みやビズ

2018年11月17日(土)
キーパーソン

アズーロ社長 髙須義男さん

2015/01/26
「商売はあきらめない心が大事」と話す髙須さん

“あきらめない心”でスーパー開業

 「あきらめたら終わり。できるまでやり続ける」。スーパーマーケット経営を志した若者はその熱意でさまざまな難題を克服し、26歳のとき高千穂町に「ビックマーケット アズーロ」を開業した。中山間地域の物流のあり方を変え、都市部と比較して割高だった物価を安くする“革命”に成功。サプリメント製造販売など業容拡大にも意欲的に取り組みながら、新たな産業創出による地域の活性化も目指している。

ネット通販事業に関して、社長室長の樋口和久さん(右)と意見を交わす髙須さん。同社の商品は楽天市場の食品ジャンル部門で「週間MVP」を受賞している

ネット通販事業に関して、社長室長の樋口和久さん(右)と意見を交わす髙須さん。同社の商品は楽天市場の食品ジャンル部門で「週間MVP」を受賞している

 父は鮮魚店を営んでいた。スーパーマーケットチェーン店にテナントで出店。懸命に働く父母を見て、「将来は魚屋になるんだ」と考えるようになり、学校が休みの日は延岡魚市場の競りの声を聞くのが日課だった。高校を卒業して、当時、九州で一番大きかった北九州市の鮮魚店で経営などについて学び、店舗展開をするためのスキルを身に付けた。

 2年後に帰郷すると、最先端の販売を北九州で学んだ経験からするとまだまだ改善の余地があった。父とぶつかり合いながらも、仕入れ、鮮度、商品点数、価格、在庫、レイアウトなどを工夫するなどして実績をさらに伸ばしていった。

 その手腕を買われて、スーパーマーケットチェーン店の鮮魚店の立て直しが依頼された。経営改善はうまくいき、売り上げは前年比で約2倍に。しかし、水産だけではなく店舗全体の集客に経営状況が左右されるテナントという形態に限界も感じていた。この頃から、「自分の責任で店舗全体をやってみたい」とスーパーマーケット経営に乗り出すことを考え始める。

 高千穂町へ行ったときのこと。食事会を開くために買い出しに行くと「えっ」と驚くことがあった。野菜や果物、お魚にお肉、飲料品、麺類、日配品など、ほとんどの商品が延岡市内より高く、あまり鮮度の良い生鮮品は置いていなかったのだ。すぐに買い出しを中断し、その足で役場へ行き人口統計表など必要なデータを手に入れた。「よし、この地域に出店しよう。ここなら自分の理想のお店が出来るかもしれない」

「商売はあきらめない心が大事」と話す髙須さん

「商売はあきらめない心が大事」と話す髙須さん

 出店に適した土地を探し、造成や店舗建設に掛かる費用を試算すると約3億円。周囲からは「やめておけ」と言われたが、まったく怖くなかった。ただ、担保もなく、当時は金髪という容姿から銀行は融資に応じなかった。髪も染め直し、黒のビジネススーツも買い、熱意を込めて交渉した末、通常2人の保証人を3人、しかも、うち2人は親族以外から立てることを条件に融資を取り付けた。1年以上の時間はかかったが、ある会社の会長を務める人物に意気込みを買ってもらい、知人とともに保証人を引き受けてくれた。「名前を書いてもらった以上は、絶対にこの方たちにご迷惑はかけられない」

 そして1999年8月2日、「ビックマーケット アズーロ」を開業。26歳だった。ただ、当時は保守的な風土から、開業後半年間どこからもアパートを貸してもらえずスーパーの事務所で寝袋生活。持ち前の負けん気で乗り切った。毎日、早朝2~3時に日配品の仕入れに自ら出掛けた。この頃の高千穂町は熊本、延岡の両方面から日々の物流がなく、物価が高い要因に。積載効率を高めて物流コストを下げるため、いろんな業種をまとめることに奔走。そのおかげで、高千穂でも延岡と変わらぬ価格、品質の商品が手に入るようになり、今や熊本-高千穂-延岡の毎日の配送が当たり前となった。「高千穂町(国道218号)の物流のあり方を変えることができた」と胸を張る。

 開業前からお世話になっている経営コンサルタントの言葉が常に胸の中にある。「あなたの私利私欲、金もうけのために誰が働くのか。みんな(消費者、従業員)のため、地域のために貢献しなければ心の鐘を鳴らすスーパーマーケットなどできないぞ」。いま、サプリメント事業を核とした地域活性化策を思い描く。みんなのため、地域のため--。これを原点に、新しい挑戦を続けていく。

ここが聞きたい

 -高千穂の消費者物価を変える成果を上げた。

 住む場所が違うだけで、ものの価格が変わることは不自然。消費者にとって当たり前のことを当たり前に粛々とやってきた結果だと思う。開業から数年後にドラッグストアが進出してきたが、価格や品質で負けるわけにはいかない。プライスリーダーはわれわれだ、という誇りを持ち、お客さまが思う価値より、予想を上回る価値を提供できるスーパーを目指していく。

 -サプリメントの主力商品は。

 高千穂町で栽培されているヒュウガトウキを使った「大和山人参」(2014年、商標登録)。ただ、これを販売するだけにとどまらず、ヒュウガトウキの生産で地域雇用を増やし、6次産業化による地域興しが最終的な目標だ。働く場所や収入の安定が見込めないと若者が地元に帰ってこれないし、後継者不足に悩まされ、ますます過疎化が進む。まず基幹産業となりえる製品を生み出し当社だけではなく、生産者や自治体、地元企業との連携を模索しながら地域全体が潤う仕組みをつくっていきたい。

プロフィル

 たかす・よしお 延岡市出身。延岡商業高校卒。1999年高千穂町にスーパーマーケット開業、2009年には宮崎市に複合カフェをオープン。12年には延岡市に誘致企業としての指定を受け、延岡加工センターを竣工、ネット通販事業部を本社から移行した。目指すは年商100億円企業。「ビックマーケット アズーロ」開業時の融資3億円は14年、予定を1年前倒しして完済した。1973年3月生まれの41歳。

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