みやビズ

2019年10月14日(月)
キーパーソン

プリコム社長 井久保栄光さん

2015/07/27
「業務の効率化を図り、厳しい業界を生き抜いていく」と話す井久保さん

信頼関係を大切に業容拡大

最新式印刷機で刷った製品の仕上がりを見る井久保さん。「少しでも良くないものはお客さまには渡せない」と話す

最新式印刷機で刷った製品の仕上がりを見る井久保さん。「少しでも良くないものはお客さまには渡せない」と話す

 10代で身に付けた特殊印刷(シールやラベル)技術を生かし、地元・宮崎で創業して34年。高い印刷技術と納期厳守などで築いてきた顧客との信頼関係を礎に業容を拡大してきた。「シールやラベルの価格は1枚あたりにすれば数十銭。でも、お客さまにとっては良い品が届くのが当たり前」と製品づくりに一切妥協しない姿勢を貫く。

 さまざまな機能を持った6台の印刷機が稼働する宮崎市細江の同社工場。県内の食品会社などから注文を受けたシールやラベルが次々と印刷され、型抜きされていく。その一枚を手に取りチェックするとき、普段は豪快でおおらかな表情が真剣そのものに変わる。色の具合、素人では気付かないようなわずかなズレなど決して見逃さない。高性能CCDカメラを使った検品機も導入しているが、「人の目による確認も大事」と力強い。

 清武町に生まれた。父親の仕事の関係で4歳で福岡県飯塚市へ移り、小学校高学年と中学時代は大阪で過ごした。中学校を卒業すると働くことを選択。就職組は“金の卵”と言われていた時代だった。製薬会社が薬の素材となるものを乾燥させる大型機械を製造・設置する会社へ就職したが、「将来の独立が見通せない」との理由で転職を希望。大阪のラベル印刷会社の求人を見つけ、面接に行くとすぐに採用された。生涯の職業との出合いだった。

 「ゼロから全部自分でやって商品ができる」。ラベル印刷の仕事は面白かった。最初は機械の準備や掃除などの雑務がメーンで機械は触らせてもらえなかったため、先輩の仕事を見て学んだ。社長に頼んで、休日や早朝出勤して紙の端切れを使って練習した。1年半もたった頃、工場長から「やってみるか」と声を掛けられた。練習の成果が出て見事に印刷してみせた。すると、当時最新だった輪転機を任されることに。うれしかった。

「業務の効率化を図り、厳しい業界を生き抜いていく」と話す井久保さん

「業務の効率化を図り、厳しい業界を生き抜いていく」と話す井久保さん

 ところが、思わぬことが起こった。通常、機械を止めて操作しなければならないメーターを、機械を動かしたまま触ってしまった。右手人さし指がチェーン部分にあたり、大けがをした。会社に出ても仕事ができない日々、社長に怒られたことよりもつらかった。「ちょっとてんぐになっていたんだろう」と振り返り、いまでも後進指導の教訓としている。

 結婚、離婚、子育て・・・。プライベートの変化もあって、一度印刷業から離れたが、帰郷を機に復帰。26歳のときだった。帰郷してしばらくは、自身の技術を売り込んで採用された宮崎市の会社の社業発展に貢献した。そして1981(昭和56)年6月、清武町でプリコムの前身となる宮崎大栄印刷を設立した。現在の宮崎市細江に移転後、営業職やオペレーター(機械操作の技術職)を増やし、現在社員は16人になった。

 これまでの歩みで一番大切にしてきたことが顧客との信頼関係。技術力の高い人材を育成し、最新機械の導入など投資は惜しまない。そうして実現した高品質で顧客の要望に応え、納期を絶対に守ることで信頼を積み増してきた。「お客さまから信頼を得るには時間がかかるが、失うのは一瞬」といまなお気は抜かない。業界を取り巻く環境は決して楽観視できないが、持ち前の前向きな性格で会社をこれからもリードしていく。

ここが聞きたい

 -特殊印刷業界の現状は。

 家庭用、業務用の小型印刷機の性能が上がってきており、厳しい状況にある。小売店などが自分のところに必要な枚数だけを作れるようになり、枚数の少ない依頼がこなくなった。業界内の価格競争は激しくなっているが、それにのみ込まれたら経営そのものが厳しくなる。これからも信頼関係をもとに、適正価格で勝負していく。

 -次なる経営戦略をどう描く。

 人口減少による市場の縮小は避けられないが、社員の生活を守るためにも業績を落とすわけにはいかない。そこで、業務の効率化を図るために県内の同業者と共用する工場建設を構想に描いている。見学もできる工場で、取引先の方の目に見える形で製品づくりができれば、さらなる信頼向上も見込める。

プロフィル

 いくぼ・えいみつ 清武町出身。1949(昭和24)年10月生まれの65歳。81年(同56)年に宮崎大栄印刷を設立し、99年にプリコムへ社名を変更。九州シール印刷協同組合の常任理事も務め、青年部の勉強会を自社で開くなど後進の育成にも力を入れる。

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