溶接も磨きも完璧」と舌を巻きながらも、「池上鉄工所が新たな分野で実績をつくった、で完結ではない。これをきっかけに池上鉄工所が県外から新規受注を獲得し、外貨を地域に循環させて完結だ」と考え、そのための手段として報道機関に情報提供し、多くの取材を受けた。

県産麦芽を製造する設備も県内企業に発注した。自前で麦芽を製造できるビール会社は国内には数えるほどしかないという

県産麦芽を製造する設備も県内企業に発注した。自前で麦芽を製造できるビール会社は国内には数えるほどしかないという

 この報道によって、池上鉄工所は5月、延岡市内の水産関連会社から漁で使う網の洗浄機を受注。6月20日には県外の金属加工メーカーからビール醸造タンクの見積もりを依頼された。いずれも、これまで取引のなかった企業だ。

 池上鉄工所の松田拓也専務(36)は「今回の挑戦で技術力が高まり、ノウハウも蓄積できた」と振り返る。その上で「網の洗浄機も新たな挑戦。ここで成功事例をつくり、県内の他の水産関連会社、さらには県外へと展開したい」と意欲を口にする。

 地域経済の一つの成長モデルを示した永野社長。「延岡の工業のような『地域の強み』を域内で常に意識し、マッチングや連携を増やしていけば強みは増幅する。これを情報発信することで『域外で評価されるものづくり』、エリア戦略へと発展させられる」と今後を見据える。
(小川祐司)

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