みやビズ

2019年6月17日(月)
キーパーソン

ひょっとこ堂(高鍋町)社長 田中陽一さん

2017/03/27
第2の故郷へ恩返し Iターン先の高鍋町で、水菓子店「ひょっとこ堂」(高鍋町)を創業して5年目。マンゴーやトマト、日向夏ミカンなど県産素材をぜいたくに使ったゼリーが贈答品や土産物として好評だ。新たにマラソンランナーなどが運動中に糖分やミネラルなどを簡単に補えるゼリータイプの栄養補給食「宮崎エナジーゼリー」を開発した。

第2の故郷へ恩返し


「宮崎の魅力的な食材を生かし、スポーツランド宮崎を盛り上げたい」と語る田中陽一社長

「宮崎の魅力的な食材を生かし、スポーツランド宮崎を盛り上げたい」と語る田中陽一社長

 Iターン先の高鍋町で、水菓子店「ひょっとこ堂」(高鍋町)を創業して5年目。マンゴーやトマト、日向夏ミカンなど県産素材をぜいたくに使ったゼリーが贈答品や土産物として好評だ。新たにマラソンランナーなどが運動中に糖分やミネラルなどを簡単に補えるゼリータイプの栄養補給食「宮崎エナジーゼリー」を開発した。「本県の魅力的な食材を生かし、スポーツランド宮崎を盛り上げたい」。胸に秘める思いは第二の故郷への恩返しだ。

 福岡市出身。高校卒業後、博多港の荷降ろし場や新聞社の印刷工場などでアルバイトしながら、週末にはライブハウスを借りて音楽イベントなどを開催。自ら司会も担当するなどフットワークが軽く、ラジオ業界での活躍を夢見ていた。2歳年下で高鍋町出身の奈緒美さんと25歳で結婚したのを機に本県へ。心機一転、県内の洋菓子店で働き始めた。

 仕事は全国の有名百貨店での催事営業。宮崎についての知識がほとんどないのに、宮崎の商品を売った。これが本県の魅力を客観的に学ぶよい機会になった。「新婚旅行で行ったことがある」「海がとてもきれい」。ファンの多さに加え、「食」への評価がとても高いことに驚いた。確かに東京・新宿の百貨店の食品売り場で買ったトマトより、高鍋で食べたものの方が圧倒的においしかった。「宮崎はフルーツや野菜が豊富。うまく加工すれば全国で売れる」と確信した。

 商材はゼリーに絞った。素材の魅力を生かしやすく、長期保存が可能。見た目が悪くても加工するので、生産農家の助けにもなる。遠隔地へ常温発送でき、冷蔵などのコストも不要。催事で各地を回る中、九州はゼリー菓子メーカーが少なく、外注している菓子店も多いことを知り、一定のニーズを取り込めると判断した。

製品をチェックする田中陽一社長。「県産品を使うだけでなく、宮崎の魅力を高めるようなものを作って恩返ししたい」

製品をチェックする田中陽一社長。「県産品を使うだけでなく、宮崎の魅力を高めるようなものを作って恩返ししたい」

 2013年8月にひょっとこ堂を設立。町内の工場跡を購入し、蒸気釜、カップシール機、レトルト殺菌装置、ボイル殺菌機、金属検知機などを整備して、4カ月後に操業を開始した。製造方法を一から学び、次第に県外の催事でも売れるようになった。ただ、「ゼリー=夏」のイメージが強く、8月中旬を過ぎると売り上げが急減。見通しの甘さに頭を抱えた。

 売り上げ確保へ高齢者向け介護食や、ダイエットを意識した低カロリーゼリーの開発を考えた。そんな時にスポーツイベントを企画する「ユニバーサルフィールド」(宮崎市)の髙木智史社長と出会い、マラソンなどでは走りながら食べられる少量・高カロリーの栄養補給食が必需品と知った。「外国産は添加物が多い。県産品で無添加の栄養ゼリーを作れないか」。そう持ちかけられ、展望が開けた。

 ひょっとこ堂の社名は日向市の伝統芸能に由来。「宮崎のおいしい農作物を使い、ひょっとこ踊りの踊り手のように顔は見えないけれど、日々の製造に心を込め、笑顔と幸せを生む商品をつくりたい」を社是としている。

 「いろんな人と出会い、学ぶことが多かった。日々の生活も充実し、宮崎に来て本当によかった。だからこそ単に県産品を使うだけでなく、本県の魅力を高めるようなものを作って恩返ししたい。まだ出会っていない素晴らしい素材もあるはず。生産者の思いを消費者へしっかり届けられるような商品開発の努力を続けたい」と力強く話した。
(久保野剛)

ここが聞きたい

 -移住者目線で本県のビジネス環境は。

 いい意味で企業数が少ない点。ライバルが限られ、一般の消費者や行政、企業に認知してもらえる機会が多いと思う。農業県ということで、行政が食品産業の振興に力を入れている恩恵も大きい。衛生管理講習や販路開拓への商談会などがたびたび開催され、事業改善やビジネスマッチングの機会に恵まれている。

 -これから創業する人へ助言を。

 夢やビジョンは大切だが、それを実現するためのしっかりした計画や方針が不可欠。思い込みが強いと視野が狭くなりがち。会社を立ち上げて初めて分かることも多い。経験の浅さをカバーするために人の話を聞いたり、相談したりすることも大切。どうすれば事業が成功するのかは分からない。失敗して、それを改善して、次に生かすしかない。創業に当たっては失敗をよしとするメンタリティーも必要だ。

プロフィル

 たなか・よういち 1983(昭和58)年、福岡市生まれの33歳。福岡中央高卒。中学時代に始めたバスケットボールが趣味で、今も地元の社会人クラブで週1回、汗を流す。高鍋町内の妻の実家に子ども2人、両親、祖母の4世代7人でにぎやかに暮らす。

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