みやビズ

2019年10月16日(水)
キーパーソン

丸正水産(延岡市北浦町)社長 堀田洋さん

2016/07/04
養殖いかだが浮かぶ北浦のリアス海岸。産業を守り、雇用をつくることに浜の生き残りを懸ける堀田洋社長

“浜の危機感”原動力

養殖いかだが浮かぶ北浦のリアス海岸。産業を守り、雇用をつくることに浜の生き残りを懸ける堀田洋社長

養殖いかだが浮かぶ北浦のリアス海岸。産業を守り、雇用をつくることに浜の生き残りを懸ける堀田洋社長

 ブランド魚「へべすブリ」の養殖やカキ小屋経営に乗り出し、漁業再生へ挑戦の手を緩めない。地元の水産会社は次々と廃業し、20年前の約半数の15社前後に激減した。地域の人口は減り続けるばかり。「閉塞(へいそく)感に風穴を開けんと。産業を興し、雇用を守りたい」。迫る“浜の危機感”が経営の原動力となっている。

 宮崎市内の大学を卒業後、後継ぎとして23歳で入社。「黙ってても売れた時代だった」。カンパチは1キロ1400~2000円、ブリは600~650円。現在では考えられないような高値。稚魚、飼料価格ともに現在の半分から3分の2ほどで利益率も高い水準を維持できた。
 
 しかし、この20年間で経営環境は大きく変わった。魚離れ、稚魚や飼料価格の高騰、魚価低迷。経費はかさむのに、売り上げは低迷し、消費も鈍るばかり。浜値はカンパチ1キロ950~1000円、ブリ600~650円で、経費を差し引くとカンパチ、ブリともに1キロ50円の利益も立たず、「ブリはシーズンによっては原価割れのときもある」と明かす。

ブリやカンパチは同じ餌を与え、同じように育てても仕上がりの味が変わるという。堀田洋社長は「愛情の差が間違いなく味の違いに出る」と熱く語る

ブリやカンパチは同じ餌を与え、同じように育てても仕上がりの味が変わるという。堀田洋社長は「愛情の差が間違いなく味の違いに出る」と熱く語る

 この10年間で消費動向は激変した。かつてはプライスリーダーがスーパーなどの大型小売店で、消費の末端は家庭の台所だった。これが大手回転すしチェーンへと変わった。魚の消費は外食がメインとなり、家庭で食べられる頻度が落ちたということだ。

 大手回転すしチェーンの躍進により、養殖会社の立ち位置も変わった。大手回転すしチェーンは年数回、メニューと価格の見直しを行う。「ここでブリやカンパチがメニューから減ったり、消えたりすると養殖会社にとって大きな痛手になる」。そうなると「売りたい値段よりも、売れる値段での取引しかできなくなるから、ますます窮地に追い込まれる」。

 一方、廃業した水産、養殖会社の多くは「子どもに継がせたくない」という理由からだった。「基幹産業の漁業の衰退は町の消滅に直結する」。泣き言ばかりでは食べていけない。付加価値の高い魚づくりに取り組んだ。へべすブリの養殖は「特徴のある魚を養殖して市場に認めてほしかったから」。

東九州自動車道の開通により消費地が近くなり、より鮮度の高い魚を運搬できるようになった。堀田洋社長は「より質の高い魚を提供するモチベーションにつながる」と語る

東九州自動車道の開通により消費地が近くなり、より鮮度の高い魚を運搬できるようになった。堀田洋社長は「より質の高い魚を提供するモチベーションにつながる」と語る

 へべすブリは日向市特産の平兵衛酢(ヘベス)の皮の粉末や果汁を混ぜた餌を出荷直前に30回以上与える。2014年から出荷を始め、臭みがなくさっぱりした味わいや美しい血合いの色で人気が高いヒット商品だ。今年は約1万3000匹を出荷する予定で、ブランド確立も見えてきた。しかし、「県外に比べたら取り組みが10年は遅れている」と現実を見る目は厳しい。

 また、13年からはイワガキ、ヒオウギガイ、14年からはマガキの養殖も始めた。そして今年4月にはカキ小屋「牡蠣屋」をリニューアルオープンさせた。「地元に産業と雇用の場をつくるため、出荷するより地元で店を開くことを選択した」。さらに、東九州自動車道が整備され、宮崎市内まで約1時間半となったこともあり客足は順調だ。

 「もうかる仕組みをつくって産業として成り立つ仕組みにしたい。そうなれば子どもが帰ってきて一緒に仕事をすることもできる」。浜の再生への挑戦はまだまだ続く。
(巣山貴行)

ここが聞きたい

 -東九州自動車道の開通効果は。

 宮崎市までの所要時間が大幅に短縮されたことで、同市中央卸売市場までの活魚運搬が効率的に行えるようになった。また市場に活魚水槽が整備されたことで、鮮度の良い魚を飲食店に提供することができる。北浦の魚がうまいことを知ってもらえる。とにかく消費地が近くなったということ。同時に観光効果も大きく、大分、宮崎市方面からの来客が大きく伸びている。

 -水産加工業の将来は。

 大分の蒲江や佐伯はわれわれの10年先を進んでいる。ブランド化や産地間競争力が高い。いまの漁業者には将来の漁業の道筋をつける責任がある。つくることができても販売ができていなかった。カキ小屋の経営はその手始めだと考えてほしい。

プロフィル

 ほりた・ひろし 延岡市北浦町出身。高校から始めたラグビーをいまも続ける。延岡ラグビークラブの40歳以上のキャプテン。好きな言葉は「踏み出せば道はひらける」。妻、長男と3人暮らし。1970(昭和45)年2月生まれの46歳。

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