みやビズ

2018年7月17日(火)
キーパーソン

教育情報サービス社長 荻野次信さん

2012/03/15

教育者の立場で先頭に

自席でパソコンに向かう荻野さん。今後、「シンクボード」の一般企業への販売に力を入れる

自席でパソコンに向かう荻野さん。今後、「シンクボード」の一般企業への販売に力を入れる

 教育関連ソフトの開発や、ホームページ作成などを行う教育情報サービス(宮崎市)を率いる。社員は7人と小所帯だが、同社が扱う情報コンテンツ制作ソフトは、教育現場などで高評価を受ける。販売拡大へ先頭に立ちながら、学校現場などで培われた子どもたちへの愛情を大切にする教育者の姿勢をにじませている。

 工業高校で化学系の教諭をしていた父の影響もあってか宮崎南高時代は理系に進むが、「国立の理系は落ち、文学部を受験した私大に進んだ」と創価大の英文学科に。教員を目指し、4年生のころ青森県五所川原市の学習塾で講師を務めたことが縁で、卒業後は1年間、同塾で小学生から高校生にまであらゆる教科を教えた。しかし、両親の勧めもあり宮崎に戻る。

 勤務することになった宮崎市内の大手予備校では、思いがけず英語担当のほか2クラスのうち力が劣る学級の担任に指名された。予備校は「勉強に力を入れて」との方針だったが、河原に連れて行ったり、ソフトボール大会などを催すなど息抜きにも気を配った。授業には厳しく、いつの間にか成績は上位クラスを追い越すほど。生徒たちも懐き、「15歳で挫折を経験し、誰かに頼らざるを得なかったのかもしれないが、とてもかわいかった」。ほとんどが志望校に入り、保護者にも喜ばれ達成感を味わった。

 数年後、系列の私立高校でも教壇に立つ。特進クラス設置など進学体制を構築する一人として声が掛かった。まだ普通科はなく、看護科の生徒を相手に体制づくりに着手。1987(昭和62)年に普通科特進コースが誕生すると、寮監も命じられる。元旅館の寮に妻と2人の子どもと一緒に住み込み、1回生のうち8人の寮生と寝食を共にした結果、卒業時に大阪、九州大などの名門に送り出すことでき、やはり喜びを感じた。「生徒たちが真剣に取り組み、理解し、満足する様子を目のあたりにできるのがうれしかった」

 しばらくして予備校専属に戻った後、退職する。「自分は基本的にはサラリーマン感覚で、給与をもらい仕事をするタイプだった。それでも予備校の運営も任されたが、まともに財務の話もできず、このまま埋もれるのは嫌だと思った」。2001年3月、42歳の時だった。

 大手出版社とつながりができていたことから、教科書を宮崎や鹿児島、大分などで販売する仕事を手伝い、会社を立ち上げた。英語の指導力が高く評価されていたこともあり、日本英語検定協会から教材づくりを依頼され、参考書の原稿を手掛ける。さらに、大学入試センター試験向けに執筆したリスニング教材「Deep Listening(ディープリスニング)」(日本英語検定協会)3冊が2006年に刊行され、県内の高校も多く採用。入試の教材として活用されている。

「シンクボードは人間性を映し出すコミュニケーションツール」と語る荻野さん

「シンクボードは人間性を映し出すコミュニケーションツール」と語る荻野さん

 現在、会社は学習教材制作や学習塾のホームページ運営などのほか、情報コンテンツ制作ソフト「ThinkBoard(シンクボード)」の販売に力を入れる。シンクボードは画像やPDFファイルをパソコンなどに表示させ、手書き描画や音声を加えながら情報コンテンツを手軽に制作できる。08年に発売し、11年には教育現場用の廉価版も扱い始めた。

 学校現場では、シンクボードを用いて事前に取り込んだ教材を黒板近くに投影し、教師が描画機器(タブレットなど)を使って要点を解説しながら朱書きで強調することもできる。この模様を保存することで復習などでも活用可能だ。「子どもたちのやる気につげられる教材。先生たちがしゃべりながら、書きながらプロセスを残すことができ、指導の改善にもつなげられる」と自信を持つ。他県ではシンクボードを用いた研究授業なども行われており、徐々に浸透しつつある。

 一般企業への販売も図るため、事務機器大手メーカーなどの営業網を活用する準備も進めている。経営者の役割を果たしながら「人間同士の関係が希薄になる中で、人が描く様子が伝わり、人の声を聞くことができるシンクボードは人間性を映し出すコミュニケーションツールでもある。私たちの生活の中でも、スタンダードになるようにしていきたい」という考えに、人間を相手にしてきたからこその温かみが感じられる。

ここが聞きたい

 ―教育現場におけるICT(情報通信技術)の現状をどう見る。

 現場にとっては天から降ってきたようなもので「使いたくない」と思う人は多いだろう。人間が楽をして無能にならないようなICTが必要で、使い方を誤ると知識、技能は下がってしまう。無能にしてしまうようなら、無い方がいい。中には「なるほどな」と感心させられるものがあるのが救い。

 ―子どもたちに教えるために指導者に求められることとは何か。

 若いころはそう思わなかったが、最近は目線を合わせることができなければ相手を理解できない、と思うようになった。仕事上でも「この人は、なぜこれができないのか」と考えることがあるが、目線を合わせて話せば理解できることもある。子どもたちが勉強でつまずいているところがあるなら、それを見つけようという気持ちがなければならない。教える前に、相手をよく理解しようという姿勢が必要だろう。

私のオススメ

 2011年の暮れに「変人ブルの会」を立ち上げた。シンクボードのユーザーたちが中心で、「教育を変える」という熱い思いを持つメンバーたちだ。東京学芸大教授や日本数学検定協会理事、小さな会社の代表らもおり、設立時の9人から、今では40人を超えるまでになった。フェイスブックや東京での集まりなどで熱く語っているが、やはり変人同士なので気持ちがいい。(談)

プロフィル

おぎの・つぐのぶ 延岡市生まれ。宮崎南高、創価大学文学部卒。大手予備校や私立高校で教壇に立ち、2001年12月に有限会社、08年4月には株式会社で「教育情報サービス」を設立。全国模試などで英語の問題作成も担当し、日本英語検定協会の実施委員なども務める。宮崎市清武町在住、53歳。

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