みやビズ

2018年6月25日(月)
キーパーソン

宮崎大工学部准教授 西岡賢祐さん

2013/06/03

生活や産業と新エネルギーの融合目指す

 太陽光発電システムの研究に携わり、約15年。これまでに10社を超える大手企業と共同研究を行い、太陽光発電の性能向上や市場拡大を裏から支えてきた。2012年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まり、本県でも大規模太陽光発電(メガソーラー)事業へ参入する企業が相次ぐなど、業界は活況を呈する。しかし、研究者として見据えるのは、本県の産業や生活と新エネルギーを融合した社会の構築にある。

学内に設置された集光型太陽光発電システムの前で。発電量調査などデータ収集なども進めている

学内に設置された集光型太陽光発電システムの前で。発電量調査などデータ収集なども進めている

 宮崎大(宮崎市)の木花キャンパス内には、ひときわ目立つ装置がある。09年に完成した集光型太陽光発電システムだ。発電するパネルの大きさは縦7メートル、横10メートル。アクリルレンズで光を集めて高効率の太陽電池に集光。装置は太陽を追尾して動き、一般的な太陽電池より高い発電能力を誇る。次世代型として海外では普及する一方、国内ではほとんどなかった。大学への導入もない中、設置の旗振り役を担ったのは、「社会に貢献できる研究に取り組みたい」という思いがあったという。

 京都府舞鶴市出身。地元の小中高校を経て、大阪大基礎工学部へ進む。「化学が好きだったのでガソリンの研究を選んだ。ただ、最初から研究者を目指したわけではなかった」。太陽光発電をテーマにしようと考えたのは大学院へ進学する時。当時は、太陽光発電は今ほど普及していなかったが、今後伸びる分野として注目を集めていた。そこで、太陽電池研究の第一人者がいる奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)へ進学。この選択が将来を左右することになった。

 「好きなことができたし、いろいろな経験を積ませてもらった」と振り返る。師事した教員は、アメリカやドイツで開かれる最先端の国際会議へ連れて行ってくれた。さらに、研究室には世界最高レベルの太陽電池を製造するシャープの研究者も在籍しており、「世界レベルの研究者と机を並べて研究できたことも大きかった」。同級生が次々と大手企業に就職する中、大学に残る道を選ぶ。

「重油に代わるエネルギーとして、農業分野で太陽光発電システムを使えれば」と語る西岡准教授

「重油に代わるエネルギーとして、農業分野で太陽光発電システムを使えれば」と語る西岡准教授

 27歳で博士号を取得後、北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)で研究者としての第一歩を踏み出す。宮崎との縁は、宮崎大で太陽電池を研究する教員との出会いがきっかけだ。「宮崎は学会で一度行ったぐらいだったが、日照条件もよく研究にはうってつけ」と教員採用に応募し、32歳で宮崎大工学部の准教授に就任した。

 大学では、太陽電池のコスト削減を図る研究や、耐久性調査などを手がける。汚れによる発電効率の低下を防ぐため、コストを抑えた防護塗装の開発を県外企業と行うなど、企業のニーズに応じた研究を進めながらも、「企業はすぐに結果を求める傾向にある。ただ、研究機関として物理的考察はきちんと行う必要がある」と研究者の役割は忘れない。

 メガソーラーの建設ラッシュで、太陽光発電システムは急速に普及した。一方、火力、水力発電など既存エネルギーの代替となるには、「本当の意味でエネルギーとして役立てるには蓄電が重要。今後も低コストで長寿命なバッテリー開発や、ITとの連携が求められる」。今後の目標は、本県の基幹産業である農業との連携にある。「太陽光発電と蓄電システムを組み合わせて、重油に代わるエネルギーを生み出せれば。そのためにまずは農業の現場を知りたい」と強調。生活や産業に直結するシステム構築を目指して、前に踏み出そうとしている。


ここが聞きたい

 -太陽電池の世界市場の現状は。

 量産化や太陽電池の発電効率が上がったことなどで、価格は20年前と比較すると5分の1近くまで落ちた。さらに、中国製の安い太陽電池の台頭などもあり、メーカー間の競争は激しくなっており、海外のメーカーの中には倒産に追い込まれたところもある。国内ではメガソーラーの普及で需要が伸びるものの、エネルギーとして使うのであれば、蓄電を含めて管理する技術が求められている。

 -学生を指導する上で心がけることは。

 最も重視しているのはコミュニケーション力。これは社会に出ても、研究者になっても不可欠なことで、相手の話を聞き理解した上でアウトプット(出力)することが重要だ。学生には同世代ばかりと交流するのではなく、違う世代とも積極的に交流するように呼びかけている。

わたしのオススメ

 高校時代の恩師からの勧めもあり、スティーブン・R・コヴィー著の「七つの習慣」(キング・ベアー出版)を大学生の時に読んだ。自分だけでの成功を追い求めるのではなく、周りにもいい影響を与えることが、すべてがうまくいく秘訣(ひけつ)だということを学んだ。現在は悩んでいる学生がいればこの本を勧めるようにしている。(談)

プロフィル

 にしおか・けんすけ 京都府舞鶴市出身。大阪大基礎工学部から、奈良先端科学技術大学院大学へ進学し、博士号を取得。2004年から北陸先端科学技術大学院大学材料科学研究科の助教を経て、07年から現職。宮崎市で妻と子ども3人の5人暮らし。1975(昭和50)年6月生まれの38歳。

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