みやビズ

2019年9月23日(月)
キーパーソン

デナーダ(門川町)社長 佐々木大樹さん

2017/02/27

漁業の「稼ぐ力」向上を後押し


 IT(情報技術)を活用し、東京などの大都市圏へ鮮度抜群の宮崎どれの魚介を直送するサービス「CHOKSEN(ちょくせん)」を展開する。根底にあるのは、宮崎の重要な産業の一つである漁業を盛り上げたいという思い。培ってきた人脈と経験を生かし、地元の漁協や漁師たちとの連携も模索しながら、漁業の「稼ぐ力」向上へ貢献するために日々奔走している。

東京のイタリアンレストランへ送るオオニベを持つ佐々木社長(右)。オオニベにはおいしさを長く保つ「神経締め」という処置を施すことで付加価値を高めている

東京のイタリアンレストランへ送るオオニベを持つ佐々木社長(右)。オオニベにはおいしさを長く保つ「神経締め」という処置を施すことで付加価値を高めている

 CHOKSENサービス(みやビズ「マッチング」=1月4日更新=参照)を着想した背景には、生まれ育った環境も影響しているのだろう。出身地の延岡市鯛名町は漁業が盛んで、祖父も旭化成を定年退職後に近海での漁を営んでいた。「祖父が一人乗りの漁船に伊勢エビをたくさん積み、港へ帰ってくる光景を覚えている」と振り返る。一方で、必死に働いているのに経済的に恵まれない漁業従事者たちの姿も近くで見て、産業としての問題点を中学生の頃には考えるようになっていた。気が付けば「早く東京へ行きたい」という気持ちは強くなっていた。

 延岡高校を卒業し、福岡市の大学へ進学したが「働きたい」という思いが強く、すぐに退学。同市での外資系ホテル勤務を経て、全国規模の人材派遣会社で営業職に就いた。めきめきと頭角を現し、福岡の拠点を任されるまでになったとき、東京のIT企業の社長に見込まれて引き抜かれた。その社長の人を大事にする経営者としての姿勢に共感したことが大きかった。社長秘書としての役割や、子会社として設立した人材派遣会社の代表などの仕事をこなしていった。

 しかし、都内IT企業同士の過度な競争により、グループ企業の売却や閉鎖が避けられないこととなり、それと同時に同僚たちが独立したり、条件が少しでもいいところへ移籍したりするシビアな業界事情も目の当たりにした。自身にも移籍を誘う声が掛かったが、東京に誘われた恩義を感じ、最後まで社長秘書として在籍した。

「漁業の所得向上につながるようCHOKSENサービスを広げていきたい」と話す佐々木社長

「漁業の所得向上につながるようCHOKSENサービスを広げていきたい」と話す佐々木社長

 その後、東京に残り、それまでの経験を生かして建築材料・住宅設備機器業界の大手企業で営業職の講師を務めるなどしていた。そんなある日、五反田の居酒屋で「宮崎県延岡市から魚を産地直送」と書かれたのぼりを見掛けたことが起業へ動き出すきっかけとなる。「地方でも都会でも、食べ物のおいしいという基準は変わらない。古里・宮崎の魚介の新鮮という価値を生かし、都会に売り込むにはどうすればいいか」を真剣に考え始めた。

 東京においてもITだけの仕事は過渡期に入っており、地方の1次産業などと組むことで新たな価値を生み出すことが求められているという。新鮮さを付加価値とする産地直送サービスのビジネスモデルを具体的に示しながら、メーン株主となっている東京のIT企業グループ社長に半年間、地方を主体とした鮮魚直送事業の必要性をプレゼンし、同意を得る事で出資を取り付け、昨年2月に株式会社デナーダを設立した。

 魚の入札は早朝から動き出し、東京のシステムエンジニアや飲食店関係者らとやりとりは深夜に及ぶことも多く、この仕事には大変さも伴う。それでも、高値で魚介が取引される大都市圏と産地を直接つなぐことで、魚価を少しでも高め、漁業従事者の所得向上を目指すことは、やりがいにもなる。ある漁港で高齢の女性から「頑張って。期待しているよ」と言われたことも背中を押す。「市場や仲卸業の役割が重要だが、販路に多様性が出ることで漁師さんの努力が魚価に反映できるようになれば」。漁業関係者、都市圏の消費者の双方が喜ぶ顔を思いながら、今日も早朝から漁港に向かっていく。
(鬼束功一)

ここが聞きたい

 -加工品にも力を入れている。

 天然・養殖・加工品を含めた鮮魚の直送サービスを3月から「CHOKSEN Market」とリニューアルした。事業の柱となるのが加工品販売。宮崎県産のジンケンエビ(甘エビに似たエビ)を冷凍処理した商品は、東京麻布十番祭りでのプロモーションや必死に営業をかけて、飲食店15店舗を展開する大手企業など月1000キロオーバーの流通も始まった。今は冷凍技術も上がり、もとのジンケンエビの良さを損なわず、消費地へ送ることができる。こういった加工技術を生かし、地元・宮崎では知られているが、都会の人が知らない魅力的な魚介を売り込んでいきたい。次は、メヒカリを海外まで売り込みたい。「メヒカリ女子」など流通のきっかけになるような企画を考えている。
 
 -CHOKSENサービスの次の展開は。

 国内・海外の飲食店や鮮魚取り扱い企業のバイヤーの役割を産地で代行する事業「CHOKSEN Buyers(バイヤーズ)」のサービスを3月より開始する予定だ。漁港に揚がった魚の画像を、東京や福岡の顧客がスマートフォンなどで見られるシステムを開発。その顧客の「この魚が欲しい」という注文を受け、デナーダが入札して送るサービスで、漁港にいなくてもリアルタイムで受発注できる特長がある。輸送はコストの観点から空輸、陸送から顧客側が選べるようにしており、既に反響も出ている。

プロフィル

 ささき・だいき 延岡市出身。2016年2月に株式会社デナーダを設立し、同8月に門川町に本社事務所を構えた。産直サービス「CHOKSEN」を契約する東京の飲食店は約30店舗で、17年中に150~200店舗に増やす計画。直接取引をしたり、入札に参加したりしている漁協は土々呂、日向市、門川、庵川各漁協のほか、大分県の鶴見漁協も。増える需要に対応するため、さらに拡充したい考え。リフレッシュ方法は歌を歌うこと。「カラオケ大会があれば積極的に出たい」と笑う。1977(昭和52)年2月生まれの40歳。

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