みやビズ

2018年6月24日(日)
キーパーソン

バカン(東京都)代表取締役 河野剛進さん

2017/07/31
 客が飲食店を選ぶ基準で最も多いのは「入店時に待たないこと」。日本政策金融公庫の調査結果を知り、「これなら、専門の画像認識システムを生かせる」と確信。店内の状況を画像で捉え、空席状況を知らせるサービスをビジネスにつなげた。学生時代から志してきた起業への大きな転機となり、このサービスが社業の中核となっている。

「空いた時間」に商機


「空き時間」にビジネスチャンスを見いだしバカンを設立した河野さん

「空き時間」にビジネスチャンスを見いだしバカンを設立した河野さん

 客が飲食店を選ぶ基準で最も多いのは「入店時に待たないこと」。日本政策金融公庫の調査結果を知り、「これなら、専門の画像認識システムを生かせる」と確信。店内の状況を画像で捉え、空席状況を知らせるサービスをビジネスにつなげた。学生時代から志してきた起業への大きな転機となり、このサービスが社業の中核となっている。

 都農町出身。高鍋高を卒業後、北海道大に進学。このころから「都農の商店街はシャッター街どころかシャッターすらなくなり始めている。だからといって今の世の中、東京ですら安泰ではない」と危機感を持ち始めた。同時に「世界を経済的に盛り上げることが必要で、自分もその一員として活躍したい」と起業に関心を持ち始めたという。

 学生時代は道内で催される講座にも足を運び、その思いをさらに強くした。とりわけ関心を持ったのが、技術を中心にビジネスを作るマネジメント・オブ・テクノロジー(技術経営)。より専門的な知識を得るため、大学卒業後は東京工業大の大学院に進んだ。

 2008年4月、起業する前に会社勤めを経験する必要があると思い、三菱総研に入社。金利、為替、天候などさまざまなデータを取り込んだ人工知能(AI)が商取引をする「アルゴトレード」の分野の研究とコンサルティングを受け持った。

 11年にはソーシャルゲーム運営大手の「GREE(グリー)」に転職し、事業戦略や経営管理、新規事業の立ち上げを担当。その後、知人が立ち上げた情報通信会社で働きながら16年6月に「バカン」を設立し、目標としていた起業を果たした。現在は社長業だけでなく技術、営業とさまざまな役割をこなす。

「会社を起こすには今はチャレンジしやすい環境にある」と考える河野さん。郷土の若者にも起業を勧める

「会社を起こすには今はチャレンジしやすい環境にある」と考える河野さん。郷土の若者にも起業を勧める

 「バカン」は、「空いている」や「空席」を意味する英語「VACANT」の造語。社名通り、社業の中核は、さまざまな場面の空き情報を伝えるサービス。日本政策金融公庫が13年に実施した調査結果から、「行ってみたけど駄目だった」という無駄な時間に注目。旅館やホテル、オフィスの客室、トイレ、大浴場、オープンスペースの空き情報をインターネットで提供している。いずれも画像認識システムやセンサーで現場の様子を解析していく独自の技術を用いた。

 今後は医療機関や飲食店の空き情報、混み具合を知らせる事業にも取り組む。さらに、複数の飲食店の空席情報がリアルタイムで更新されるデジタル掲示板の技術について特許を申請中で、「駅前などに設置することで、集客効果の最大化が図れる」と見込む。

 また、ニコンや高島屋といった大企業が、ベンチャー企業の技術を自社に生かすことを期待してサポートする制度を使い、バカンの経営や事業の進め方をアドバイス。優れたビジネスプランを持つ起業家を育成する東京都のプログラムにも公募で選ばれ、コンサルティング会社や会計監査法人から事業全般の助言を受けてきた。

 こうした起業家への手厚い支援に対して、「海外から新しいものがどんどん入ってくるので、今の会社組織だとついて行けない。活性化するという意味で、私たちベンチャー企業の力が求められている」と分析。その上で「意志決定のプロセスが早く、人件費が安いという点で競争力、機動力があるのが私たちの強み。これからもチャレンジしていきたい」と力強く語った。
(東京支社・戸高大輔)


ここが聞きたい

 -故郷への貢献は考えているか。

 将来的には、地元に拠点を作ることがあるかもしれない。ほかのメンバーもいるので都農町だけを考えるわけにはいかないが、最適な場所を探したい。開発拠点であれば、東京でなくてもいい。雇用を生み、地域に貢献したいと思っている。同郷の起業家とはよく情報交換している。刺激し合い、お互いを高め合う場にもなっている。

-起業を志している人にアドバイスを。

 今は(制度的にも)チャレンジしやすい環境にあるし、ある程度の失敗ならフォローしてもらえる。東京では高校生から事業を始める人も結構多い。大企業に入ったとしてもリストラや倒産の可能性もあって安泰ではない。逆に言えば、思い切り自分でやりたいことを突き詰められる時代。成功するかどうかはともかく、取りあえずいったん始めてみてはどうか。困ったことがあったら聞きに来てほしい。

プロフィル

 かわの・たかのぶ 都農町出身。東京工業大大学院を卒業後、2008年に三菱総研に入社。その後、GREEなどを経て16年に「バカン」を設立した。1983(昭和58)年11月生まれの33歳。

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