みやビズ

2019年9月16日(月)
キーパーソン

宮崎大地域資源創成学部講師 土屋有さん

2016/05/02
「今よりも厳しくなる時代を生き抜き、課題を解決に導ける力を持った人材を育てたい」と意気込む土屋さん

豊富なベンチャー経験を伝える

「今よりも厳しくなる時代を生き抜き、課題を解決に導ける力を持った人材を育てたい」と意気込む土屋さん

「今よりも厳しくなる時代を生き抜き、課題を解決に導ける力を持った人材を育てたい」と意気込む土屋さん

 ノートパソコンを抱え、Tシャツにジーンズというラフなファッションでキャンパスを歩く姿はまるで学生。「学生食堂の職員さんに『食べ過ぎて授業で寝らんようにね』と声を掛けられたこともある。僕が眠ったら大変ですよね」と笑う正体は、4月に発足した宮崎大地域資源創成学部の教員だ。数々のベンチャー企業で重ねてきた経験を次世代に伝え、新たなチャレンジの芽を育む役目を任された。

 高校2年の時、ビル・ゲイツの本を読み、大学在学中の19歳でマイクロソフトを創業したことを知った。「自分も会社をつくって世の中を変えたい」と夢を持ち、ベンチャービジネスのノウハウを学べる多摩大経営情報学部へ進学した。

 2年生になると、ベンチャー企業でインターンシップ(就業体験)をスタート。インターネット広告代理店アイレップ(東京)でインターン中の4年生の時、取締役に抜てきされた。しかし、株式上場を前に「学生が取締役を務める企業の上場は前例がない」と言われ、大学を辞めて取締役を続けるかどうか悩んだ。

 所属していたゼミの教授に相談すると「君はベンチャー企業に携わるために大学に入ったんじゃなかったのか」と、逆に質問を突き付けられた。卒業に必要な単位はあと一つだったが、25歳で大学を中退。翌年、アイレップはジャスダックに上場した。

 その後、インターネット上で福祉施設事業者と利用希望者のマッチングなどを手掛ける会社を立ち上げた。2年間で事業を軌道に乗せて、別の企業へ売却。次は「面白法人」と称するベンチャー企業カヤック(神奈川県鎌倉市)でスマートフォン用ゲームの企画・開発などに携わった。常に心掛けていたのが「消費者の『欲しい』という思いにいかに近づけられるか。どうすれば選ばれるブランドになるかを突き詰める」というマーケティングの原点だった。

 「その考え方さえあれば、地方でも大都市と変わらない働き方ができる」。33歳で古里へのUターンを決め、ITベンチャー企業アラタナ(宮崎市)に執行役員として迎えられた。2年目にインターネット通販サイトの商品紹介を書く在宅ウェブライター事業を立ち上げた。スキル次第では月10万円以上稼ぐライターも育った。「子育てで仕事を辞めたり、収入が少なくて複数の仕事を掛け持ったりしている宮崎の女性に新しい働き方を提案できた」と話す。

与えられた研究室は、書籍やOA機器がなくシンプル。「学生が気軽に就職や創業の相談に来られるような空間にしていきたい」

与えられた研究室は、書籍やOA機器がなくシンプル。「学生が気軽に就職や創業の相談に来られるような空間にしていきたい」

 2015年1月、宮崎大の新学部が教員を募集していることを人づてに聞いた。「土屋さんが育てた学生は、きっと宮崎を面白くしてくれる」と知人らに背中を押されて応募。6月には採用が決まった。同僚は官僚や銀行出身者、大学での勤務経験がある人が大半。ベンチャー企業出身は異色だった。

 現在は農学部と工学部の基礎教育で「ベンチャービジネス概論」を担当。「面白く生きるための方策」の一つとしてベンチャービジネスがあることを、実体験を交えながら教えている。最初は居眠りしていた学生が回を重ねるごとに興味を持ち、アンケートに「起業してみたくなった」「自分の好きなように事業を起こすのは面白そう」という声が増えてきた。授業後、質問に並ぶ学生も現れ手応えを感じている。今後はベンチャーキャピタリストや本県の起業家などにも教壇に立ってもらい、現場の生の声に触れさせる予定だ。

 「20年、30年たてば人口減や少子高齢化など、宮崎経済を取り巻く環境はさらに厳しくなる。そんな時代を生き延び、山積する課題を解決に導ける力を持った人材を育てたい。それが未来への投資であり、教育の新たな形」。熱い思いを胸に、未来を担う学生と日々向き合っている。
(西村公美)

ここが聞きたい

-起業での苦労は。

 福祉施設事業者と施設利用希望者のマッチングビジネスでは、マッチングが成立したときに手数料をもらうのに苦労した。インターネット上には無料の情報がたくさんあふれている。マッチングの対価を払うという意識が一般に定着しておらず、最初はサービスの利用が伸びなかった。そこで施設を見学し、利用者目線で良い点と悪い点をリポート。よりリアルな情報を提供することで、利用が増えた。

-起業など新たなチャレンジの支援に力を入れている。

 世の中に存在する仕事の約6割が、時代の変化とともになくなるという推計がある。未来を担う若者たちが時代のニーズに合った仕事を創造していくことが求められる。その選択肢の一つが起業。先輩企業家などの手も借りながら、全力で応援していきたい。

プロフィル

 つちや・ゆう 1980年3月、都城市生まれ。都城高卒。創業や新しいチャレンジを応援する民間団体「宮崎スタートアップバレー」の共同代表も務める。

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