オファサポート(宮崎市)社長 服部幸雄さん
IPO(新規株式公開)目指す
29歳で自動車教習所を立ち上げ、介護事業との2本柱で業容を着実に拡大してきた。2016年は開発したAI型自動車運転評価システム(SDAP)が、高齢者による交通事故増加という社会問題の解決や新市場創出につながるとして県などの成長期待企業に、今年2月には中小企業庁の新連携事業計画にそれぞれ認定された。官民の強力な追い風を背に「IPO(新規株式公開)へ頑張りたい」と意気込む。

自動車教習所や介護事業などを手掛けるオファサポートの服部幸雄社長
中学2年で亡くなった父が自動車学校に勤務。その思い出が背中を押した。宮崎ドライビングスクール(宮崎市)へ入り、働きながら自動車教習所指導員の資格を取得。06年4月、南九州自動車教習所(同)を立ち上げた。教習車は1台5万円の中古セダンが2台。複数の教習所が共同利用するコースを借りて指導した。経営未経験の見切り発車だったが、ホームページや携帯サイトで低料金や生徒が都合の良いときに教習を受けられるオンデマンドな方式をアピール。教習生の数を増やしていった。
08年7月にはオファサポートを設立し、介護事業へ参入した。少子高齢化で人口比率が増える高齢者向けビジネスにチャンスを感じたからだ。介護事業を展開する知人からノウハウを学び、翌月には福岡市に訪問リハビリマッサージの拠点を開いた。福岡に縁もゆかりもなかったが、大阪での経験を生かして専門の営業部を設置。ケアプランを作成するケアマネジャーを積極的に訪問してサービスのメリットを説き、利用者数を伸ばした。

官民の追い風を背に事業を拡大させ「IPO(新規株式公開)へ頑張りたい」と意気込む服部幸雄社長
高齢ドライバーによる事故増加が社会問題として注目され始めていたため、免許更新の際に必要な高齢者講習の受託も増加。そこで15年5月から医師らの助言も得てより客観的にドライバーの運転能力を評価できるSDAPの開発に着手。さまざまなセンサーや計測器を自動車に搭載し、1年後にプロトタイプが完成した。今年から高齢者講習制度が改正されたこともあり、官民が実用化へ後押しすることとなった。
SDAPの完成を急ぎつつ、次の一手も打っている。それが今年3月の宮崎ドライビングスクールの買収だ。自動車学校には全国組織もありSDAPを全国へ発信する足掛かりとなる。教習生のニーズに応じたサービスの提供や今後の事業拡大へ人材確保の面からも有益と見て決断した。11年前に飛び出した職場へ経営者として戻り、感慨深かったが「既存事業とのシナジーをどう起こすか。そこが重要」と口元を引き締める。新たな挑戦は始まったばかりだ。
ここが聞きたい
-SDAPとは。ハンドルやアクセル、ブレーキ操作などの反応時間をセンサーなどで計測。視線の動きなども測り、運転中のさまざまな変化をドライバーが正しく認知、判断できているか点数化するシステム。高齢者は自身の運転能力が健康な年代と比較してどの程度なのか客観的に分かる。年内にも市販化し、全国の自動車学校や医療福祉施設、自治体などに提供したい。人手不足で高齢者が働く機会が増えている。運送業界が高齢ドライバーの採用や講習でSDAPを使うことも想定している。
-直近の売上高は6億円。急成長の要因は。
心掛けているのは、勝機が3割あれば挑戦すること。不安が7割もある事業に普通は誰も手を出さない。でもそこにあえて挑戦したから今の私がある。逆に勝機が6割というビジネスには関心がない。それはとっくに他人が手を付けているはずで、後から参入しても待っているのは厳しい戦いだけだ。好きな言葉の一つに「負けて勝つ」がある。一度負けることで物事を客観的に見られるようになる。「次こそは」と反骨心も生まれる。
プロフィル
はっとり・ゆきお 4人兄弟の四男で、母と兄2人が自営業だったこともあり「会社勤めより独立を選んだのは遺伝」。趣味は磯釣り。1級小型船舶操縦士の免許を持ち、社内には釣り同好会もある。ゴルフは月1回。洋服にもこだわりを持つ。1975(昭和50)年、宮崎市生まれの41歳。本庄高卒。- 運転能力を点数化 宮崎市の企業、近く実用化 - 紙面県内経済(2016年05月23日)
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