みやビズ

2018年5月22日(火)
キーパーソン

Shift社長 川野誠一郎さん

2012/05/24

信頼関係を礎に海外進出支援

「年をとってもずっと一緒に仕事ができるような会社を目指したい」。社内でも海外でのビジネスでも、川野さん(左)は信頼関係を大事にしている

「年をとってもずっと一緒に仕事ができるような会社を目指したい」。社内でも海外でのビジネスでも、川野さん(左)は信頼関係を大事にしている

 「人材の確保が最も重要」。中小企業が海外ビジネスに安心して踏み出すためのワンストップ支援サービス事業を展開するに当たり、そう言い切るのには理由がある。海外ビジネスにおいて、会社の名称ばかりか「日本」というブランドでさえ通用しない時代。個と個で築き上げた信頼関係こそが、その成功の鍵を握ると信じるからだ。自身、2007年から海外での事業展開を模索し、中国や台湾での製品開発や製造、貿易、人脈づくりなどのノウハウを習得してきた。その中で大切にしてきたのも、現地の人たちとの信頼関係。今も月の半分は海外へ行き、その信頼関係を礎に、優れた人材の発掘に余念がない。

 「Shift」は1997年11月に設立した。「本業はIT」と話すように、建設関係のCAD(コンピューター利用設計システム)のソフトウエア開発とメンテナンスなどのサポートが主な事業だ。現在、取引先は九州管内に約2600社ある。

 7、8年ほど前のこと。「建設業に伸びしろが少なくなってきている。新規事業を立ち上げよう」と一念発起。ところが、国内での取り組みはなかなかうまくいかず、「国内でバットを振るか、海外で振るか」と社内で議論を重ね、海外にビジネスチャンスを見いだした。しかし、コネもプランもなく、1年ほどの期間を準備に充てることにした。即断即決できる権利のある人でなければ、海外でのビジネスチャンスはつかめない。自ら開拓に赴くために、準備期間中に社長不在でも会社が運営できるよう態勢を整えた。生まれて初めてのパスポートを手に2007年、海を渡った。不安はあったが、行動を支えたのは「先の見える会社づくりをしたい」という経営者としての責任感だった。

 「LED(発光ダイオード)が面白い」。展示会などを通してその可能性に気付いた。国策としてLED導入を進めてきた韓国や中国、台湾に比べ、日本は特許の問題も絡み、当時は導入が進んでいなかった。そこで中国、台湾でOEM(相手先ブランドによる生産)・ODM(相手先ブランドによる生産を設計から行うこと)を行ってもらえる企業を独自に開拓。現在は、中国の人件費が国策で上がってきたことなどを背景に、台湾がLED照明機器の開発などの中心となっている。「台湾は、製品化にかける時間や、ベースにある品質が日本より優れている。ビジネスのモラルも非常にいい。中国語が手に入るメリットもある」と強調する。

「海外の優秀な人材を発掘するには、現地に飛び込むことが大事」と話す川野さん

「海外の優秀な人材を発掘するには、現地に飛び込むことが大事」と話す川野さん

 優れた人材を発掘するため、海外に行く際は必ず1人か2人で行って現地の人との交流を大切にするという。「日本人にはシャイなところがあって、日本人同士『連れ』てしまう。現地の人の懐へ飛び込んでいかないと、信頼関係は築けない」。言葉通り、自ら飛び込んでいった台湾では、信頼関係を礎に優秀なスタッフが集まった。11年5月、現地法人を設立。自社製品製造がメーンだったが、同7月ぐらいから県内だけでなく全国の中小企業から、台湾での製品開発・製造や現地アテンド(ガイド、通訳等)の相談を受けることが多くなってきた。

 12年3月には宮崎銀行(小池光一頭取)が台湾・台北市で実施した食品商談会の現地コディネートを担当。県内の食品関連企業6社が販路拡大を目指して生産物や加工品を展示、アピールしたもので、現地法人スタッフと一緒にバイヤーのリストアップから通訳の手配など、きめ細かな準備で商談会をバックアップした。

 自社の経験、ノウハウ、人脈を生かそうと始めた「中小企業の台湾・中国ビジネス展開におけるワンストップサービス事業」。海外進出や取引を目指す中小企業への支援には四つのステップがある。(1)「きっかけ」…海外で何ができるのかイメージを持ってもらうための、見本市やマーケティングリサーチなどを通したきっかけ探し(2)「経験」…輸出入を実際にするなど、海外との取引を経験してもらう(3)「人材確保」…意思疎通ができる、言葉が通じる人材とのマッチング(4)「現地法人設立」…海外進出や販路拡大など実質的な進出-だ。

 これら現地案内から取引のフォローまで一貫したサービスを請け負う。「自社で同じことを経験しているので、海外進出時の失敗、悩みについてよく分かるからイメージは伝えやすい。中小企業は100万円の損失が経営に響くこともあるのだからリスクを負わないよう慎重にならざるを得ない」とサポートの意義を説く。

 自社の事業拡大の“未来図”も既に描いている。台湾の次に進出を考えているのは英語と中国語を話す人材がそろったマレーシア。さらに「今、人件費で考えると中国の次にくるのはベトナム、インドネシア、フィリピン、カンボジア。ITビジネスが盛んなフィリピンに学校をつくってプログラマーを養成しようか。そのためにも互いに信頼できる人材を育てておかなければならない」と先を見据える。

 「会社は人がすべて」と言ってはばからない。利益追求がメーンではなく、やりがいを重視した仕事をポリシーとする姿勢に、社員や台湾の現地スタッフも心を寄せる。「年をとってもずっと一緒に仕事ができるような会社を目指したい」。社内でも大切にしているのは、海外ビジネスと同じく、人と人との信頼関係だ。

ここが聞きたい

 -ビジネス相手としての中国の現状は。

 中国では人件費が上がってきており、ものづくりの国(下請け)というイメージではなくなった。安い商品を調達する国としてとらえるのではなく、これからは巨大な中国市場を狙って現地生産をする方がいいと思う。

 -中小企業が自社製品で海外ビジネスを成功できる可能性は。

 グローバルな販売ルートを持つ大企業と違って、中小企業の場合、世界で勝てる商材を持つ企業はなかなかないのが現状。「海外ビジネスをやりたい」といった場合、いま日本で手掛けているビジネスとは違うものになる可能性が高い。だから、海外で何ができるかという明確なイメージを持つことが大切だ。

私のオススメ

 いま海外は「日本人とだったら誰でも一緒にビジネスをしたいだろう」という状況ではないことを認識することだ。本音では日本人とはしたくない。なぜなら仕事は細かいのだけど、ビジネス規模が小さいから。取引でも社名は出ない。大事なのは「あなたと仕事がしたい」という関係をつくること。現地の人と食事をするなど接点を持ち、地元の文化に親しむことが海外ビジネスの第一歩だと思う。(談)

プロフィル

 かわの・せいいちろう 宮崎大宮高卒業後、IT系の専門学校に進学。その後、自動車の営業などを経て、ソフトウエア開発・販売などを手掛けるスタットコンピュータ(現ソラン九州)で3年ほど勤務し、1997年に独立した。ストレス発散のため大分県のサーキット場で開かれる軽自動車の耐久レースに年2、3回出場。学生のころから弾いていたエレキベースを「また始めたい」と思っている。宮崎市出身。40歳。

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