みやビズ

2018年10月23日(火)
キーパーソン

ハンズマン社長 大薗誠司さん

2011/09/15

徹底した顧客第一主義が支持獲得


豊富なアイテムが分かりやすい案内版などに沿って並べられている都城市・吉尾店の店内。来店者からのメモを基に、要望がある商品を極力並べる努力を続ける

豊富なアイテムが分かりやすい案内版などに沿って並べられている都城市・吉尾店の店内。来店者からのメモを基に、要望がある商品を極力並べる努力を続ける

 例えば、1袋100本入り98円のストローを1本売って下さいと客に言われたらどうするか-。「1本を1円で売る」というのがホームセンター・ハンズマン(都城市)が行っている接客だ。「残り97円を損しても、お客さんは喜んでくれる。それでお客さんの信頼関係が買えると思ったらいい」。この徹底した「顧客第一主義」によって消費者の支持を獲得し続け、九州一円に拡大した店舗は来秋、11号店目が鹿児島市内にオープンする。

 近年、全国からテレビや経済誌の取材が後を絶たないハンズマンの前身は、建材の卸会社。公共投資頼みの不安定経営から事業の安定性を求め、現会長の父親が小売業に進出。都城泉ケ丘高生だった当時、夏休みは都城市内のハンズマン1号店を手伝った。モノづくりは子供時代から得意。「おもちゃを買ってもらえなかった」ことが関係しているのか、自分でゼロから何かを創造することが大好きで学校の得意科目も美術や図工。図面を引いては建築家を夢見た。慶応大理工学部に進み建築家の道からはそれたが、大学時代は基礎製図などを学び、自分がかかわったハンズマンの店舗は、すべて自ら設計してきた。

 大学卒業後、「つぶしがきくように勉強しよう」と都市銀行に入行。約2年半後、ハンズマンの株式上場準備に合わせて実家に戻った。26歳で専務に就くと同時に店長を任せられ、宮崎市新名爪店、清武町加納店で計2年間務めた。部下1人の銀行マン時代とは違い、人生経験の長い年上の従業員も含め約70人を店長としてまとめなければならない苦労。自分の思い通りに動いてくれない従業員を怒鳴りつけ、接し方に悩み従業員が辞めていく夢を何度も見た。「今考えると愛情のない言い方をしていた」と若かりしころを反省する。やがて悩みは「こんな自分について来てくれる」という従業員への感謝へと変化し、従業員を思う気持ちが伝わってコミュニケーションを図れるようになった。

 その後、本部専務として約2年間、会社の財務や組織体制、倫理規定などを整え提出書類の準備に奔走し2000年3月、ジャスダック市場上場にこぎ着けた。一方で従来の年齢給を廃止し「お客さんに喜ばれる従業員の給料が上がっていく仕組み」として、約250~300項目に及ぶ職能考課制度も構築。独自の在庫管理システムも開発し、来店者が店に置いてもらいたい商品の要望を書くメモを作り、売れる数を把握して在庫管理する。

「自分は従業員のため、従業員はお客さんのために頑張って、地域で最も頼られる店にしたい」と語る大薗社長

「自分は従業員のため、従業員はお客さんのために頑張って、地域で最も頼られる店にしたい」と語る大薗社長

 ニーズに真摯(しんし)に応える結果、店内に陳列する商品は創業当初の3万アイテムから現在は21万アイテムに膨らんだ。新店舗の開設前は、半年前から本部横にあるシミュレーションルームを模擬売り場とし、「メモで要望があった商品を限りなく入れていく」。来店者に分かりやすいように店内に飾る商品の案内版、チラシなどすべてはデザイナーたちの手作り。どんな制度やシステムも、根底にあるのは「客の要望に極力応えるため」という顧客目線にほかならない。

 06年7月、父親から社長を引き継いだ際に掲げた目標がある。目指すのは「ハンズマンの平均給与を10年後に業界一にすること」。第一線で客と接する従業員に支えられているとの思いは、社長になって一層強くなった。10年間の損益計算書と貸借対照表、従業員の給与ベースアップ率なども計算した長期事業計画に基づいて、目標達成のために順調に歩みを進める。「ハンズマンで働いている皆が幸せに感じてくれたら、必ず皆はお客さまを幸せにしてくれると信じている」。従業員、そして地域住民に支持される店であり続けるための努力は惜しまない。

ここが聞きたい

 -来秋、鹿児島市にオープンする宇宿店で九州11店舗目。今後、九州以外への出店の可能性は。

 可能性はあるが、まだ福岡などに出店の余地はたくさんある。関東や大阪に出店できないことはないが、人が育っていなければならない。新規店舗出店にあたっては人を現地で採用し、既存店での半年前からの研修を経て、オープン2カ月前から現地に入ってもらい一緒に店を作っていく。人はすぐには育たない。皆の給与を上げるための利益を確保しながら、着実に大きくなっていかなければならない。負債だけ増やして出店することには、大きなリスクがある。

 -どんな企業を目指しているか。

 地域で最も頼られる店にしたい。お客さんに頼られるのはうれしいことなのに、平気で「(その商品は)ありません」「できません」と答える店が多すぎる。知恵を出して助けてあげることに、ハンズマンが存在する意味、大義がある。お客さまが来てくれてこそ成り立つ商売だから。

私のオススメ

 仕事に限らず何においてもいつも目標を持って、その目標達成のために常に考える。そして答えが出たらすぐ実行する。明日とか、1カ月後とかではなくて今すぐ行動に移す。いっぱい経験をして、間違いもする。ただ、すぐ行動に移せば、失敗しても大きな傷にはならない。だから「検討する」という言葉が一番嫌い。今を逃げるための何物でもない。「するか、しないか今決めろ」と常に自分に言い聞かせている。(談)

プロフィル

おおぞの・せいじ 都城市出身。都城泉ケ丘高、慶応大理工学部機械工学科卒。1993年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。95年、父親が営むハンズマンに入社し専務に就任。2006年9月から現職。学生時代に同好会で始めたゴルフを家族や友達と週1回楽しみ、ストレスを解消している。42歳。

アクセスランキング

ピックアップ