みやビズ

2020年2月25日(火)
キーパーソン

どんタロ総括製造販売責任者  那須祐子さん

2012/06/14

感謝の気持ちで化粧品づくり

どんタロ化粧品と那須さん。「肌への優しさ」にとことんこだわった自信の品ばかり

どんタロ化粧品と那須さん。「肌への優しさ」にとことんこだわった自信の品ばかり

  “美肌の湯”として知られる南郷温泉(美郷町南郷区)の源泉で作った自然派化粧品「どんタロ」。その製造・管理を行う合同会社の統括製造販売管理者を務める。化学を大好きになった高校時代、大メーカーで化粧品研究に携わることを思い描いた大学時代…。そのころには思いもしなかった故郷・南郷区での化粧品を開発・製造する仕事だ。ここにたどり着くまでには、両親への感謝の思いや葛藤、不思議な縁もあった。いまは感謝の気持ちを胸に、古里やどんタロ化粧品ユーザーのために日々、汗を流している。「どんタロさまさまです」

 同区(旧南郷村)神門に生まれ、地元・神門小、南郷中を卒業し、日向市の日向高校へ進学。同地区のほとんどの子どもがそうであるように、高校時代から親元を離れて生活した。だからこそ親のありがたさを知り、感謝の気持ちが強いのだろう。

 中学時代は理科嫌いで「ピアノの先生とか、普通の女の子と同じような夢を持っていた」。転換点は高校時代。化学の先生の授業が面白く「化学の魅力に取り付かれた感じ」になったという。「家族からも『なぜ化学?』と聞かれた。ありえない屈折」と笑う。この転換が後の「どんタロ」との出合いにつながることは、当時、知る由もない。

 1浪して進んだ中央大理工学部で応用化学を学ぶ。「化学を勉強したい」という思いを支えに、浪人時代も踏ん張れた。進学後は学んだ知識や経験を生かそうと化粧品研究職の夢を抱いていた。だが、実家から「コンビニエンスストアを開業するから1年間、協力して」と電話があったのは卒業とほぼ同時だった。「学んだことが無駄になってしまうのでは」という思いと、親の顔が頭に浮かんだ。心に葛藤はあったものの、卒業直後の2004年3月に帰郷した。

 コンビニの店長としてパンを焼くなどの日々を過ごした。しかし、心にくすぶった思いは残っていたのかもしれない。そんなとき、南郷温泉相談役だった小嶋久雄さんから「南郷温泉にどんタロ化粧品の製造・管理部門をつくるから協力してほしい」と要請があった。保健所から認可を得るために、大学で化学を専攻した人物の配置が必要だったという。化学が好きになっていたから、1年浪人していたから、古里に帰っていたから…。不思議とも言える縁に導かれて05年10月、南郷温泉に入社した。

故郷・南郷区で化粧品の開発や製造に携わることができた巡り合わせに「感謝している」と話す那須さん

故郷・南郷区で化粧品の開発や製造に携わることができた巡り合わせに「感謝している」と話す那須さん

 06年3月、県内の三セクで初めて化粧品製造販売業の許可を受け、南郷温泉の化粧品事業部が独立。08年7月には小嶋さんが代表社員となって「合同会社どんタロ」を設立した。この間も、化学の基礎知識を生かし、化粧品についての勉強を続けながら「テレビのコマーシャルで流れているような化粧品ではなく、肌が弱く、合う化粧品がなくて困っている人たちのための化粧品づくり」を目指した。化粧水「どんタロ」は、改良を重ねて防腐剤不使用の「銀のどんタロ」に生まれ変わる。10年9月には、肌がデリケートな子どものことを思って開発した日焼け止め「UVみるく・紫外線あっちいけ」を発売した。

 「温泉の生きた水を、いかに化粧品にするか」。試行錯誤の毎日で、つらいときもあった。それでも「少数派の人のために」と頑張った。肌が弱く一般的な化粧品が使えず消費の時代に置き去りにされた人たちに「あきらめなくていいんだ」と伝えたくて、とことん肌に優しい化粧品作りにこだわる。考え方を共有できるユーザーたちは、じわじわだが確実に増えた。地域の土産物としても浸透、「受け取った人が喜んでくれた」と伝え聞くと、うれしくなった。

 一途に仕事に取り組んだことで、心にあった葛藤はいつの間にか消えていた。「帰郷して『何もできていない』と泣いた日もあったけど、いまは戻ってきてよかったと思う。どこかで『申し訳なかった』と思っていただろう両親の気持ちも晴れたかな」とすがすがしい。「どんタロ」とは、地元に息づく百済王族亡命伝説に登場する地元の豪族の愛称。地元では神さまのような伝説の人物だ。直接、化粧品とは関係はないが、社名にもなった「どんタロ」に「自分を見つけてくれて、育ててくれてありがとうって言いたい」と感謝している。

ここが聞きたい

 -会社・どんタロの将来のビジョンは。

 防腐剤不使用の化粧水「どんタロ」を開発でき、やっと達成感を得たが、このままではいけない。次の人材育成や、今は福岡にある生産ラインを地元に持ってくるためにはどうすればいいかを考えている。工場がこちらにできれば雇用にもつながる。できれば、肌の弱い人で「どんタロ」を使ってくれている人たちと一緒に仕事がしたい。そうすることで、商品に対する愛着などの思いを共有できる。

 -「UVみるく・紫外線あっちいけ」の発売から2年。反応はどうか。

 日焼け止めや化粧品が落ちにくいということは、落とすために“剥ぎ取る”ような手間が必要となるので、肌にはよくない。「紫外線あっちいけ」は、小まめに塗る手間さえ惜しまなければ紫外線は十分防ぐことができる。肌のことを思って塗ったのに、肌に悪影響を与えては意味がない。ユーザーから「使っていて安心」と言われるのが一番うれしい。

私のオススメ

 水の力はすごい。一人暮らしの学生時代に、いい水を飲んでいさえすれば体調が改善されることが分かった。それから、硬水や軟水、クラスター水、アルカリイオン水など特性を調べたこともある。南郷温泉の水は残念ながら飲めないので、お薦めは山梨県の温泉水「弥生の舞」。水が合わないと吹き出物が出るなど体が反応する。水は生活や健康など、すべての基本だと思う。(談)

プロフィル

 なす・ゆうこ 2005年10月に南郷温泉「山霧」化粧品製造・管理部門の総括製造販売責任者に就き、08年7月から現職。地元の食材やタイから取り寄せた食材で料理をつくるのが趣味。「調味料を調整しながら工夫をするのが楽しい。料理は実験」と笑う。美郷町南郷区出身、31歳。

アクセスランキング

ピックアップ