みやビズ

2018年5月24日(木)
キーパーソン

豊緑園(新富町)代表 森本健太郎さん

2017/04/17
挑み続ける「お茶育て人」 有機JAS認定を受けた新富町の農地約12ヘクタールで茶を栽培、オリジナルブランドの商品を開発し、近年は海外展開にも挑戦している。突き動かすのは茶業界を取り巻く厳しい環境を打破したいとの思い。「急須でいれた茶には身も心も落ち着かせてくれる力がある。その魅力をもう一度広めるのが目標」。穏やかな口調だが、熱い思いを語る。

挑み続ける「お茶育て人」


有機JAS認定を受けた広大な茶畑。除草やあぜづくりはほぼ手作業。人手は要るが有機栽培にこだわる限り、譲れない

有機JAS認定を受けた広大な茶畑。除草やあぜづくりはほぼ手作業。人手は要るが有機栽培にこだわる限り、譲れない

 有機JAS認定を受けた新富町の農地約12ヘクタールで茶を栽培、オリジナルブランドの商品を開発し、近年は海外展開にも挑戦している。突き動かすのは茶業界を取り巻く厳しい環境を打破したいとの思い。「急須でいれた茶には身も心も落ち着かせてくれる力がある。その魅力をもう一度広めるのが目標」。穏やかな口調だが、熱い思いを語る。

 「ゆたかみどり」「やぶきた」「かなやみどり」など栽培する茶は9種類。「品種ごとに味や香りに特長があり、収穫はそれぞれの育ち具合を見定めてから」と広大な茶畑を見渡す。収穫や剪定(せんてい)作業には大型機械を使うが、除草やあぜづくりはほぼ手作業。人手は要るが有機栽培にこだわる限り、譲れない。

 両親が新富町で茶栽培を始め、子どものころから茶畑は遊び場だった。4歳上の兄俊郎さんが家業を継ぐと思い、高校卒業後は東京の製パン会社に就職。和菓子部門で働いた。ところが1年後にひどい腰痛で入院することになり、治療に専念するため帰郷した。

 兄は農園を1997年に法人化。帰郷した99年は生産拡大に取り組んでいた時期だった。治療が終わり、自然と家業に関わっていく中で気になったのが、規模拡大のために借りた畑のこと。放置され、荒れ放題で、農薬や肥料を3年以上も使っていないのに元気のいい芽が出て、害虫も見当たらない。「法人として有機栽培へ取り組むきっかけになった」と振り返る。

「急須でいれた茶には身も心も落ち着かせてくれる力がある。その魅力をもう一度広めるのが目標」と語る森本健太郎さん

「急須でいれた茶には身も心も落ち着かせてくれる力がある。その魅力をもう一度広めるのが目標」と語る森本健太郎さん

 この挑戦を支えたのが、生産者で茶商の井ヶ田製茶(日南市北郷町)。同社が無農薬で栽培した茶を探していたことから取引がスタート。2000年に始まった有機JAS法の認定を受ける挑戦も後押ししてもらった。有機栽培を始めて5年目までは、一番茶の収量が転換前の半分になったこともあった。10年間は収量が安定しなかったが、井ヶ田製茶が買い支えてくれたことで取り組みは軌道に乗った。

 ペットボトルの茶系飲料が台頭し、急須でお茶をいれる家庭は少なくなった。茶葉の取引価格も下落傾向にあるという。そんな茶業界を盛り上げたいと始めたのがブランディングと自社商品の開発。06年に代表を兄から継ぐと、法人名を「豊緑園」とし、オーガニック緑茶「もりもっ茶」のブランド名でラインアップを充実させた。若い消費者が親しみやすいよう、包装に茶葉のかぶり物をかぶったキャラクターをデザイン。味にこだわり、消費者の心に残るPRの仕方で、関東・関西方面に取引先を広げている。

 また、14年12月からは本県と台湾のフードビジネス関係者らが共に学んだ県主催の「台湾塾」に参加。築いた人脈を生かし、台湾との継続的な取引も目指している。

 有機栽培を始めたころは、他の生産者から「(有機栽培のお茶は)安全だろうけどおいしくない」との声が聞こえてきた。しかし堆肥にこだわった土づくりを徹底し、信念に基づいて有機栽培を継続。その結果、自信を持って消費者へ薦められる茶をつくり上げ、自ら販路を開拓する面白さも知った。「いろんな人とのつながりで可能性はどんどん広がっている。新しい展開が次の展開を生む。忙しさが苦にならないほど楽しい」と生き生きとした表情で話す。
(鬼束功一)

ここが聞きたい

 -オーガニック緑茶「もりもっ茶」のラインアップは。

 2012年のブランド立ち上げ後から少しずつ増やし、現在12商品。ほうじ茶や白折れといった定番だけでなく、新提案として満月の日に摘んだ一番茶「満月茶」などがある。味に加え、物語や感覚的な付加価値を高めることで、消費者、特に女性の関心が高い。収穫する茶葉のうち9割は粗茶として出荷し、自社で商品化しているのは1割ほど。この割合を少しずつ増やしていきたい。

 -有機JAS認定について。

 茶の場合、一番茶の収穫開始前の3月くらいに監査を受ける。品種ごとの栽培管理や清掃、資材伝票などをすべて記録しておかなければならない。隣接する農地がある場合、互いの意思疎通を証明する協力書の作成が必要。有機栽培で認められてない資材を置いていないか確かめる現地調査もある。農業は丼勘定の時代があった。これからは規格に従い、企業的にやっていくのが新しい形だ。

プロフィル

 もりもと・けんたろう 新富町出身。高鍋農業高校食品科学科卒。県内外のスーパーなどで試飲販売をする時には、茶葉をイメージした「もりもっ茶」のかぶり物をかぶり、お茶の良さをPRする。新富町茶振興会青年部長や県茶青年会副会長などを務め、若手生産者との意見交換にも積極的。1976(昭和51)年11月生まれの40歳。

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