みやビズ

2018年6月25日(月)
キーパーソン

カタチウム(宮崎市)社長 東郷剛さん

2017/08/14
20170810-1admin-image-1502354195.jpg夢追う人の背中を押す 「同じ場所に長く身を置く性分ではない」と、県内外のさまざまな企業で働いてきたが、興味を持ったアプリ開発やウェブ制作の奥深さに触れ、一念発起。2016年1月にウェブ制作とシステム開発を手掛ける会社「カタチウム」を立ち上げた。

夢追う人の背中を押す


「みやざき創業サポート室」で打ち合わせする東郷剛さん。「異業種の起業家らとの交流は刺激になる」と充実した日々を送る

「みやざき創業サポート室」で打ち合わせする東郷剛さん。「異業種の起業家らとの交流は刺激になる」と充実した日々を送る

 「同じ場所に長く身を置く性分ではない」と、県内外のさまざまな企業で働いてきたが、興味を持ったアプリ開発やウェブ制作の奥深さに触れ、一念発起。2016年1月にウェブ制作とシステム開発を手掛ける会社「カタチウム」を立ち上げた。現在は宮崎市の無料貸しオフィス「みやざき創業サポート室」に入居し、他の起業家らと切磋琢磨(せっさたくま)している。今年1月にはインターネットで出資を募るクラウドファンディングの会社と業務提携。本県の魅力発信や夢を持って挑戦する人たちをサポートしている。

 宮崎市出身。宮崎南高を卒業後、1年間のアルバイトで学費をためて福岡県の美容専門学校に入学した。美容師の資格を取り、東京での就職が決まっていたが、人の多い都会での暮らしをちゅうちょ。宮崎市内の美容室で働き始めたが体調を崩し、1年足らずで辞めてしまった。

 何もしない日々を送る中、「このままじゃ駄目だ。誰も知らないまちで一からやり直そう」と自らを奮い立たせ、滋賀県のプリンターカートリッジ製造工場に派遣社員として入社。工程管理や材料の受発注を任されるようになって責任感が生まれ、個性豊かな同僚との出会いもあり本来の明るさを取り戻した。

 27歳で帰郷。30歳で入社した宮崎市内のIT企業では、個人的に知識を深めていたスマートフォンアプリの開発事業に進出することを提案。しかし、アプリ開発の知識がある技術者は本県に少なく、システムエンジニアや大学生向けの勉強会を率先して開催。「自主的な取り組みだったが、会社側も自由にさせてくれてありがたかった」と振り返る。

「夢を実現したいと思う人たちをクラウドファンディングの仕組みで応援したい」と意気込む東郷剛さん

「夢を実現したいと思う人たちをクラウドファンディングの仕組みで応援したい」と意気込む東郷剛さん

 その後、アプリ開発の腕を買われ、宮崎市にもオフィスを置く東京のITベンチャーに入社。市場に出回っていたすべてのスマートフォン端末約300機種をそろえ、リリース予定のアプリの動作確認をする仕事を担当した。ただ、本県では仕事の依頼が少なく、東京へ3カ月間の営業に出た。価格交渉権を持ち、技術面の質問にすぐに答えられたため、セールスから契約までがスムーズに運んで、売り上げは右肩上がり。「企業の大小に関係なく役員と話をする機会が多く、ビジネスコミュニケーションの能力を磨くいい機会になった」と振り返る。

 社名のカタチウムには「顧客のニーズを可視化して実現する(形にして生み出す)」という意味、ロゴマークの「Ka+」には「パートナーである顧客企業の経営をプラスにするような提案がしたい」との願いを込めた。主力のウェブ制作は順調だが、顧客の大半が県外企業。「本県は自社ホームページにお金をかける余力のある企業が少ない。ネット上での情報発信には価値があるということを、もっと知ってもらう必要がある」と話す。

 また、「起業したての人たちと情報交換して刺激を受けたい」と16年9月、宮崎市と宮崎商工会議所が運営する無料貸しオフィス「みやざき創業サポート室」に2期生として入居。異業種の起業家ばかりで「彼らと話す中でどのようなサービスが新たに提供できるか考えるくせがついた」という。

 今年から新たな事業を始めた。夢はあっても資金に恵まれない人たちの背中を押そうと、クラウドファンディング国内最大手の「CUMPFIRE」(東京)と提携し、宮崎版の運営サイトを開設。これまでに14件(現在進行中も含む)を紹介している。

 印象深かったのが、宮崎市で約400年の歴史を誇る小松原焼の窯元の知名度をPRする事業だ。結果として募集した目標額に到達しなかったが、副次的な効果が生まれた。県外の人が専用サイトを見つけて窯元を知り、直接足を運んで、通販サイトの立ち上げ準備を進めている。さらに長年の悩みだった後継者候補も見つかった。「良いものをきちんと評価してくれる人は必ずいることが分かったし、資金が集まること以上の価値をクラウドファンディングは生み出せる」と自信を深めた。

 社員4人の会社は、ウェブ制作やクラウドファンディングなどの本業で手いっぱい。それでも「自然豊かな宮崎で、東京と同じような給料をもらいながら仕事ができるという働き方をPRして、『宮崎で働くのもいいな』と思ってもらえるよう、まずは社業を盛り上げたい」と意気込む。目指すのは自分のやりたいことが実現でき、プライベートも充実させられる会社。その目標に向かって今、走り始めたばかりだ。
              
(西村公美)

ここが聞きたい

 -起業を目指す人にアドバイスを。

 日常生活を送る上で、自分の行動がどのように消費行動と結びついているかを考えるくせをつけておくとよい。例えば「ペットボトル飲料はスーパーで買ったほうが安いのに、近所のコンビニで買ってしまう」とする。それは「手軽ですぐに飲めるから」という理由が考えられ、業態によってサービス提供の目的が異なるのを理解できる。そのように考えるくせをつけておくことで「自分だったらどんなサービスを提供できるか」を意識するようになる。しかし、頭で考えるだけでは何も始まらない。いろんな人に相談して、行動あるのみだ。

 -本県でクラウドファンディングを広げる上での課題は。

 「クラウドファンディングサイトに掲載されれば自然に支援が集まる」と思っている人が多いことだ。現実はそんなに甘くない。SNSなど情報を発信できるツールを活用して「こういう思いで作ったこの商品をぜひ世界に届けたい。力を貸してほしい」といったように思いを自ら発信する努力は必要だ。都市部では自ら企業に支援を持ちかける人もいるが、自分の夢をかなえたいというやる気さえあれば体は動くはず。すべて人任せにしないことだ。

プロフィル

 とうごう・つよし 独学でスマートフォンアプリのプログラミングを学び、アンドロイド端末向けに数点のアプリをリリース。1万回以上のダウンロードを記録したアプリは「滋賀県に住んでいるときに目覚めたスノーボードの技を分かりやすく解説した動画アプリ」。クラウドファンディング事業のサポートスタッフとして、起業に興味がある学生のインターンシップの受け入れも検討中。カタチウムの広報を務める妻、1歳の長女と宮崎市内で暮らす。35歳。

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