みやビズ

2018年5月20日(日)
キーパーソン

アミューズ(日向市)社長 赤木八寿夫さん

2017/03/06

既成概念打破し100億円グループへ


 社長就任から10年足らずでグループ売上高を約7倍の100億円に成長させた。養鶏先進国の欧米から最新技術や大型機械を独自に取り入れ、国内養鶏業の既成概念を打ち破ってきた手法は業界の注目を集め続けている。

国内最高基準の衛生管理を満たすフュージョンのGPセンター。雑菌の多い卵の殺菌、洗浄を徹底している

国内最高基準の衛生管理を満たすフュージョンのGPセンター。雑菌の多い卵の殺菌、洗浄を徹底している

 赤木種鶏場(現アミューズ、日向市)の赤木紀元会長の長男。物心ついたときには3代目となることが刷り込まれていたという。大学進学前から紀元会長から進路について厳しく言われるようになった。「養鶏を製造業にしろ」「英語を身に付けろ」。この二つの言葉がその後に大きく影響することになる。

 養鶏業の後継者なら一般的に農畜産系の大学に進学するというが、東京の大学で経営学を学んだ。「現場のことは入社してから学べばいい。これから会社を拡大していく上で、経営の知識が求められるという(紀元)会長の思いがあったからだった」

 卒業後は1年間、米国の語学学校へ通った。ここまでは紀元会長の言い付けを守った形だ。しかし、それだけでは物足りなくなった。米国ウィスコンシン州立大に進学し、経営学修士(MBA)を取得。「せっかく米国留学して、手ぶらで帰国したらもったいないと思ったから」。現地の養鶏場で米国式の養鶏も学んだ。

 帰国後の2000年に赤木種鶏場に入社。05年に専務、翌年には社長に就いた。留学で身に付けた語学とMBAがここから生きた。2008年、大手取引先だった都城市の大手採卵養鶏会社が経営難に陥った。同社にヒヨコの4分の1を出荷しており、倒産した場合、売り上げの25パーセントを失うことになり自社の経営すら危ぶまれた。そこで、選んだ道が同社の取得だった。

 問題は経営規模が大きすぎることだった。「売上高15億円の企業が50億円の企業を取得することの大変さを痛感した」。莫大(ばくだい)な量となる鶏ふん処理や初めてパック事業を抱えること、卵が多すぎて適正価格で売れないことだった。

「コスト管理を徹底することが高品質の卵生産につながる」と話す赤木八寿夫社長

「コスト管理を徹底することが高品質の卵生産につながる」と話す赤木八寿夫社長

 必要なのは再生プランと現金だった。鶏ふん処理や卵の生産については自社のノウハウを生かした。そしてコストを分析した結果、設備投資で自動化を進めることで採算性が上がると判断。設備投資費も含めて金融機関から30億円を借り入れるプランを作った。

 設備投資では鮮度維持とサルモネラ菌対策など衛生管理を徹底するために欧米の管理方式を導入。そしてトレーサビリティー(生産流通履歴)を構築することでどの農場でどのように生産された卵かを記録することができるようにした。事業を承継するために新会社フュージョン(都城市)を設立。一気呵成(かせい)に世界先端の技術を導入したことで、難局を乗り切ることに成功した。

 また、語学力が事業を拡大する際の強い武器となった。国内最先端の養鶏場の経営者たちの通訳として欧米の養鶏機械メーカーや養鶏場を何度も訪問した。「経営者の考え方、先進国の現状や国内市場の動向を学ぶことができた」。欧米では快適な環境で家畜の苦痛を減らす「アニマルウェルフェア」(動物福祉)が普及している。

 「国内でもやがてアニマルウェルフェアが議論の対象になるだろう。国内の採卵養鶏業を国際水準に引き上げるには、衛生管理や生産流通履歴についてももっと議論を深めなければいけない」。九州トップクラスの企業に成長させたいまも採卵養鶏業の未来を見据え、次なる一手を描いている。

ここが聞きたい

 -コスト管理や衛生管理の考え方は。

 かつての業界には生産計画という言葉すらなかった。卵の殻の厚さや重さなどをデータ管理することによって適正な給餌量が算出される。ほかにも室温管理や親鶏の品種など複雑な情報が加わるが、こうした積み上げがコスト管理につながる。国内の技術だけでは無理で、現状では管理に必要な機材は欧米に頼っている。衛生管理についても国内ではサルモネラ菌対策に関する決まりごとがない。生レバーの生食が禁止になったが、生卵で同様の被害が出ないようにこれからはルールをつくり衛生管理を徹底するべきだ。

 -生産規模を拡大しているが、人口減少で市場は縮小する。どのように売り上げを伸ばすか。

 昨年3月にフュージョンが岡崎鶏卵グループ(都城市)と事業統合で基本合意した。現在、同社の加工部門を運営している。液卵やゆで卵などの新たな加工品が商品に加わったことで、新しい販路が開拓できる。大手飲食会社などは現在、殻付きで取引している。しかし、殻がなければ飲食店では廃棄物も出ず、殻に付着する雑菌が食品に混入するリスクも避けられる。衛生面や輸送コストを考えると今後は液卵での取引になる可能性も高い。また販路を拡大し、企業規模も大きくなると人材も必要となる。地域との関係を深め、企業価値を高めていくことも同時に進めたい。

プロフィル

 あかぎ・やすお 日向市出身。日向高、上智大卒。09年に日本鶏卵生産者協会理事、10年に日本養鶏協会理事に、いずれも最年少で就任。フュージョン社長も兼務する。「努力した者が報われない社会であってはならない。農業はもっともうかる産業に生まれ変わらなければいけない」。1971(昭和46)年8月生まれの45歳。都城市在住。

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