みやビズ

2018年6月22日(金)
キーパーソン

高尾薬舗社長 高尾雅仁さん

2013/12/12

地域に根差した「まなべる薬局」

 まるでカフェのようだ。大きな窓ガラスは陽光をたっぷり取り込み、店内を飾る観葉植物やゆっくり動く天井の扇風機は癒やしの空間を演出する。目指すのは「薬を作るだけではなく、心が潤い、笑顔になれる」薬局だ。住民向けのコンサートや映画の上映会を手掛けるなど地域とのつながりを大切にしており、コミュニティーの場にもなっている。薬剤師として、マーケティングプランナーとして、新たな薬局の在り方を創造する。

カフェのような店内。観葉植物が訪れた客の心を癒やしてくれる

カフェのような店内。観葉植物が訪れた客の心を癒やしてくれる

 閑静な住宅地として知られる宮崎市まなび野。12月8日夜、広さ30平方メートルほどのまなべる薬局の店内から軽快なリズムが流れてきた。宮崎大吹奏楽部によるコンサート。18人のメンバーは、まさにすし詰め状態。膝が触れあうほどの距離で聞いていた住民たちは楽しいクリスマスソングに笑顔が絶えなかった。「ここに来れば楽しいことがあると思ってもらえれば」。従来の薬局では考えられない珍しい企画を次々に考える。

 富山医科薬科大(現富山大)の薬学部在学中から進むべき道が分からずアルバイトの日々を送った。内装工事の手伝い、飲食店勤務…。「ブラブラした」期間は8年に及んだが、28歳で結婚して子どもが生まれるのを機に薬剤師になった。住みたいところをリストアップし、就職先を探す中で、強い呼び掛けのあった本県の調剤薬局に勤めることにした。出身は隣の熊本県。それまで宮崎とは縁もゆかりもなかった。

 「1カ所にとどまっていては多くの薬を知ることができない」。薬のスペシャリストを目指すため、20以上の薬局を渡り歩いた。しかし、限界を感じ、薬剤師をやめることを決断する。「病気を治そうと薬にすがっている顧客の期待に応えられない。薬だけでは対応できないこともあった」と振り返る。退職後、マーケティングを勉強した。さまざまな仕事に通用すると思ったからだ。これがターニングポイントになった。

 「マーケティングは売る方法だと思っていたが、ちょっと違った」。自分が変われば回りも変わるのが分かり、顧客から喜んで買ってもらえる仕組みをマスターした。その後2年間の大手ドラッグストア勤務を経て、2008年7月にまなべる薬局を開業した。モットーにするのは「心と体を癒やし、笑顔をつくる」。それが1番の仕事で、薬を渡すのは二の次。本当の商品は薬ではない。安心や癒やし、それに「顧客のことを考える」。

どの病院の処方箋でも素早く薬を作ることを約束する高尾社長。「健康生活を応援したい」と強調する

どの病院の処方箋でも素早く薬を作ることを約束する高尾社長。「健康生活を応援したい」と強調する

 そう考えると普段からのコミュニケーションが大切で、そのためには人が集まる工夫が必要になる。コンサート、上映会、各種講座といったイベントの後は、すぐに家に帰らない。そこに本音(相談事)を引き出すチャンネルができる。また、薬のカウンセリングにしても納得してもらうまで時間をかけることをいとわない。店内のテーブルにはカフェのように薬のメニュー表を置き、少しでも話しやすい雰囲気をつくっている。

 金もうけより、まずは地域、顧客のために役に立ちたい-。こうした思いは地主さんの共感を呼び、開業の際の建物の建設費などは支援してもらった。「手持ちの資金が少なかっただけに本当に助かった」。現在、遠方からわざわざやって来たり、果物を持って来たりする高齢者も少なくない。ふらっと来てもらえ、来てみると何かて楽しい薬局。今後も地域に根差した経営、働き方を模索し続けていくつもりだ。

ここが聞きたい

 ―まなべる薬局の名称の由来は。

 「Manna」(マナ)は旧約聖書に登場する人々を救った栄養食品。東洋医学的に言うと、健康に必要な「血」や「気」を補ったとされる。「Bell」(ベル)は鐘の音。優しい鐘の音とともに、マナが世界中に広がるようになればと思って合わせた。もちろん、常に学ぶ姿勢は持ち続けている。さまざまな講座を開催したり、顧客向けに健康に関するチラシを作ったりしている。

 ―薬食同源を推進している。

 薬食同源とは、病気を治す薬と食べ物は、本来根源は同じという意味。自然の食材を薬としてとらえ、バランスよく組み合わせて食べることにより、健康増進に役立てられればいい。日ごろからバランスのとれた食事をすれば、病気を予防、治療してくれる。薬剤師としてできることは、健康食品の正しい選び方や健康に良い言われる食材・料理に関する情報などについて、丁寧に分かりやすく説明することだと思っている。

わたしのオススメ

 お薦めは「マインドマップ」。聞き慣れない言葉だが、分かりやすく言えばノート術。頭の中をそのまま紙の上に再現するようなもので、核となるキーワードを中心に置き、そこから単語を放射状につなぎ合わせていく。本1冊がA4の1枚にまとめられる。考えを整理でき、人の話を聞く際に役立つ。発想も豊かになる。2年前に知り、仕事や勉強、生活をより充実させるために便利なので使っている。脳の力を最大限に引き出してくれる。(談)

プロフィル

 たかお・まさひと 熊本県荒尾市出身。高校までの夢は冒険家。実家が薬局(高尾薬舗)だったこともあり、大学は薬学部に進学した。その高尾薬舗は創業100年を超える老舗の薬局だったが、2007年に廃業。伝統の重さに気付き、屋号を引き継ぐ形で08年に再スタートさせた。「客の身になって、よく話を聞いてくれる」と評判だ。日曜定休。TEL0985(67)6755。1970(昭和45)年生まれの43歳。

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