みやビズ

2018年6月23日(土)
キーパーソン

ひむかAMファーマ(宮崎市清武町)社長 新城裕司さん

2017/05/15
 医薬品への実用化に向けて宮崎大医学部で臨床研究が進んでいるペプチド(アミノ酸化合物)「アドレノメデュリン(AM)」。潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の症状を改善する効果があるとされるAMを改良し、より使いやすい新薬の開発に向けて今年2月、大学発のベンチャー企業「ひむかAMファーマ」(宮崎市清武町)を立ち上げた。自身は医療の門外漢。「畑違いの世界だけど、苦しむ患者に新薬をいち早く届けたい」と開発費の調達などに奔走している。

苦しむ患者のために


宮崎大医学部の一室で「ひむかAMファーマ」を経営する新城裕司社長。「宮崎大で発見されたAMを改良し、体への負担が比較的少ない医薬品として使えるようにしていきたい」と意気込む

宮崎大医学部の一室で「ひむかAMファーマ」を経営する新城裕司社長。「宮崎大で発見されたAMを改良し、体への負担が比較的少ない医薬品として使えるようにしていきたい」と意気込む

 医薬品への実用化に向けて宮崎大医学部で臨床研究が進んでいるペプチド(アミノ酸化合物)「アドレノメデュリン(AM)」。潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の症状を改善する効果があるとされるAMを改良し、より使いやすい新薬の開発に向けて今年2月、大学発のベンチャー企業「ひむかAMファーマ」(宮崎市清武町)を立ち上げた。自身は医療の門外漢。「畑違いの世界だけど、苦しむ患者に新薬をいち早く届けたい」と開発費の調達などに奔走している。

 宮崎西高理数科から京都大工学部へ進学。同大学大学院では燃料電池の仕組みなどを研究していた。しかし、当時は「超」がつくほどの就職氷河期。「研究者としてのセンスはない。就職できるうちにしておこう」と、2000年にJR九州へ技術系総合職として入社した。運転士として列車に乗務したり、運行管理に携わったりと日々の仕事にやりがいを感じていた。

 05年から福岡市の本社勤務になったのを機に、九州大ビジネススクールに通い始めた。技術を経営の立場からマネジメントする技術経営(MOT)や産学連携など「今まで知らなかった考え方に出合えた」。ただし「得た知識をどこかで生かそうという考えは当時はなかった」という。

国立研究開発法人の補助金を獲得し、「小さな製薬会社の研究を客観的に評価してくれたことが何よりもうれしい」と話す新城裕司社長

国立研究開発法人の補助金を獲得し、「小さな製薬会社の研究を客観的に評価してくれたことが何よりもうれしい」と話す新城裕司社長

 転機は08年。家庭の事情で帰県することになり、転職先を探す中で宮崎大産学・地域連携センター知的財産部門の職員募集を知った。ビジネススクールで産学連携のいろはについて学んでいたため「何か縁があったのかもしれない」と応募。採用された。

 担当業務は、大学の研究で得た技術を企業に売り込むことや、実用化に向けた研究費の獲得サポート、契約に至った際の知的財産上の問題がないかの確認など多岐にわたった。知的財産などの専門知識を得るため、通信教育で弁理士の資格を取得した。

 AMとの出合いも、発見者である医学部の北村和雄教授らから実用化に向けた相談があったのがきっかけ。動物実験を経て、09年からは人体による臨床実験をスタートし、点滴による投与で粘膜が修復しているという結果が得られていた。

 北村教授らの研究は13年、大学の研究成果と民間の事業化ノウハウを組み合わせてベンチャー企業の設立を目指す、科学技術振興機構の「研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)」に採択され、研究費の補助が受けられるようになった。

 採択を目指して支援する中で「取り組みをもっと加速させたい」と思い、大学を退職。同年2月にひむかAMファーマを立ち上げた。自身は研究者ではないため、北村教授らAMの研究者らからの医学的なアドバイスを受けながら新薬開発を進めていく。

 現在は改良型AMの基礎研究が終わったばかりで、動物実験に進む段階。一般的に新薬開発には最低200億円を要するといわれる。そのためまとまった額の資金調達は必須。公的補助金のほか、ベンチャーキャピタルや金融機関から調達するため、国内を飛び回っている。

 今年4月末には吉報が届いた。国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」の創薬支援推進事業に採択された。本年度の採択はひむかAMファーマと大手製薬会社のみ。3年間で最大1億5000万円の助成が受けられる。「研究を前進させるための資金が得られたのもだが、しかるべき機関から客観的に研究を評価されたことがうれしい。次の資金調達に弾みがつく。私もやりがいを感じる」と頬を緩める。

 将来的には新薬の製造や販路開拓ができる製薬会社との提携を目指すが、まずは安全性が担保された原薬作りなど、クリアすべき課題は多い。「新薬の開発はすぐに結果が出ないし、収益も生まない。それでも『この苦しみから逃れたい』と思っている患者がいる限り走り続けたい」と言葉に力を込めた。
              
(西村公美)


ここが聞きたい

 -炎症性腸疾患に関する製薬の市場規模は。

 患者は欧米を中心に分布し、世界で約80億ドル(約9000億円)の大きな市場だと言われる。米国を中心に新薬の開発が活発に行われている。国内には潰瘍性大腸炎とクローン病を合わせて約20万人の患者がいるとされる。人種や生活習慣の違いによって薬の効き方は変わってくるが、現在使われている治療薬よりも体への負担感が少ない薬を作るのが目標。

 -製薬会社と提携する理由は。

 製造や販路拡大だけでなく、国からの製造承認が下りる前の段階での臨床実験や治験に関するノウハウがあるから。新薬に関する情報提供や、投与後の状況について医師へのヒアリングなどは専門的にやっていないと難しい。自社でできないなら、他社と連携して行う方が、よりスムーズに新薬製造へたどり着く方策だと考えている。

プロフィル

しんじょう・ひろし 延岡市出身。「JR九州勤務などを経て大学発ベンチャー企業の社長を務めていると話すと、大体の人に珍しがられる」と笑う。趣味は読書で「どんなに疲れていても、推理小説を読んで頭を使うと気晴らしになる」。1975(昭和50)年7月生まれの41歳。

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