みやビズ

2019年10月17日(木)
キーパーソン

宮崎ガス会長 井上浩一さん

2011/06/13

企業永続のために「社員こそ財産」

本社敷地内に設置するタンクの前に立つ井上会長。会長の発案で本社敷地内で養蜂にも挑戦している

本社敷地内に設置するタンクの前に立つ井上会長。会長の発案で本社敷地内で養蜂にも挑戦している

 「社員が主役の会社」「社員が食いっぱぐれのないように」-。経営理念、新事業を始めたきっかけなど、どんな話を投げかけても、返ってくる言葉には会社における社員の存在を重要視する姿勢が表れる。

 「どんなにお金を掛けて社屋や工場を立派にしたところで、建物にすぎない。『会社』というのは、そこに働く社員のこと。いい社員がたくさんいる会社こそが、いい会社」と持論を展開。社員教育の重要性や、快適な職場環境整備の必要性を説く。

 営業担当として長年、顧客に接する現場を経験し、「ライフラインを市民に供給する公共性の高い事業を担っている」という責任の重さも自覚している。その職責を果たすためにも、「社員こそが会社にとっての財産」。

 福岡大経済学部を卒業した1963(昭和38)年、宮崎ガスに入社。「田舎者だから都会は苦手」と、迷うことなく故郷での就職を選んだ。以降、40歳までの約20年間、ガス器具の販売や、都市ガスの普及を担当する営業マンとして県内を奔走した。

 「商品の品質の良さはもちろん、売った後のフォローも大事。さらに重要なのが、売り手の人柄」。営業を語りだすと自然と声が大きくなる。酒は飲めないが、人と話すことが大好きという自身の性分は「営業向き」という。「いろんなお客さんがいるから難しいけど、だからこそ面白い。契約が成立したときは、何にも変えがたい達成感があった」と当時を思い出し、笑顔を見せる。

 87(同62)年、総務部長に就任。労務担当として、労働組合との交渉を経験する中で、「会社にとっていかに社員が大切か」を再認識したという。「社員にとって給料は少ないよりも多い方が良い。ただ会社としても無い袖は振れない。折り合いを付けながら、できる限り要求に応えて社員を大切にしていく。これが、企業が長続きする秘訣(ひけつ)」と力を込める。常務取締役などを経て、04年に代表取締役社長に就任。会社創立80周年を迎えた昨年、現職に就いた。

 宮崎ガスは現在、宮崎、都城、延岡の3市約8万5000世帯に都市ガスを供給している。住宅着工戸数の減少やオール電化の台頭などで、ガスの普及は決して右肩上がりとは言えない。だが、需要の維持と並行して、ガスで電気と熱を発生させる家庭向けの新システム販売などにも力を入れる。「状況は厳しいがあきらめてはいない。どの業界でも言えることだが、この先どうなるかなんて分からない。例えば異業種に参入するなど、知恵を絞ればいくらでも生き残る方法はある」。

「社員が主役の会社」と経営理念を語る井上会長

「社員が主役の会社」と経営理念を語る井上会長

 その言葉通り、昨年1月、競売に掛けられた宮崎市の旧宮崎厚生年金会館を買収。従業員約80人をそのまま雇用し、ニューウェルシティ宮崎として運営を開始した。同年4月からは同市阿波岐原町の本社敷地内で養蜂をスタート。東京・銀座で養蜂を成功させた人物の著書に感銘を受けた井上会長の発案によるものだ。こちらは、現段階では販売するまでの事業には至っていないが、社員2人を担当に任命し、昨年は約90リットルの蜂蜜を収穫。顧客に配るなどして喜ばれている。

 大きなガスタンクを前に、巣箱が並ぶ光景は何とも不思議。ただ、周辺は木々が密集する「市民の森」や、四季折々の花が咲き乱れる「フローランテ宮崎」があり、環境としては申し分なさそう。

 「社員を大切に思い、失いたくなかったら、生きるためにはこんな仕事もできるんだよ、と行動で示していかないといけない。今後も新事業参入を含め、たくましく楽しくやっていきたい」。力強い口調で言い切った。

ここが聞きたい

 -福島第1原発事故の発生で、原発に依存した電気エネルギーの在り方が見直されようとしている。ガス業界への影響は?

 現在、都市ガスとして提供している天然ガスは、化石燃料の中で最も二酸化炭素(CO2)の排出量が少なく、今後、原発に代わる火力発電の燃料として需要が高まる可能性がある。そうなると仕入れ競争が発生し、価格に跳ね返る状況も起こりうるのではと危惧している。一方で、近年では、ガスで電気を作ったり、冷暖房でもガスと電気、それぞれを用いたものがあるなど年々、ガスと電気の垣根が低くなっている。それぞれの特性を生かしながら、競合せずに仲良くやっていかなければと感じている。

 -ニューウェルシティ宮崎の運営開始から約1年半。手応えは。

 観光客向けというより、式典や会議の会場としての活用や、結婚式、レストランなど県民向けのサービスに重点を置いて運営してきた。おかげさまで、大きなもうけとまではいかないが、黒字運営を続けている。今秋には宮崎駅西口に新ビルが完成し、にぎわいの創出に一役買いそうだが、ニューウェルシティ宮崎が立地する東口も同じように盛り上げていこうと、新たな施設の建設を含め周辺企業と話しているところだ。

わたしのオススメ

 40代で始めたゴルフが趣味。毎週土曜日は、ゴルフ場で過ごすことが多く、ベストスコアは昨年記録した89。ほかに、絵を鑑賞するのも好きで、部屋には自社のガスタンクを描いた県内の画家による作品を飾り、眺めている。そして何といっても今は、ともに暮らす小学4年と6年の孫たちと過ごす時間が一番楽しい。一緒に出かけるも良し、風呂に入るも良し。その純粋さに癒やされながら、無限に広がる可能性に期待を抱かずにはいられない。(談)

プロフィル

 いのうえ・こういち 国富町本庄出身、在住。宮崎大宮高、福岡大学経済学部を卒業し、1963(昭和38)年、宮崎ガスに入社。総務部長、取締役などを経て2004~10年まで社長を務め、同年6月から現職。関連会社のニューウェルシティ宮崎取締役、宮崎ガスリビング監査役、宮崎液化ガス監査役も兼務している。県経営者協会副会長、宮崎商工会議所副会頭、宮崎労働基準協会宮崎支部長などの公職も。71歳。

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