みやビズ

2018年6月19日(火)
キーパーソン

希望NOZOMI(国富町)社長 松下理絵さん

2017/10/02
重度患者や家族の安心のために 訪問看護の世界に飛び込み18年。医療依存度の高い患者らの在宅療養に関わってきた。「患者や家族が困った時にすぐ対応したい」と今年8月、24時間対応型の訪問看護ステーションを国富町に設立。

重度患者や家族の安心のために


スタッフと訪問先の打ち合わせをする松下理絵社長(右)。優秀な人材に長く働いてもらえるよう、雇用環境の充実にも力を入れる

スタッフと訪問先の打ち合わせをする松下理絵社長(右)。優秀な人材に長く働いてもらえるよう、雇用環境の充実にも力を入れる

 訪問看護の世界に飛び込み18年。医療依存度の高い患者らの在宅療養に関わってきた。「患者や家族が困った時にすぐ対応したい」と今年8月、24時間対応型の訪問看護ステーションを国富町に設立。看護師らが長く働ける職場環境を整備し、増え続けるニーズにもしっかり応じていく考えで、「経営者として、看護師として、やることはたくさんある」と口元を引き締める。

 看護師を目指したのは小学校6年生の時。大みそかに祖父がくも膜下出血で倒れ、病院へ運ばれた。処置室に横たわる祖父の姿を見て、子どもながらに何もしてやれない悔しさで泣いた。看護学校を出て、都城市郡医師会病院へ就職。配属先の手術室は非番の日でも呼び出される忙しさだったが、同僚の支えや、担当医の「医師不在の場面で患者の症状を悪化させないために、看護師のスキルアップは必須」との言葉に励まされ、一人前の看護師へと成長していった。

 その後、宮崎市内の公立病院に10年間勤めてから、自宅がある国富町内の訪問看護ステーションの管理者に就任。大きな責任を負う身になるが、生後4カ月の三男の子育てや、病気の父親の看病もできるだろうと転職した。この訪問看護ステーションで4年、さらに同じ町内の社会福祉法人で訪問看護に14年間携わった。

「訪問看護はこれからの地域医療の要。増え続けるニーズをしっかり取り込みたい」と意気込む松下社長

「訪問看護はこれからの地域医療の要。増え続けるニーズをしっかり取り込みたい」と意気込む松下社長

 この法人からの独立を考えたのは、正職員やパートといった立場に関係なく奮闘する同僚の姿を見てきたから。訪問看護サービスを受ける人の多くが、高度な医療ケアが必要で「スタッフの精神的、肉体的な負担が大きい。そんな彼女たちに待遇面で報いたかった」。また、訪問先の家族から「私たちの休息を支援する施設が増えればいいのに」との訴えをよく聞いた。実際、重度心身障害児・者のショートステイに常時対応できるのは県南と県北の2病院のみ。この現状を少しでも改善したかった。

 今年8月に訪問看護ステーション「希星(きらり)」をオープン。宮崎銀行が4月に設立した女性起業家支援ファンドから運転資金の投資を受け、安定経営の第一歩を踏み出した。前身の訪問看護ステーションから看護師6人と理学療法士2人、事務職1人を引き続き雇用。長く働いてもらえるよう、それぞれの要望に添って正社員や非常勤として雇用契約を結んだ。現在は国富町のほか、宮崎市、綾町、西都市の子どもから高齢者まで65人がサービスを利用。年中無休の体制を維持するため、自身を含む4人の看護師はステーションの近くに住み、夜間や緊急時でもすぐに対応できる。

 高齢化の進展や医療費の抑制に伴う入院日数の減少などで、在宅医療のニーズは高まっている。さらに「人生の最後を住み慣れた家で過ごしたい」と望む高齢者やその家族が増加。訪問看護はさらに重要度を増ことが予想される。それだけに「スタッフには大変な思いをさせるかもしれないが、訪問看護はこれからの地域医療の要。次世代を担う人材も育て、増え続けるニーズをきちんと取り込み、きめ細かに対応したい」と話している。
(西村公美)

ここが聞きたい

 -経営者になって難しいと感じる点は。

 全国的な傾向として訪問看護ステーションは増加傾向にあるが、高度な医療ケアが必要な患者に対応できる施設は採算が合わないため横ばい。ただ、スタッフを雇用している立場としては採算が合わないからといって簡単に閉鎖はできない。最初に決めた給与や賞与の水準を維持するためにも、どのようなサービスを提供できるか模索している。

 -人材育成に力を入れている。

 前身の訪問看護ステーション時代から、県立看護大や九州保健福祉大の学生を実習で受け入れている。利用者の年齢層や病状、必要な医療ケアは多様化していて、それらに対応できるよう訪問看護の基本を徹底して指導している。「在宅で暮らす患者や家族の気持ちに寄り添いたい」という思いに共感できる若い人材を育てるのも、地域医療を維持するために大事なことだ。

プロフィル

 まつした・りえ 小林高-国立療養所霧島病院付属看護学校(現国立病院機構鹿児島医療センター付属鹿児島看護学校)。2003年から国富町内の社会福祉法人で訪問看護事業に携わり、今年8月に独立。4児の母で、長男(24)は理学療法士、次男も理学療法士を目指しており「同じ医療の道を志してくれてうれしい」。小林市出身。52歳。

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