みやビズ

2020年2月21日(金)
キーパーソン

エポック・ジャパン社長 高見信光さん

2011/09/05

新たな葬儀モデルで全国に挑む

「コミュニケーションを大切にしたい」との思いから、現場に近い社員と話す髙見社長

「コミュニケーションを大切にしたい」との思いから、現場に近い社員と話す髙見社長

 「親の手法をそのまま引き継いでやっていけるような簡単な世の中じゃない」。父親が本格的に興した葬祭業を継ぎながらも、従来のスタイルから脱却した新たなビジネスモデルで苦境を打開してきた経営者の言葉は、説得力に満ち、力強い。現在は東京に拠点を置き、宮崎で誕生した「家族葬のファミーユ」で全国を舞台に勝負を挑む。

 宮崎市で有数の葬儀社「みやそう」を経営していた父親に、宮崎西高時代、次男の自分が後を継ぐ意志を伝えた。「父の仕事はそれなりに尊敬していたし、兄は医師を志していた。漠然と自分が継ぐだろうと思っていた」。大学卒業後、外資系金融機関に就職し、5年で退職。実家に戻ると決めていた30歳までに効率的に経営を学びたいと考え、MBA取得を目指して米国の大学に留学した。

 慣れない英語と膨大な課題と格闘した2年間。外国人に囲まれ意志の疎通だけでもひと苦労する過酷な環境でもまれたことで、物応じしないずぶとさや、チャンスを取りに行く積極性、人を巻き込むリーダーシップなど、経営者として求められる素質を養った。渡米前とは「全く違う人間」になっていた。

 だが実家に戻ると、いきなり“洗礼”が待っていた。宮崎市中心部に大手葬儀社が進出し、売り上げは3年で半減。地域の人との関係が仕事につながると疑わなかった父親。だが、信じていた顧客をあっけなくはがされ、設備投資の返済に充てるはずの利益は一気に底を突いた。時折激しい言葉を浴びせるほど父親と対立し、それでも自らの意志を貫きリストラを断行。「銀行から『要注意債権』と判断され、きれいごとで乗り切れるほど甘くはなかった。父親にひどいことも言ったが、ああしていなければ、もっと状態は悪化していた」。ビジネスの恐ろしさを思い知らされた経験だった。

 危機的な状況の中で聞こえてきたのは、社長だった父親には届いていなかった客の本音。「葬儀費用が高い」「あそこまで大きな葬儀はいらない」-。そんな声に耳を傾けて開発した商品が家族葬だった。業界の常識を崩して価格を分かりやすく明示し、家族を中心に故人とゆっくり過ごせる葬儀。求められていたのは「お客さまに分かりやすく負担の少ない商品」だった。1999年10月、ホール1号店が宮崎市大塚町に完成し、従来の3分の2程度の費用に抑えた「家族葬のファミーユ」が生まれた。

「葬儀社の存在感をもっと高めたい」と強い意欲をみせる髙見社長

「葬儀社の存在感をもっと高めたい」と強い意欲をみせる髙見社長

 翌年、新スタイルの葬儀を展開するという全国の若手葬儀業者が共同出資して設立した「エポック・ジャパン」にも参画。だが事業は軌道に乗らず、最終的に出資者の株を自ら買い取り社長に就任して家族葬の全国展開を開始。2005年3月、みやそうとエポック・ジャパンを合併させた。

 合併直後に父親は急性白血病を発症し、入院2週間足らずで他界する。葬儀を当事者の立場で経験したことで、家族の大切さを再認識し「葬儀社は葬儀のタイミングだけでなく、その後の家族の形を保つために、もっと違うことをしなければいけない」。孤独死や自殺など社会のひずみを耳にするにつれ、そんな思いは強くなる。葬儀をきっかけに家族のつながりを確認できる手助けとなるサービスも、新たな事業として視野に入れる。

 「髙見塾」と題して客に最も近い現場の社員と定期的に話す機会を持つ。「上の立場の人間からは、自分に都合の悪い情報は集まらないから」。大手葬儀社が進出してきた際に、社長だった父親に悪い話は入らず、足元をすくわれた経験が自分にも重い教訓となっている。

 家族葬ファミーユが誕生して12年。現在、全国で33カ所ある直営ホールを300カ所にまで増やし、500億円を売り上げる目標を掲げる。「目先の利益は社員が考えてくれる。経営者はもっと高いゴールを掲げておかないと」。妥協知らずの経営者は、前だけを見据え突き進んでいる。

ここが聞きたい

 -売り上げ500億円を目指している。今後、市場規模は拡大してく見通しか。

 売り上げ500億円というのは、企業の合併・買収(M&A)などを含まずに、13年後くらいに達成できたらと思っている。というのも、日本の葬儀業界で一番売り上げているところでも市場シェアは1%弱。その程度だと葬儀社の存在感、情報発信力としては弱い。米国は一番大きいところで15%くらい、イギリスも同じくらいで、これほどのシェアを持てば業界としてのメッセージ力が全く違う。現在、日本全国で115万人を超える死亡者数があるが、2035年には170万人になるといわれている。ただ、現在の葬儀の平均単価が200万円だとすると、その3分の2ぐらいの単価になることは容易に考えられるので、市場規模は変わらないと考えていた方がいい。

 -今後の事業拡大については。

 故人が天国から家族を見た時に、こうなってほしいとの思いがあるはず。僕らは葬儀をきっかけに家族に起こっている問題に気付くことができる。今あるサービスをつないでいくことで、家族の絆もつなぐようなサービスをしていきたい。

私のオススメ

 常に頭をきれいな状態にしてよく寝ること。普段から結論を先延ばしせずに、物事を瞬間的に判断する。メールも未読のものがない状態をつくる。全部空っぽでいつでも攻められる状態にしておく。

 30歳以降に読んでいるのは、経営コンサルタント神田昌典さんや経済アナリスト大前研一さんの本。生き方や考え方が自分のDNAと合う人で、海外経験をしている人が不思議と多い。(談)

プロフィル

 たかみ・のぶみつ 高校まで宮崎市で過ごす。上智大経済学部を卒業後、チェースマンハッタン信託銀行(旧ケミカル信託銀行)勤務を経て、1996年に米国・メリーランド州立大学に留学してMBAを取得。98年に実家の綜合葬祭会社「みやそう」に入社し常務取締役就任。2000年7月、エポック・ジャパンを設立し代表取締役社長に就任。東京都在住、44歳。

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