みやビズ

2019年5月25日(土)
キーパーソン

セントラル観光社長 力武嘉寿子さん

2011/07/14

世代問わず楽しめる映画を


デジタルシネマや3D上映など最新機器も次々と導入される館内

デジタルシネマや3D上映など最新機器も次々と導入される館内。力武社長が最近見たお薦めの映画は「英国王のスピーチ」という

 年間約65万人が足を運ぶイオンモール宮崎(宮崎市新別府町)の宮崎セントラルシネマ。県内初のシネコン(シネマコンプレックス、複合映画館)として、来館者数は九州の映画館でもトップ10に入る人気映画館だ。「映画館はガソリンスタンドと同じ。同じ商品を販売してお客さまにまた来てもらうためには、接客と快適な環境をつくることが大事」と、館内の清掃チェックが毎朝の日課となっている。

 映画館の運営に携わったのは22歳の時、夫との結婚がきっかけだった。夫の実家は福岡県大牟田市で映画館を経営していた。ただ、当時は経理の仕事が中心だったという。転機は、宮崎市の中心市街地に映画館を開業する計画が持ち上がった時のこと。橘通りのホテルを買収し、映画館のオープンを間近に控えた矢先、夫が心筋梗塞で急死。「子ども3人を抱えて全く知らない土地に来るのは正直心細かった」と明かす。

 周囲が心配する中、1977(昭和52)年に宮崎市の中心市街地にセントラル会館をオープンした。しかし、ふたを開けると映画館の周囲に列ができるほどの盛況ぶり。順調な滑り出しに胸をなで下ろしたものの、ここからが苦難の連続だった。85(同60)年に社長に就任したが、当時の映画館は映画会社の直営館が主流で、個人館にはなかなか人気作品は回ってこない。「福岡の配給会社まで配給拡大のお願いに何度も往復した」。さらに当時の映画業界は配給会社なども含めて「男社会」。「今でこそ女性も増えているが、当時は会議に出掛けても女性が1人だけだった」と振り返る。

 積み重ねた人脈と努力で来館者数は徐々に伸びたが、ホームビデオなどの台頭で客足は次第に減少。「晴天時には館内で足音一つ聞こえない時もあるほど。映画館を閉めようと思った時期もあった」と明かす。そんな折、目に飛び込んだのが市郊外へのショッピングセンター(SC)・イオンモール宮崎進出の新聞記事だった。車での移動が増え郊外型が進む中、市街地にある単独の映画館では限界がある。「貸しビルにすれば家族は十分食べていける。ただ従業員の雇用はどうするのか。これまで支えてくれた宮崎の映画ファンのために、ここで辞めるのもどうか」。葛藤の末、中心市街地の映画館から、SCのシネコンへの転換を決意した。

「年代や性別で見方やとらえ方が違うのが映画の魅力」と話すセントラル観光の力武社長

「年代や性別で見方やとらえ方が違うのが映画の魅力」と話すセントラル観光の力武社長

 2005年、シネコンを備えたSCが宮崎市に開業した。今では、休日になると上映時間を待つ家族連れやカップルでごった返し、SCの集客の大きな核に成長。事業はさらに拡大し、今年3月には、福岡県大牟田市のSC内に大牟田セントラルシネマを開業した。くしくも大牟田市は力武さんが映画に携わった最初の地。義兄が経営していた市内唯一の映画館は、義兄が体調を崩したのを機に10年ほど前に廃業しており、「一線を退こうか悩んでいた時期に(出店の)打診を受けた。確かに宮崎ほどの売り上げは上がらないかもしれないが、地元が映画館の復活を望んでいる」と県外進出の経緯を明かす。

 店内にもさまざまな工夫を凝らした。従来の映画館の暗いイメージを払拭し、花をテーマにした内装をあしらったほか、外気を取り入れて明るい雰囲気に仕上げた。そこに生かされたのは、「映画館経営に携わる者は、映画を真剣に見てはいけない」という義兄からのアドバイスだ。批評家のように玄人好みの難しい映画を送り出すのではなく、多くの視聴者を楽しませること-。業界に携わり30余年が過ぎた今、「さまざまな世代に映画を楽しんでほしい」。この思いが力武さんの原動力だ。

ここが聞きたい

-DVDやホームシアターなど家庭用のAV機器が普及する中、今後の経営戦略は。

 映画館も単に映画を上映するだけでなく、新たな取り組みが求められている。最新のデジタル技術を生かして、舞台や公演を上映する「シネマ歌舞伎」「シネマ劇」と呼ばれる取り組みが全国的に注目を集めており、宮崎でも試験的に実施した。放送権などの課題も残るが、今後はスポーツ中継などにも取り組んでみたい。

-宮崎セントラルシネマと、3月に開業した大牟田セントラルシネマの状況は。

 大牟田セントラルシネマの来館者数は、九州約30カ所のシネコンの中で20位前後。ただ、年間目標とした約30万~35万人を若干上回るペースで推移している。宮崎セントラルシネマの来館者数は順調に伸びており、来年にはロビーの改装を計画している。現在のロビーは上映時間を待つスペースが小さいので、この部分を広げて利用者の満足度の向上を目指したい。

私のおすすめ

 会合などで外出する時以外は毎晩自分で料理している。朝も自分で料理をして、お弁当を作る。献立や調理手順などを覚えるため、頭も使うしぼけ防止にもなる。男女を問わずぜひ料理にチャレンジしてほしい。また、週に数回、知人らと近所をウオーキングしている。歩く距離は約5キロほどだが、長年の日課になっている。適度な運動ときちんとした食事をとることは、仕事をする上で非常に重要だ。(談)

プロフィル

りきたけ・かずこ 長崎県立女子短期大学を卒業。結婚を機に映画館の運営事業に携わり始め、1977年にセントラル観光常務取締役、85年に同社代表取締役に就いた。91年から県興行協会理事長を務める。長崎市出身の71歳。

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