みやビズ

2018年5月24日(木)
キーパーソン

大将(新富町)取締役 吉田文恵さん

2016/12/12
目指すは「赤福餅」 「うれしさと同時に責任を感じた。これで終わりではない。次にどうつなげていくか」。10月にあった食品関連の事業者が連携して付加価値の高い商品をつくる「みやざきの宝 発掘!創造!プロジェクト」(県信用金庫協会主催)のコンテストで、出品した「十穀米入りもち米鶏しゅうまい」がグランプリに選ばれた。来年5月には各地の逸品が集まる全国大会があり、そこで好成績を残せば世界大会でアピールする機会が得られる。「もらったチャンスを生かすのは自分次第。勝ちにいきます」と意気込んでいる。

目指すは「赤福餅」


「鶏鳴」を調理する吉田文恵さん。「赤福餅のように多くの人に愛される商品に育てたい」

「鶏鳴」を調理する吉田文恵さん。「赤福餅のように多くの人に愛される商品に育てたい」

 「うれしさと同時に責任を感じた。これで終わりではない。次にどうつなげていくか」。10月にあった食品関連の事業者が連携して付加価値の高い商品をつくる「みやざきの宝 発掘!創造!プロジェクト」(県信用金庫協会主催)のコンテストで、出品した「十穀米入りもち米鶏しゅうまい」がグランプリに選ばれた。来年5月には各地の逸品が集まる全国大会があり、そこで好成績を残せば世界大会でアピールする機会が得られる。「もらったチャンスを生かすのは自分次第。勝ちにいきます」と意気込んでいる。

 子どものころから実家の商売を手伝い、自営業の苦労が身に染みていた。サラリーマンと結婚し、家族そろって夕食を取るような一家だんらんに憧れていたが、新富町で焼き鳥店「大将」を営む3歳年上の幸彦さんと20歳で結婚。21歳で長女、22歳で次女を出産した。子育てしながら調理場を切り盛りし、経理を担当、新メニューも考えるなど一生懸命に働いた。

 転機は2012年の「神武天皇ご東遷キャンペーン」。古事記編さん1300年を記念し、本県の観光関係者が宮崎神宮から1週間をかけ、橿原神宮(奈良県)を目指すもので、新富町・座論梅産の梅を奉納するため同行した。道中でPR活動する“観光のプロ”の姿を間近に見て「自分にはもてなしの精神や商品をアピールする力が足りない」と痛感。仕事を通じて宮崎の魅力を発信できるように、ジュニア野菜ソムリエやアスリートフードマイスター3級の資格を取った。

グランプリを受賞し、「うれしさと同時に責任を感じた」と語る吉田文恵さん

グランプリを受賞し、「うれしさと同時に責任を感じた」と語る吉田文恵さん

 そうした思いから「宮崎の宝-プロジェクト」にも参加。商品開発の講義では「どこで」「誰に」「何を売るのか」という商品設計の基本や差別化について学んだ。以前作ったしょうゆ味の地鶏つくねを講師の一人に試食してもらうと、「『健康』という要素と、コリコリとした食感がほしい」とアドバイスされた。そこでプロジェクトに参加していた白砂ケ尾地鶏牧場(宮崎市田野町)の野田清照氏と、キムラ漬物宮崎工業(新富町)の木村昭彦氏にコラボレーションを持ちかけた。

 白砂ケ尾牧場の地鶏は人が近づいても全く逃げない。人間に対して緊張しない、ストレスのたまっていない肉は最高の素材だった。地鶏100パーセントのつくねに、さいの目に切った3年物のぬか漬けたくあんを加えて食感を高めた。さらに九州産の十穀米をまとわせ「健康」をアピール。商品名は「鶏鳴(けいめい)」とし、鶏肉アレルギーの人が誤って食べないよう配慮した。

 量産化への課題は多い。手作りには限界があるし、地鶏の入荷は1羽丸ごと。歩留まりを改善する必要がある。鶏鳴の賞味期限は常温で1日、冷蔵で2日。そのため補助金を活用し、分子レベルで食材を冷凍する業務用冷凍庫の導入を検討している。希望小売価格は1個380円。一見高価だが、消費者に「高くない」と思わせる包装なども考える必要がある。

 鶏鳴は、30年近く焼き鳥店のおかみとして懸命に働いてきた集大成。飲食業とは異なる世界に飛び込む不安もある。だから慌てず、じっくりと商品力を高めるつもりだ。目指すは伊勢名物の「赤福餅」。常温での賞味期限が2~3日と短いのに店頭に置いてあるだけで売れていく。「赤福は300年、私は30年。簡単には追い付けないけれど、同じように多くの人から愛される商品に育てたい」と目を輝かせた。
(久保野剛)

ここが聞きたい

 ―鶏鳴をどんな人に食べてもらいたい。

 大人から子どもまで幅広く。特にシニア層に食べてもらいたい。シニアはバランスよく栄養を取らないといけないのに、肉を食べない人が増えている。鶏肉には体を温める効果があり、たくあんは乳酸発酵させたもので、塩麹も使っている。十穀米は日本古来の食材。蒸し器で簡単に温められ、冷めてもおいしく食べられるように作ってある。「これさえあれば何もいらない」という商品づくりを心掛けた。

 ―フードビジネスの振興に必要なものは。

 情報の一元化。例えば助成金は、今後開発するものに対しての助成はいろいろあるが、既存商品へは少ない。適用範囲など条件面も細かく、申請書類も複雑。10年前の私ならフードビジネスに挑戦したくても、すぐに諦めてしまっただろう。自分がやりたいこととできることを見極めながら、行政や支援団体を調べて回り、自分で解決するしかない。

プロフィル

 よしだ・ふみえ 1967(昭和42)年、宮崎市清武町生まれの49歳。宮崎東高卒。地元の史跡を巡る「新富ふるさと神話勉強会」の発起人も務める。焼き物が好きで、店で使う器は全て自分で選ぶ。「一番好きなのは有田焼。絵柄の巧みさや色合いの美しさなど特に素晴らしい。使いやすくて丈夫。盛り映えもする」

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