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2019年6月27日(木)
みやにち首都圏マガジン

元気発信 ピアニスト 松本伸章さん

2013/03/25

夢や感謝一音に込めて


「いい音を聴き分ける耳があれば、演奏は変わる」。一音一音確かめるように練習に打ち込む松本さん=東京都練馬区の自宅

「いい音を聴き分ける耳があれば、演奏は変わる」。一音一音確かめるように練習に打ち込む松本さん=東京都練馬区の自宅

 天賦の才というものがあるならば、松本伸章さん(30)=宮崎市出身、東京在住=の場合は聴覚だろう。気鋭の若手ピアニスト。幼いころから一度聴いた曲をそのまま再現できた。あふれる情熱と感謝の思いを音に乗せて聴衆に届ける。(東京支社報道部長・見山輝朗)

 松本さんは3人きょうだいの末っ子。兄と姉の後を追って4歳から宮崎市内の音楽教室に通ったが、中学生になるとあっさりやめた。松本さんには、一度聴いた曲を記憶してすぐに弾くことができる天性の“耳コピー”の能力があった。可能性を惜しんだ母に連れられ、中学2年から同市の矢野恭子さんが主宰するピアノ教室で練習を再開した。

 個性や自由な演奏を引き出すのが上手な矢野さんの下で気分良く鍵盤に向かい、松本さんの才能は開花した。宮崎北高1、2年で「宮日音楽コンクール」ピアノ部門最優秀賞を連続受賞。東京芸大を目指して毎月上京し、都城市出身で同大学現教授の迫昭嘉さんの個人レッスンを受けた。

 松本さんの自信は東京で打ち砕かれた。ピアノに人生を懸けるには基礎から徹底的に直す必要に迫られた。妥協のない厳しいレッスンを迫さんから受けながらも芸大受験に失敗。埼玉県内にアパートを借り、アルバイトで生計を支えながら浪人生活を送った。

 1年後、自分の個性に合うと感じた東京音大ピアノ演奏家コースに進学。教授の弘中孝さんに師事し、耳の良さを生かして表現力に磨きをかけた。大学2年の2003年に若手の登竜門とされる「飯塚新人音楽コンクール」で1位を獲得。大学を次席で卒業すると同時に難関の東京芸大別科に合格し、再び迫さんに指導を受けて研さんを積んだ。

 弘中さん、迫さんという日本を代表するピアニストやフィンガートレーニングを指導する水谷稚佳子さんとの出会いもあり、松本さんは飛躍。06年に「東京芸術センター記念ピアノコンクール」1位、07年に「コンセール・マロニエ21」2位などの実績を挙げ、同科を首席で修了した。

「これまで支えてくれた人や、演奏を聴きに来てくれる人に感謝の気持ちを伝えられる演奏をしたい」と語る松本さん(本人提供)

「これまで支えてくれた人や、演奏を聴きに来てくれる人に感謝の気持ちを伝えられる演奏をしたい」と語る松本さん(本人提供)

 08年からドイツ国立フライブルク音楽大大学院に2年間留学。演奏に込める思いが足りないと指摘された。言葉の壁にぶつかりながら多くの人に助けられ、苦しいときも笑顔を忘れない前向きさ、常に感謝する気持ちを表現することで不安が和らぐことを学んだ。音色の美しさと情熱あふれる演奏は欧州各地のコンクールでも評価され、大学院を最優秀の成績で修了した。

 昨年3月には、宮崎で帰国後初のリサイタルを開いた。「一音一会」と銘打ち、ふるさとへの感謝を込めてショパンやバッハの曲を演奏した。現在は都内の自宅などでピアノ教室を主宰する一方、仲間4人でクラシックとジャズを対比させるユニークなコンサート活動を展開したり、ソロの演奏会が次々に決まるなど充実した日々を送る。

 「天性の耳とピアノに触れる機会を与えてくれた両親、兄や姉、指導してくれた先生方には感謝している。夢はたくさんあるが、自分が勉強してきたことを、後に続く人に伝えないといけない。最終的には宮崎の音楽界を盛り上げる手伝いをしていきたい」

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